2-社会情報論

「紙の本」、ということ。あるいはSF的妄想

「電子書籍の良いところ」

っていっぱいあるわけですが、そのひとつに間違いなく「(内容が)検索できる」というのがあるでしょう。

実用書・技術書で、特定の言葉を探してページをめくった経験をお持ちの方は多いはずです。それが検索できれば、一瞬で問題解決。現状の電子書籍では課題も多いわけですが、最終的には内容がきんと検索できるのが望ましい状態ではあります。

そうすれば、一冊の本を買って、自分が必要としている単語があるページだけを読む、なんてこともできますし、SF的未来を想像すれば、必要としてる単語が含まれている章だけをセレクトして、自分だけの「本」を作り、それを買う、なんてことになるかもしれません。想像と妄想は膨らみます。

今のところ、電子書籍は「紙の本」を電子化したものが大半ですが、徐々に電子書籍はまったく新しい「本」の概念を作りだしていくのかもしれません。カスタマイズされ、動的であり、ソーシャルな本。

というのは、もちろんSF的妄想です。

わざわざ紙の本

現状は、過渡期とすら呼べませんが、何かしらの変化が始まっている感触だけはあります。

一応ひとりの物書きとして、そういう中で「紙の本を書くというのは、どういうことか」を考えることがあります。いや、別に考えなくてもいいんですよ。出版のオファーなりなんなりがあり、企画が通ったから、執筆する。そういうので日常の仕事はまわっていきます。

でも、ふとSF的未来に想いを馳せたとき、思考が奥の方に引っ張られてしまうのです。わざわざ「紙の本を書く」ということについて。

電子と紙

個人的に、「適当に並べておきましたんで、お好きなところからお読みください」というタイプの本は、まさに電子書籍向きだと思います。

1万の項目を並べておいても、電子書籍では本が分厚くなって持ち歩けない、なんてことにはなりません。目次のリンクを使えば、目的とするページにたどり着くのも一瞬です。実に素晴らしい。そういうタイプの本では、構成の順序ではなく、リンクや検索が機能しているかの方が重要です。

紙の本は、ページが綴じてあり、それらは固定されていて動かせません。もちろんリンクもありません。パラパラとめくれる点で、電子書籍に対して優位に立っていますが、それも技術的向上でいくらでもひっくり返ってしまうでしょう。

しかし、「ページが綴じてある」というのは、必ずしもデメリットではない、という風には感じます。

アナログノートの話

私は、ルーズリーフや紙片(コピー用紙など)を好んで使いますが、それはそれとして大学ノートやほぼ日手帳も使っています。

その両者は、「紙の上に文字を書く」という点で機能は一致していますが、同じ道具であるとはとても思えません。ページが綴じてあり、それらは動かせない、というのは何かしら意味を持っているのです。

その「何かしら」は認知的なものかもしれませんし、ぱっとわからない機能的なものかもしれません。あるいは、その両者ということもあるでしょう。

あえて言うまでもありませんが、私は「綴じノート」が優れていると主張したいわけではありません。ルーズリーフと綴じノートでは機能が違う、と言いたいだけです。

その違いを意識して、道具の使い方を考えていけば、よい環境が構築できるでしょうし、開発サイドも、それぞれの機能をより活かせるような方向を目指すのが良いはずです。

こういう風に読まれるという想定

私が紙の本を書くときは、「最初のページから読み始めて、最後のページまで読む」ような状況を想定しています。

もちろん、それを強制するものではありませんし、途中だけを読むことも可能です。が、1→2→3→・・・と、順路を進む方がより楽しめる形を意識しています。
※意識しているだけで、実現できているかは不明。

単純に、何かの説明を時系列で配置した(本を選ぶ→本を読む→本を読んだ、など)というだけではなく、前の章が今の章に、今の章が次の章に何かしらの影響を与えているような、そんなイメージです。それは、情報を(物理的にも)ひとかたまりにまとめてしまっている本ならでは、と言えるかもしれません。

検索で断片的に読まれることに最適化された「本」では、そういう書き方は効果的ではないでしょう。

さいごに

もう一度書いておきますが、現状は紙の本も電子書籍もそれほど大きな「乖離」はありません。広い目で見れば、両方とも同じ「本」です。

ただ、あと20年もすれば、結構真剣に「その本は、なぜ紙でなければならないのか」が検討される時代がやってくるかもしれません。

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