「KDPに作品をもっと登録して頂くためには、何が必要でしょうか?」を考えてみた

以下の記事に登場する質問です。

Kindleフォーマットセミナー終了後の懇親会で、アマゾンジャパンの方々とじっくりお話ししてきた(見て歩く者 by 鷹野凌)

逆に、「KDPに作品をもっと登録して頂くためには、何が必要でしょうか?」という質問をぶつけられました。

前提条件を確認しておくと、

  • KDPとは、Amazonが提供しているセルフ・パブリッシングサービス
  • KDPは、個人が気楽に参加できる(作品の登録は無料)
  • 質問者は作品がもっと登録されることを望んでいる

こんな感じですね。

では、ブレストタイムのはじまり、はじまり。

客数と客単価

まず、「作品をもっと登録してもらう」という状況は、二つに分割できます。

  • 一つは、一人の登録者が登録する作品の数を増やすこと。
  • もう一つは、より多くの人が登録者として参加してくれること。

小売業で言うと、前者が客単価、後者が客数になります。むろん両方伸びれば、それにこしたことはありませんが、片方にだけ効く施策というのも当然あります。その辺は注意が必要ですね。

参考材料発掘

で、ブレストを進めるまえに、引用した記事の著者の方(実際に質問を受けた方)の考えを参考材料としてまとめておきましょう。ゆるくまとめると

  • EPUBの制作環境を整える
  • 著作権的なハードルをクリアしやすくする

の二つ。
※詳しい内容は記事を直接ご覧下さい。

自身のセルフパブリッシング経験からいっても、これは頷けます。私はHTML&CSSの知識を持っていますので、Epubに関する話はおちゃのこさいさい__とまではいかなくても、text-align:center、なんて表記を見てもひるむことはありません。でも、そうでない人はたくさんいるでしょう。

sigilというツールは、おそろしく簡単にEpubファイルを作成できますが、それでもCSSの知識についてかじっておく必要はあります。その意味で、CSSの指定もさらっとできて、綺麗なEpubファイルを作成でき、さらに日本語で使えるツールがあれば、パブリッシャー育成の促進につながるかもしれません。

簡易に制作できればできるほど、客数___じゃなかった、新規パブリッシャーを呼び込めるでしょう。

あと、著作権まわりも、出版業界に関わっていないと何も分からないのが現状ではないでしょうか。その辺のルールをある程度明確にしたり、どういうアクションを取れば問題ないのか、という行動規範的な何かを「わかりやすく」提示すれば、登録作品の幅は増えることでしょう。

こちらは、どちらかというと客単価(面倒なのでこの単語でいきます)的な側面がありそうです。

他のツールで類推してみる

で、考えを進めていくわけですが、その際ぼんやり思い浮かべたのが、他のクリエイティブ・ツールです。

多くのクリエーターを集めているツール(ないしサービス)は、どのような環境があったのだろうか。それを考えてみるのは、類推として悪くなさそうです。

ぱっと思い浮かぶのは、やはり初音ミクですね。卵を割るように簡単、とまでは言えませんが簡易で曲作り可能なツールが、ブーム(といっていいのかどうかわかりませんが)の土台になっていたでしょう。やはりツールは基本です。

ただそれだけで十分かというと、やはりそうではないでしょう。ニコニコ動画、というプラットフォームの存在は欠かせません。それによって、作品を発表する場と共に、フィードバックを得られる機会をクリエーターが手にしたわけです。再生回数やコメントなどは、クリエーターのモチベーションに影響を与えたことでしょう。
※プラスにせよ、マイナスにせよ。

おそらく、その延長線上にコミュニティーの存在が生まれたはずです。クリエーター同士の情報交換、クリエーターとファンの交流。そういうものを生み出す場です。それはプラットフォームの中では、クラスタという形で現れていたかもしれません。あるいははっきりとした場を別に持っていたかもしれません。

どういう形であったにせよ、そうしたコミュニティーがクリエーターの作品作りを促進し、新しいクリエーターの呼び水になっていたのではないでしょうか。

ブログではどうか?

