以前紹介した(※)館神龍彦さんの『ポメラ×クラウド活用術』が、売れているとのこと。喜ばしい限りです。
※【レビュー】ポメラ×クラウド活用術(館神龍彦)
もちろん、目を見張るような販売数ではないでしょうが、著者には何かしらの「実感」があるかと思います。まずはそれが大切ですね。
隙間から生まれるもの
「ポメラ×クラウド」なんてテーマは、あきらかにニッチです。
ポメラのユーザー数が上限で、そこにクラウドに興味を持っている人の割合が掛かります。紙の本で企画案を通すのは難しいでしょう。でも、電子書籍__特に経費があまりかからないセルフ・パブリッシングであれば、ペイラインに乗せることは可能です。
『KDPではじめるセルフ・パブリッシング』でも触れたことですが、KDPやその他のサービスによって、低コストでの「出版」が実現されたことにより、これまで「出版」にのせられなかったコンテンツが人の目に触れる可能性が生まれています。ニッチなものが、表舞台に出てこられるようになってきているのです。
もちろんあらゆることには裏表があるので、良いことばかりではありません。玉石混淆感を加速させる事態も起こるでしょう(というか起こっている)。しかし、生まれ得なかったものが生まれた、という点はぜひとも尊重しなければなりません。
ニッチでもいいよね
人間というのは、生物学的に共通している部分もあれば、内側に抱えている個別な部分もあります。マスなメディアは、共通の部分に注目し、個別な部分を切り落とそうとします。でないと、マスにならないですからね。ニッチなコンテンツが生まれえる場というのは、「ニッチでもいいよね」というメッセージを私たちに発信しています__というのは、少々大げさかもしれませんが。
もともと日本って、多様性・細分化の文化な気がします。一億層中流なんて、本当に最近生まれた単なる幻想です。それは、もはや「ブログ」なんて一つの言葉では括りきれない日本のブログ文化を眺めていても感じるところです。
そういえばブログだって、ニッチなものが生息できる場所です。
株主からの外圧がないので、一日のPVが5のブログを運営していたって、誰に怒られるわけでもありません。それで、いいのです。もちろん、それでご飯を食べることは不可能でしょう。でも、それが唯一の目的でしょうか。人それぞれに、個人的な目的を有しているものです。多様性を排除した先に、豊かな世界は待っていません。
さいごに
マスが作り出す文化様式は、人々を鋳型にはめてしまう。というのは、さすがに大仰すぎる気もしますが、ある種の息苦しさを発生させてしまうことはあるように思います。多くのメッセージが「こうしなさい」「みんなこうしてしますよ」だったら、やっぱりしんどいですよね。でも、そうしたメッセージが生み出せる何かもあります。話は単純ではありません。
マスかニッチか、というような対立軸で考えるのではなく、「じゃあ、自分にできることって何だろう」「自分がしたいことって何だろう」「自分が求めていることって何だろう」という視点から、適切な機能とツールとその運用法を考えていくのがよろしいのでしょう。
とりあえず、少しずつではありますが、ニッチなものが息をしやすい雰囲気は生まれつつあるように感じます。感じるだけかもしれませんが。
▼こんな一冊も:
ポメラ×クラウド活用術: ポメラをクラウドエディターにする方法 |
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舘神龍彦
舘神龍彦 2014-03-24 |
KDPではじめる セルフパブリッシング |
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倉下 忠憲
シーアンドアール研究所 2013-12-21 |