4月7日に「note」というサービスが始まった。
noteをはじめました。(加藤貞顕 | note)
デジタルコンテンツプラットフォーム「cakes」を展開されている加藤さんプロデュースの新サービスだ。
※ちなみにcakesについては以前いくつか書いた。
cakesについて、ぼんやりと
デジタルコンテンツプラットフォーム「cakes」が開始、早速購読して読んだコンテンツ
ちょこっと触ってみたところ、tumblr+Medium+Gumroad かな? という印象。機能的な理解はおそらくこれで良いと思うが、「じゃあ、それがどんな位置づけになるのか?」となると話は変わってくる。
それがなかなか掴みづらい。
「場」としてのプラットフォーム
上に引いた記事にはこうある。
本日、新サービスnote(ノート)をはじめます。noteは、個人のクリエイターが、自分のメディアとしてコンテンツを発表するためのプラットフォームです。
だったら、「Gumroad」じゃん。と思うが、どうにも違う。Gumroadは確かに販売プラットフォームではあるのだが、人はGumroadに常駐したりはしない。
noteはSNS的(というかtumblr的)なので、「ちょっと、見に行くか」ということになりやすい(可能性がある)。つまり、人がそこに集まるのだ。言い換えれば、日本語で言うところの「場」としての機能が意識されたプラットフォームなのだ。
そうして人が集まる「場」で、何を展開できるかというと、
「トーク」「イメージ」「テキスト」「サウンド」「ムービ」の5つ。
トークは、ツイートのようなもの。これは無料だけだ。
テキストは、要するにテキストで、これがMedium的である。無料と有料がある。後は、画像と音声と動画だ。
動画に関しては、現在有料販売は対応していないようだが、今後対応されるらしい。動画の販売が始まれば、また広がりが出てくるだろう。
何をどう売る
すると、次に気になるのは「何を、どのように売るのか」というお話だ。
それを考えるためには、コンテンツ展開の俯瞰的な視野が必要になってくる。つまり、ブログや有料メルマガ、セルフ・パブリッシングといった他のツールを含めて、どのように位置づけるかを考えなければいけない、ということだ。noteだけで考えていても、おそらく広がりは少ない。
が、最初のうちは深く考えても仕方がない。手持ちの情報が少ないうちは、試行錯誤だ。おそらく、Gumroadが始まった当初試されていたことが、ここでも繰り返されるだろう。それらが、一通り落ち着いてきたのち、noteらしさが浮かび上がってくるに違いない。
今のところ最低価格である100円のノートが多いようだが、上限は1万円である。悪巧み、というのではなく、何か面白い展開もできるだろう。
どう売るか:隠し方
cakesの個人版?「note」で有料コンテンツを公開する方法(しゅうまいの256倍ブログ neophilia++)
上の記事では、有料コンテンツの販売方法が紹介されている。
それをみると、コンテンツのどこまでが無料で、どこからが有料かを自分で設定できるようだ。これを、「チラ見せライン」とひとまず呼ぶことにしよう。
チラ見せラインが自由に設定できるのならば、シンプルに考えて3つのパターンが想定できる。
- さわりだけを無料にする
- 全文無料にする
- 全文有料にする
1がもっともありふれたパターン。文章の概要だけを見せて、続きを有料にする。腕の立つライターなら、冒頭にはかなり気を遣っているはずなので、プロとアマの差がはっきり出てくるタイプかもしれない。
2は、「投げ銭」と呼ばれているパターン。つまり、コンテンツを全部無料で読んでもらったあと、「もし気に入ったら、続きとかは特にありませんけど、100円払ってくれると、私としては嬉しいな(ニコっ」と提案するものだ。
すでに、そうしたノートはある。
noteを「投げ銭」型で使ってみる(鷹野凌)
※他にもあるだろう。
シェアウェア、あるいはドネーション(寄付)のような位置づけで有料機能を使うわけだ。
最後の3は、タイトル部分だけ見せて、残りは全て有料にしてしまうパターン。立ち読み禁止の雑誌をイメージすると良い。いささか強気な設定に思えるが、案外そうでもない。
コグレマサトと桜(いしたにまさき)
「何が出てくるんだろう?」的な、期待感がこのパターンにはある。情報よりも、体験を売っている感覚に近いかもしれない。おみくじとかガシャポンを引くような感覚も近しい。
ただ、これが一番扱いにくいだろうことは想像に難くない。
フローである、ということ。
tumblr的であるということは、コンテンツはフローだということになる。つまり、流れるのだ。
Amazonでセルフ・パブリッシングすれば、それは一応ストックになる。さすがに100冊も本を作れば、過去の作品を探しにくくはなるが、たどれないほどではない。
しかし、noteでは、販売しているnoteが100にもなれば、昔のノートが他の人の目に触れるのは少々厳しいだろう。コンテンツにタグが付けられて、それが検索で引っかかる、ということができたり、あるいは自分のプロフィールページで、お勧めノートを提示できたりすれば話は別だ。
あるいはnoteのページランクが上がって、Googleの検索でホイホイ上位に表示されるようになってくれれば、過去コンテンツ埋没問題は、多少緩和される。
が、そうした変更がなければ、基本的に「その瞬間に売るもの」ということになる。BlogやSNSを併用することで、過去のノートの発掘も可能だが、わりと自分で動かなければならないのは面倒であるので、やらない人が多いだろう。
今後noteがどういう方向に進んでいくのか、気になるところではある。
さいごに
現状いろいろ問題・課題は指摘されているであろうが、とりあえずテキストエディタに「引用」の装飾を付けて頂きたい。それがないと、落ち着いて文章が書けない、というのは大げさだが、書きにくいことは確かである。
それ以外の改善については、私はノンビリと待とうと思う。なんといっても、元小売店の店長である。間接的な広告料よりも、直接何かを売って代金を頂く方が、スッキリするのだ。
メディアはマッサージである。
とマクルーハンが述べたことが正しいのならば、「私たちがどういうものに、どういう形でお金を支払うのか」の感覚もまた、普段接しているメディアによって変わっていくだろう。というか、それはもうすでに変化し始めているのかもしれない。それがまだ小さいから、感じられていないだけなのかもしれない。
ともあれ、まだまだ始まったばかりだ。どんなことになるのかは、わからない。私自身もいろいろ試しながら、今後の推移を見守りたい。
そうそう、以下のような募金ノートがあるので、よろしければぜひ。
R-style活動募金(倉下忠憲)
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