もう一つ、身近なクリエイティブ・ツールと言えば、ブログですね。こうして文章を書くことだって、立派な表現活動です。そもそも、文章を書くという点においては、セルフパブリッシングと大いに共通しています。

いまやブログブームは終焉し、日常的なツールへと変貌を遂げています・・・と書くと大げさかもしれません。でも、気軽に誰もが参加できる環境であることは間違いありません。

もちろん、ブログのブームを生み出したのも、簡易にWebページが作成・更新できるツールです。どうしたってツールの存在は欠かせません。

また、ブログの場合であれば、たとえば「はてなブックマーク」的な存在が、プラットフォームとして機能していた面はあるでしょう。アメブロであれば、それ自体が一つのプラットフォームのようなものです。で、こうしたプラットフォームの評価軸が、そこに登場するコンテンツの傾向に影響を与えてしまう、という問題があるわけですが、その話は別にとっておきます。

では、コミュニティーはどうでしょうか。これも明示的な形ではないものの、クラスタとして存在していた(いる)ように思います。具体例は、ちょっと挙げませんが。

まとめてみると

ざざっとまとめてみると、

  • 簡易なEpub制作環境
  • 著作権周りのガイドライン
  • 評価・コメントが受けやすいプラットフォーム
  • (自発的な)コミュニティーの促進

あたりがカギになりそうな気がします。

まずはツール

「簡易なEpub制作環境」でいえば、実は現状でも「簡単といえば簡単」です。

Kindleプレビューはなかなかデキる子ですし、sigilもいいです。おそらく近々日本のKDPで表紙作成サービスも始まるでしょう。それを考えると、妨げになっているのは「何かよくわからない」という恐怖心なのかもしれません。なんだか、むずかしそう、と。特に40代以上の人はEpubとかHTMLとかCSSとかを見ると__プログラマとWebデザイナー以外は__恐れおののくのではないでしょうか。

その恐怖心をまるっとバイパスしてしまうようなツールか、あるいは「わかりやすいEpub作り」的な何かあればよいのかもしれません。まあ、そういうコンテンツもウェブ上にはゴロゴロしているわけですが、興味がない人はそもそも検索しないのでどうしようもありません。それを直につないでしまうような__「もしドラ」みたいな__何かがあると結構変わるかもしれません。

質問した人が、どういう層をパブリッシャーとして取り込みたいのかはわかりませんが、若者層ならば芸能人に、アニメ層ならば声優や漫画__「バクマン」的な__に、知識労働者なら大学の先生に、ビジネスマンならスーパービジネスマンに、ブロガーならば(アルファ)ブロガーにアプローチして、「結構簡単にできちゃいますよ」という話をしてもらうのがよいのでしょう。きっと、売り上げもついてきます。

著作権周り

「著作権周りのガイドライン」は私の手に負えないのでパス。

プラットフォーム

「評価・コメントが受けやすいプラットフォーム」は、とても繊細な問題で、以前書いた「お金を払って正直なレビューを書いてもらう」問題に関係してきます。Amazon上で特定のアカウントに「献本」できるシステムがあれば、多少マシかもしれませんが、完全とも思えません。
お金を払って、正直なレビューを書いてもらうのは何が悪いのか?

パブリッシャーが無料セールでコンテンツ展開することで、評価・コメントを促進できますが、それでも普通の人にとって「カスタマーレビューを書く」というのは少々敷居が高い行為です。よほど売れている本でないかぎり、著者が得ているフィードバックは少ないのではないでしょうか。

「『Book:A』の○○という文章にハイライトがつきました」なんて通知が毎回きたら、さすがに鬱陶しいですが、一つの方向としてそういうフィードバックもありうるでしょう。

コミュニティー

「(自発的な)コミュニティーの促進」については、「コミュニティーを作りなさい」と命令してもまったく意味がないので、セルフパブリッシャー用のイベントを頻繁に開催するだとか、情報提供用のブログ(もちろん日本語)を開設するとかして、気長に待つしかありません。

あるいは、ユーザーグループを作って、そこに「献本」できるシステムなんかがあっても面白いですね。

さいごに

とまあ、いろいろ思いつくままに書いてみました。

私個人としても「出版」はどんどん行っていくつもりですし、いろんな人の「本」を読みたい気持ちもいっぱいあります。

今後、セルフパブリッシングが普及していくことを心より期待しております。

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