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日本の居酒屋文化とブログ

本書を読みながら、両者の共通点に想いを馳せました。

日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る (光文社新書)
日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る (光文社新書) マイク・モラスキー

光文社 2014-03-18
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注目したい点は二つあります。

一つは日本の飲食文化の<細分化>について。

各国料理のレストランに加え、ラーメン、とんかつ、牛丼、和風カレーやスパゲティなど、すっかり日本食に変容し定着した食べ物の専門店があり、さらに寿司屋、てんぷら屋、そば屋、うどん屋(「さぬきうどん」のように特定の地域のうどんしか出さない店もある)、そしてお好み焼きやもんじゃ焼きなども専門店がある。

もちろん、飲み屋だってさまざまなバリエーションがあります。

和洋だけではなく、お店のたたずまいや、チェーン店であるか個人経営であるかによっても、私たちが受ける印象はずいぶん違うでしょう。その他の国の飲食文化については詳しくありませんが、ここまでバリエーションが多い国は珍しいのかもしれません。

もう一つ注目したい点は、居酒屋文化が持つ<第三の場>的性質です。著者は、特に<赤提灯>にオルデンバーグが提唱したサードプレイスを見出しています。

家庭(ファーストプレイス)でもない、職場(セカンドプレイス)でもない、第三の場所。それがサードプレイスです。そこでは、家族や同僚とは違う人間関係が育まれ、個人のペルソナ(あるいはレイヤー)を重層化させるような機能が期待されます。社会学におけるウィーク・タイズも、こういった場所で生まれるのかもしれません。

と、考えたとき、これってそのままブログに当てはまるよな〜と感じたのです。

細分化

ブログの細分化については、解説の必要もないでしょう。単に数が多いだけではなく__多いことも要因でしょうが__、ジャンルやスタイルが本当にさまざまです。

弱めのマスメディアに近いぐらいの影響力を持つブログもあれば、狭い知人にしか読まれていないブログもあります。個性的なブログもあれば、金太郎飴なブログもあります。

居酒屋でも同じでしょう。人気のお店もあれば、隠れた名店もある。そして、チェーン店もある。人によって好みはあるでしょうが、どのお店も、売り上げを作りながら経営を続けています。そこに貴賤はないでしょう。

こういうのは日本文化的な何かなんでしょうが、そこには立ち入りません。両者に共通しているところがあるな〜という感触だけで十分です。

第三の場

ブログって、<第三の場>です。あるいは、<第三の場>になりうる存在です。

完全に家族向けに書いている人にとっては、第一の場所に属するでしょうし、ブログを仕事にしているなら、第二の場所になります。でも、多くのブログは、<第三の場>的に機能しているのではないでしょうか。

家庭でもない、職場でもない、それでいて社会的な場所。

私もブログを介して知り合った人がたくさんいます。家庭と職場だけでは永久につながりなんか生まれなかった人たちです。興味・関心が、どこかしらつながっている人。

それは、居酒屋を選ぶ場合でも同じでしょう。あるお店が好きというのは、そのお店の雰囲気が好きなんだと思います。だから、足繁くそのお店に通う人は何かしら近しい部分があるはずです。完全に重ならないにしても、うんうんと頷けるだけの何かがあるはずです。

3つの点

言葉が文脈の中で意味を持ち始めるように、人もコンテキスト__つまり置かれた場によって立ち上がってくるものがあります。

家族向けの「自分」と、同僚向けの「自分」は、どこかしら(あるいは完全に)違いがあるでしょう。であれば、<第三の場>で立ち上がってくる「自分」もまた違うはずです。新しい個人が立ち現れるのです。

それは微妙な心地よさ(開放感によってもたらされる)と共に、新しい束縛感をも含んでいます。「自分」つまり、アイデンティティーとは何かを固定することなのだから、どこまでいっても束縛感をなくすことはできません。

しかし、1でも2でもなく、3という数字がもたらすものは__たとえば3つの点が面をつくり、椅子を安定させ、GPSの測位に役立つように__何かしら特別なものがあります。

