【書評】情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版](奥野宣之)

「完全版」とあるので、新しい情報が追加されたものを想像していたのだが、まったく違っていた。

情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]
情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版] 奥野 宣之

ダイヤモンド社 2013-11-29
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※献本ありがとうございます。

テーマは通底しているが、内容は全面改定されている。カバーのデザインも旧版に似せてあるが、ボリュームはアップし、カラー写真のページも追加されている。もはや新しい本と呼んでいいだろう。

たとえば、旧版と完全版の1〜6章までの目次を見てみよう。

こちらが旧版。

第1章 複雑なのは続かない、使えない
第2章 情報を一元化する技術
第3章 予定を記録を一元化する「時間管理術」
第4章 ネタになる断片メモの「保存法」
第5章 メモを宝に変える「アイデア術」
第6章 分類せず一発検索する

そして、これが完全版。

第1章 ノート一冊でつくれる「知的生産システム」
第2章 一冊にまとめる「三つのルール」
第3章 効果的に情報を入れる「書き方・貼り方」
第4章 アイデアの素材を生み出す「ライフログ」
第5章 素材を活用へとつなげる「知的生産術」
第6章 ノートを自在に参照できる「牽引化」

まったく違う。

一冊のノートだけを使って情報管理を行う、という視点は共通しているが、完全版は「ノートを使った知的生産システムづくり」により強い視点がおかれているように感じる。

知的生産。

そう、現代でもっともベーシックに必要なスキルだ。

アナログ?デジタル?

面白いのが、似たような「知的生産本」をソースにしながら著者はアナログノートへ、私はEvernoteへと向かっている点だ。

実際、そのどちらが優れているかは決められないだろうし、決める意味もない。Evernoteを使った知的生産について気になる方は、拙著の『Evernote「超」知的生産術』や『ハイブリッド発想術』を参照してもらいたい。
※ちなみに私はアナログのノートも使う。

本書を読んでいて一番に感じたのは、「同じことを考えている」という感覚だ。つまり、情報を取り扱う上で肝になると考えていることは一緒なのだ。たとえばそれは「分類するな、配列せよ」という考え方であったり、「後から検索で引っ張り出せばよい」という考え方であったりする。

そうした肝を踏まえた上で、実装するツールが異なっているだけ。そんな印象を受けた。

手を動かすアナログノートの良さは私も十分に感じているが、私の場合、多くの情報ソースがネット経由(SNS、ブログ、ネットニュース、メール)なのでアナログノートに一元管理するのは難しい。

結局、どんなツールでも自分の環境に合っていなければ役に立たないわけで、それを踏まえたツールの選択が必要になってくるのだろう。

重要なのは目に見えやすいツールの話ではなく、それを裏側から支える情報管理の肝__言ってしまえば原理・原則__を押さえることだ。本書でも折々そうした原理について言及されている。

さいごに

『知的生産の技術』にはこうある。

どのようなものであれ、知的生産の技術には、王道はないだろうとおもう。これさえしっていたら、というような安直なものはないだろうとおもう。合理主義に徹すればいい、などと、かんたんにかんがえてもらいたくないものである。

合理主義というのは、測定できる何かを向上していくことだ。時間をより短く、資源を少なめに、成果物はより多く……。

しかし、知的生産というのは新しい価値を生む行為だ。そして、新しい価値はそれが生まれてみるまで測定することなどできない。

ある部分においては、「合理的なインプット」「合理的な情報整理」「合理的なアウトプット」は、機能してくれる。でも、それだけでたどり着ける場所は限られている。

ペンで書いて覚える、カードを並べて考える、一見意味のない情報を溜め込む……

その瞬間は合理的でないような行為も、それをこえる意味を持っていることは十分に考えられる。

紙のノートでもEvernoteでもいいので、まずはちょっとした思いつきをメモすることから始めてみるとよいだろう。あなた自身の知的生産は、そこからスタートするはずだ。