7-本の紹介 断片からの創造

【レビュー】「ひらめき脳は作れる!」日経ビジネスアソシエ 2014.3号

アイデア発想に関するテーマということで、購入してみました。

日経ビジネス Associe (アソシエ) 2014年 03月号
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2014年 03月号 日経ビジネスアソシエ

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特集は二つあります。

一つは「ひらめき脳は作れる!」。こちらは、実際にアイデアで成果を上げている人の発想スタイルや、ビジネスパーソンの思考習慣、そして具体的に取り組める発想法が紹介されています。

もう一つの特集は、「ひらめき文具100」。発想作業に役立つ文具紹介です。正直、「発想文具」の分野はまだまだだと考えていましたが、なかなか面白いものも出てきているようです。「正六角形の付箋」は使ってみたくなりました。

が、今回は一つ目の特集に注目してみましょう。

ひらめきと問題解決

「ひらめき脳は作れる!」の冒頭ページには次のように書かれています。

良いアイデアは、センスがある人が生み出すもの・・・。それは誤解です。「ひらめく力」は自分で鍛えることができます。そして、ひらめきとは、単なる「思いつき」ではありません。問題解決の糸口を見つけ、やるべきことを見いだす力です。

ここには二つの要素があります。一つは「ひらめく力」は鍛えられること。もう一つは「アイデアは問題解決である」です。

「ひらめく力」

まず、「ひらめく力」は鍛えられるということ。

これは拙著でも書きました。この本の趣旨の3割ぐらいはこのメッセージだったかもしれません。

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良いアイデアは、確かにセンスがある人が生み出します。でも、センスのある人だけが生み出すものでもありません。

もっと言えば、その「センス」は生まれつき決まっていて一生パラメータが動かないものではなく、増やせるものなのです。「ひらめく力」を鍛える、というのはそういうことです。

世の中には、必死に練習してオリンピックの短距離走で1位をとってしまう人がいます。私たちの全てがそのような成果に恵まれることはあり得ないでしょう。しかし、誰でも練習すれば、練習する前よりは早く走れたり、長く走れたりするようになります。「ひらめく力」も同じです。

結局の所、「ひらめき」なんて脳のニューロン的な反応なわけですし、脳の可塑性を考えれば、その能力は向上させられると考えるのは不自然ではないでしょう。もちろん、どこまでも向上可能なのかどうかは検討の余地があります。また、「ひらめき力」という括りで捉えてしまうと、おおざっぱすぎる危険もあります。

が、それはそれとして、アイデアを生み出しやすい脳に持っていくことは、特別な才能を必要としません。地道さが必要とされますが、可能な行為です。

問題解決としてのアイデア

ありがちな流れを考えてみましょう。

何か困った状態がある→それを解決したい→解決する手段がない→アイデア!→問題解決

これが「アイデアは問題解決である」ということです。

  • 何も困っていなければ、アイデアは必要とされません。
  • 困っていても、その状態を維持したいと願うなら、アイデアは必要とされません。
  • 困っていて、それを解決できる手段があれば、アイデアは必要とされません。

問題を解決するために、アイデアは求められるのです。

すでにその状況を解決するための手段があるなら、必要なのは「ひらめき力」ではなく「検索力」です。現代では、これでかなりの問題が解決できるでしょう。

しかし、手段自体は存在しても、環境が違ってうまく適用できないことがあります。予算が足りない、体格が合わない、材料がない、時間が不足している・・・。こういう状況ならアイデアの出番です。「手段があること」と、「解決できる手段があること」は別なのです。

この際、既存の手段を改良することで対応できるなら、必要な「ひらめき力」は小さくてすみます。しかし、それが叶わないのならば、一から手段を構築したり、あるいは別の分野で使われている手法を適応したりと、大きな「ひらめき力」が必要になってきます。

仕事によっては、小さい「ひらめき力」で問題ない場合もあるでしょうし、大きな「ひらめき力」がなければそもそもやっていけない仕事もあるでしょう。どのぐらい「ひらめき力」があった方がいいかは、ケースバイケースです。