サードプレイスでの「自分」を持つことによって、きっと他の二つの「自分」にも変化が生まれてくるでしょう。

居酒屋を選ぶ五要素

という感じで話を膨らませておいて、いきなり即物的な話にシフトチェンジします。

本書では、「居酒屋選びのための五要素」が紹介されています。もし、居酒屋とブログに共通点があるならば、その五要素はきっとブログにおいても役立つでしょう。

  1. <品>──品書きに記されている酒肴
  2. <値>──品の値段
  3. <地>の味わい
  4. <場>の味わい
  5. <人>──人間味

品と値段は、ごく当たり前の指標。やはり料理の美味しさとコスパは大切です。

でも、安ければいいってものでもありません。値段によって客層が変わってきます。一人でしんみり飲みたいなら、大衆酒場に行くのは避けた方がよいでしょう。高すぎるところもアレですが、提供されている料理やお酒と見合った値段、というのが大切です。

ブログで言えば、「コンテンツ」がこれにあたります。コンテンツが大切、というのは当たり前すぎますが、居酒屋をメタファーにして考えると、「鮮度重視」なのか「手の込んだ煮込みが売り」なのか「とにかく量」なのか、といった複数の切り口があることが見えてきます。

どんなものをどんな風に提供するのかによって、客層(読者層)が変わってくる点もブログと同じです。

地・場・人

で、残り三つの要素なんですが、こちらがより大きなポイントになるでしょう。

<地>は居酒屋がある街の土地柄や立地条件。店と街との関係に注目した要素。
<場>は店構えや外観および店内の諸要素──規模や構造、内装や照明や音量など──。
<人>は店主と、お客さん(とりわけ常連客)。

一番わかりやすいのは<場>ですね。ブログで言えば、デザインにあたるでしょうか。

格好いいデザインや機能溢れるデザインが優れている、とは言い切れないでしょう。大衆食堂には大衆食堂に適した、高級料亭には高級料亭に見合ったお店の作りがあります。それが雰囲気を決めるのです。テーブルとテーブルの距離が、他のお客さんとの距離を決めてしまうように、ブログのデザインもかなり重要です。凝ればよい、というものではなく、方向性とどれだけ合致しているのかが大切です。

もちろん、見るに堪えないようなものは、お客さんを呼び込めないところも居酒屋と同じですね。

<地>は、いろいろな解釈ができるでしょう。

一つには、「○○ブログ」というカテゴリーの中でどういう位置づけを持っているのかということ。もう一つは、ブログサービスの中での位置づけです。ここはややこしくなりそうなので、あまり言及しません。

で、最後は<人>です。やっぱり最後は<人>なのです。

そこそこ旨い料理を手ごろな値段で出すことは難しいかもしれないが、これはチェーンの居酒屋でもできる場合があるから、さほど難儀だとは言えない。だが、小ぢんまりした店では、カウンターの内側に立っている店主はかけがえのない存在であり、そのひとりの人間によって、店での居心地が大きく左右される。さらに、客たち(とりわけ常連客)も店内の雰囲気に対して大きな影響を及ぼす。

チェーンではなく、個人経営の居酒屋に行ったことがある人ならば頷ける話でしょう。

かく言う私も、馴染みのお店があるのですが、やはりそこの店主さんの魅力に惹かれている部分が大いにあります。お酒を飲まない妻に車を運転してもらいわざわざ25分ほどかけて、そのお店まで飲みに行っているのです(田舎でも飲み屋ぐらいは近所にあります)。

チェーン店にはチェーン店の良さがあり、個人経営には個人経営の良さがあります。

そしてまた、それぞれに生存戦略は違っているのです。きっとチェーン店のノウハウを個人経営にそのまま取り入れたら__つまり、誰でもお店を回せるようにしたら__そのお店の良さは失われてしまうでしょう。

小さなお店を経営するためには、どうであれ店主の個性を活かすような形にしなければいけません。たぶん、ブログでも同じことが言えるかと思います。新聞のような記事の書き方は、新聞のようなメディアでこそ活きるものです。

さいごに

もう少し先になりそうですが、いつかは日本のブログも、「日本のブログ文化」として語られる時代がやってくるのでしょう。

とりあえず、路地裏の奥にひっそりとたたずむ、昼間はコーヒーを出して、夕方からアルコールを提供するようなこじんまりとしたお店のような感じで当ブログもほそぼそと運営し続けていきたいものです。

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