7-本の紹介

「先輩、なんかオススメの本ありますか?2」

Inheritance:「先輩、なんかオススメの本ありますか?」と尋ねられたら


お昼休み。軽くランチを終えた私は、デスクで本を読んでいる。シアトル風カフェのカップを二つ持った後輩が近づいてきて、一つを私に差し出した。
「どうぞ。差し入れっす」
ありがとう、と私は答える。さっそくコーヒーを一口。良い香りだ。それはそうと、どういう風の吹き回し?
「いや、前に先輩からオススメしてもらった本がむちゃくちゃ面白くて」
それはよかった。
「特に『仕事は楽しいかね?』にはめちゃくちゃ感動しました。すぅっと中身が頭に入ってくるんです」
ストーリー仕立てで書いてあるからね。読みやすい。
「それで、同じような感じの本を教えてもらえれば、と」
私はしおりを挟み、本のカバーを整えてからデスクの上に置く。

ふむ。

「一つ聞いておくけれど、『仕事は楽しいかね?』の続編は読んだかい」
「えっ、続きが出てるんですか!」
まるで明日が祝日であったことを突然知ったかのように驚く。
「もし本を探しているんなら、自分が読んで良かったと思う本をスタートにするのが一番だよ。同じ著者の本を探すのは、ありふれた方法だけど効果的だね。特に今は、いくらでも検索できるんだから」
彼はメモ帳を取り出し、何かを書きつけていく。
「まあ、君のアプローチも悪くない。同じような<感じ>の本を探すのも立派な方法だ。たとえばAmazonで気に入った本を探して、関連本を探すという方法もある」
「いや、でも、機械とかじゃなくて先輩に聞きたかったんですよ」
・・・・・・。ふむ。
Amazonの関連本は購入者の動向を分析しているわけだから、完全な機械任せというわけではないけれども。
まあ、いいか。

「じゃあ、続編以外をあげてみよう」
「お願いします」

あたえる人があたえられる
あたえる人があたえられる ボブ・バーグ Bob Burg ジョン・デイビッド・マン John David Mann 山内 あゆ子

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「『仕事は楽しいかね?』が好みなら、この本も間違いないと思う。ビジネスで成功するとか、そんな平面の話ではなく、私たちはどうやって生きていけばいいのかを考えさせてくれる一冊だ。もちろんビジネスはビジネスで大切なんだけどね」
再びメモを続ける彼。前と同じ紙のメモ帳だ。愛用しているらしい。そういえば、スマートフォンについているメモ機能を使っている姿を見かけたことがない。それとなく聞いてみると、「俺、フリック入力が遅くて全然使えないんですよ」と笑う。部長クラスよりも上の人間に受けそうなタイプだ。

「少し方向性は違うけど、この本もなかなか面白い」

ユダヤ人大富豪の教え〈2〉さらに幸せな金持ちになる12のレッスン (だいわ文庫)
ユダヤ人大富豪の教え〈2〉さらに幸せな金持ちになる12のレッスン (だいわ文庫) 本田 健

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「これはお金に関する本だ。お金の稼ぎ方ではなく、お金との付き合い方を学ぶための本といっていいだろう。君はお金が好きかい?」
「そりゃもちろん」
「だったら、一度真剣に<自分にとってお金とは何か>を考えた方がいい。お金は強力だからね。人の心の深い部分にまで影響を与えてしまう。もし落雷に関する知識がなければ、カミナリは神さまの怒りだと勘違いしてしまうだろう。正確な知識を持っていれば、心が惑わされる可能性はずいぶんと減る」
「それに、落雷で発電できるようになるかもしれませんしね」ジョーク混じりに彼が返す。
たしかに、そういうこともあるかもしれない。

「最後の一冊は、ちょっと君にとっては難敵かもしれない。なにせ分厚い」

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ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か エリヤフ・ゴールドラット 三本木 亮

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「それに、君とはちょっと分野が違う。工場の業務改善プロセスにフォーカスを当てた本なんだ。なんでそんな本を読まないといけないんだと思うかもしれないけど……」
「大丈夫です。先輩のことだから、ちゃんと意味があるんだろうって信頼してます」
・・・・・・。ふむ。
「ともかく、この本で大切なのはノウハウではなく、<知識を実地的に使うこと>なんだ。僕たちは知識を得たら、すぐさまそれが使えるように勘違いしていまう。でも、そんなわけにはいかないんだ。特に現実問題の解決については、一刀両断なんて夢のまた夢さ。仮説、実験、検証、改良。それをいやというほど重ねていくしかない」
彼のメモが追いつくまで、少し待ってから続ける。
「実地的な問題解決の方法を、<PDCAサイクル>なんて抽象化した言葉だけで理解するなんてまったく意味がないからね。<体験>を体験することが重要なのさ」

「先輩って、いつでもスラスラ答えが出てきますよね」
メモを取り終えた彼が言う。
「いつでもってわけじゃないよ。それに何でも答えられるわけでもない。ただ、普段からいろいろ読んで、いろいろ考えているだけさ。それがマクドナルドの厨房のようにストックされていて、オーダーに合わせてサンドしてから提供する。それだけだよ」
ふうむ、と彼は考え込む。ファストフードでアルバイトしたことがないのかもしれない。

15分ほどしか残っていない昼休みを彼は書店で過ごすらしく、慌てて駆けていった。私はしおりを頼りに、本の世界へと戻っていく。少し冷めたコーヒーには、ほとんど香りは残っていなかった。

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