が、「問題」なんていうものは仕事の成果以外の場所にも遍在していますので、「ひらめき力」があると便利なことは確かです。

アイデアの構図

アイデアについては、『「スキャンパー」と「エクスカーション」を使ってアイデアを出そう』で紹介されている、以下の図が簡単ながら本質を突いています。

20140211110336
※p.69より

私たちが「抱えるテーマ」を解決しようとするとき、すぐに思いつくのが「平凡なアイデア」です。

「平凡なアイデア」とは何かと言えば、すぐに思いつくものです。トートロジーっぽいですが、すぐに思いつくから「平凡なアイデア」になるのです。

あるテーマに関連して、すぐに想起されるもの。100人にアイデア出しを求めれば、90人はそれに関することを言ってしまう要素。そうしたものは、過去に実践されているでしょう。だから「平凡なアイデア」になります。

もし、アイデア出しをしたとき、他の99人がまったく思いも付かないようなことばかり想起するなら、その人は確かにすぐれたアイデアパーソンですが、逆に社会的生活も困難になるかもしれません。天才、というのはそういうことです。

一瞬で、斬新で奇抜なアイデアを出せる人にあこがれを感じるかもしれませんが、実は共感欠落という機能障害が起きている可能性もあります。

ひとやま越えた先

話がそれました。

私たちがアイデア出しをしたとき、最初に「平凡なアイデア」ばかり思い浮かぶのは当然なのです。人間の連想機能が正常に働いている証拠なのですから。

だからといって、斬新なアイデアが出せないわけでもありません。

まず平凡なアイデアを出し切ってしまう。脳の通常連想で思い浮かぶものを一つ一つ潰していってしまう。そうすると、「抱えるテーマ」の周辺にある素材は使い尽くされてしまいます。

アイデア出しの勝負はそこからです。

そんな状況でも何かアイデアを出そうとすると、まるで乾いた大地の下で成長をつづける根が、新しい養分を求めるかのように、脳の中の連想が新しいつながりを見いだそうとします。

そういうときに、「抱えるテーマ」とずいぶん距離のある斬新なアイデアとの出会いが生まれるのです。

ある意味では「苦し紛れ」と言えるかもしれません。養分の少ない土地でトマトを育てることに似ているのかもしれません。

ともかく、ひとやま越えた先に宝が眠っているのです。

だから、もしある人がアイデア出しをして、「自分は凡庸なアイデアしか思いつかないな」と、その時点で諦めてしまえば、その人が斬新なアイデアにたどり着ける可能性は恐ろしく低いでしょう。そこから前に進むかどうかがポイントなのです。

アイデアの余地の広さ

このアイデアの構図からは、他にもいろいろなことが見えてきます。

たとえば、アイデアの可能性は恐ろしく広いということが言えます。

「抱えるテーマ」に関連する要素の数はそれほど多くありません。小さい円の枠内に収まりきるだけの要素です。しかし、そこから遠ざかれば遠ざかるほど、要素の数は増えてきます。当たり前ですが、「あるテーマに関すること」と「関しないこと」であれば、圧倒的に後者の方が数が多いわけです。

もちろん、その全てが有用なわけではありませんが、言葉通り「アイデアの余地」はかなり広いのです。

さらに、「そのテーマしか詳しくない人」は、アイデアの広がりが小さいことも分かるでしょう。外に伸びていける場所が少ないのです。

が、私たちは「仕事」と「プライベート」など、複数のレイヤーで活動していることが多いので、「外」がまったくない人はあまりいません。それでも、より多様な経験や知識を有している人の方が、斬新なアイデアにたどり着ける可能性は高くなるでしょう。

もちろん、その「場所」を広げるためのインプットを積極的に行うこともできます。この企画で紹介されていた人々も、意識的に領域を広げるような活動を行っている方がたくさんいられました。

発想法

また、「何とつなげるか」ではなく「どうつなげるか」を工夫することもできます。それが発想法です。

ようするに根の伸び方をデザインするのです。

こっちの方向に伸ばしていきましょうね、と方向性を与えたり、強制的に連想することで根の育成速度を上げたりと、やれることはたくさんあります。

が、実際の所、これは特別なことをしているわけではありません。単に脳の機能を方向づけているだけです。

だから、「発想法なんてなくてもアイデアが出る」と言う人がいたとしても、発想法自体の有用性が否定されることはありません。たんにその人が強力な根っこを持っておられた、というだけの話です。

さいごに

いろいろな人の「思考習慣」が紹介されていて、それはそれで面白かったのですが、それらを並べてみると(※)ある種の類似性と、カテゴライズ可能性が見えてきたのも面白かったです。
※実際にテキストエディタに書き写して並べてみました。

具体的な方法論として表出している形は違いますが、根っこの部分は同じようです。まあ、同じ人間種なんですから、それはそうですね。

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