0-知的生産の技術

「紙の本」で出す、ということ。あるいはメディアのリーチ

発売が迫ってきている以下の新刊。

KDPではじめる セルフパブリッシング
KDPではじめる セルフパブリッシング 倉下 忠憲

シーアンドアール研究所 2013-12-21
売り上げランキング : 77002

Amazonで詳しく見る by G-Tools

Kindleダイレクトパブリッシング(以下KDP)をテーマにした本なのに、なぜKDPで発売しないのか。

そういう疑問があるかもしれません。

しかし、橋というのは離れている場所に架けるからこそ、意味があるんだと思います。

メディアのリーチ

電子書籍の登場で、「本を読む人」にも多様性が生まれています。

といっても、それまでも「小説しか読まない」「漫画は絶対に読まない」という風に、その内情は分裂していました。もちろん、「なんでもOK」という人もいるでしょうが、特定のカテゴリーやジャンルのみを対象として読書している人の数も少なくないでしょう。

だから、小説作品を漫画化したら、より多くの人に読んでもらえた、なんてことが起こりえます。

ようは、メディアごとにリーチできる層というのは違っているのです。

逆に言えば、コンテンツクリエーターは、「この内容を届けたい」と思う人__一般的に想定読者と呼ばれる__が普段接しているメディアに、メッセージを載せるように努めるべきでしょう。

たとえば、「もっとテレビを見ましょう」というメッセージならテレビが使えます。しかし、まったくテレビを見ていない人向けの「これからテレビを見ましょう」というメッセージならどうでしょうか。それをテレビで流すことにどんな意味があるでしょうか。できれば、ラジオや新聞を使いたいところです。

架ける橋

自分のタイムラインを見ていると、もはや電子書籍なんて当たり前の存在のように思えてきますが、その認識は少々怪しいものです。

名前は知っているけれども、実際に読んだことはない(し、読むつもりも特にない)という人は、まだまだ多いでしょう。普段スマートフォンやタブレットを使っていても、電子書籍はまったく使ったことがない。そういう人もたくさんいそうです。

なんとなく「電子書籍」という名前で拒否反応を起こしてしまう人もいるかもしれません。比較的、紙の本を読む人でも__あるいはだからこそ__、「電子書籍はちょっと」と敬遠してしまう。そんな状況は多くあるでしょう。

実際、読んでみるとわかりますが、電子書籍は全然悪くありません。問題点がまったくないわけでもありませんし、紙の本がなくなってもよいとも思えませんが、選択肢の一つとして十分検討に値するメディアです。

私としては、紙の本しか読まない人と電子書籍の間に橋を架けたいのです。そして、その先に「自分で本を作る」という世界との橋を架けたいのです。

だから、本書は紙の本で出すことに意味があるのです。もちろん、同じ内容をKindle版で出す選択肢はあるとしても、紙の本として存在していることに意義があるのです。

さいごに

それが何であれ、メディアが持つリーチについては熟考の必要があるでしょう。

でなければ、想定読者にメッセージが届かないこともありえますし、(最近のSNSの不適切写真のように)想定外の人にメッセージが届いてしまう可能性もあります。

また、同じメディアでもそれが持つコンテキストで、届く層というのは違ってきます。検索やキュレーションは、そのコンテキストを分解・再構築しますが、それでも元々のメディアが持つコンテキストというのは、やっぱり強いものです。

物書きは、「誰に、何を、どのように伝えるのか」を必死に考え続けなければならないのだろうな、と感じます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です