感想群

Evernoterから見た『梅棹忠夫と21世紀の「知的生産の技術」シンポジウム』

梅棹忠夫と21世紀の「知的生産の技術」シンポジウムに参加しましたの続き

前回はあまり「知的生産」については触れませんでした。

今回はそこをカバーしてみましょう。

一応Evernote「知的生産」アンバサダーをやっているので、その視点で取り組んでみます。

蓄積情報の活かし方

Evernoetユーザーとして、一番ぐっときたのは、Session.1の渡邊恵太さんのお話でした。しかも、二点あります。

一点目は、メモからの発想について。もう一つは、(なかば強制的な)想起の仕掛けについて。

簡単に紹介してみましょう。

メモが飛び交う空間

まず、はっとしたのが「Memorium」についてです。

Memorium

上のページをご覧になっていただくのが一番ですが、一応解説しておきます。

二つの情報空間をイメージしてください。

一つは、あなたの興味のあるキーワードや検索履歴が保存されている空間です。言い換えれば、あなたのinteresting Databaseです。

もう一つの情報空間は、それらのキーワードが飛び回る空間です。画像的なイメージは、スクリーンセーバーを思い浮かべてもらえるとよいでしょう。比喩的なイメージでは、子どもが走り回る広場みたいなものです。

Memoriumでは、interesting Databaseから作成されたカードが空気中の酸素分子のようにディスプレイの中を飛び回ります。

メモが衝突するとき

ここまでは、わりと普通のツールですね。Evernoteのノートをランダムで表示するスクリーンセーバーみたいなものです。

面白いのは、そうして画面を飛び交うカードとカードがぶつかったとき、自動的に新しいカードが作成される点です。

その新しいカードはinteresting Databaseから引っ張り出されるわけではありません。ぶつかったカードに記載されていたキーワード(二つありますね)による、Googleの検索結果によって作り出されるのです。

つまり、「カレーライス」と「ウェアラブル」のカードがぶつかったら、「カレーライス ウェアラブル」という検索が行われ、その結果がカードになって、ディスプレイの中に新しく流し込まれるわけです。そうして生み出されたカードも、もちろん動き回り、別のカードとぶつかって……と、アイデアの交配が自動的に繰り返されていきます。

水槽の水質管理のように一定回数反射したカードは自動的に消えていき、それを補うように新しいカードが投入されるので、ウィンドウの情報がほとんど変わらない、ということはありません。また、あらかじめ登録しているキーワードは自分の関心に基づいているわけですから、雑多な情報が提示し続けられるわけでもありません。

実に面白い構造です。

片方では、自分自身のinteresting Databaseを想起するような働きがあり、もう片方では他人の知識(google提供)によるアイデアの触媒がある。もちろんキーワード二つで検索したところで、新しいアイデアが生まれるわけではありません。そもそも検索できている時点で、そこで見つけられるものは「新しい」ものではないでしょう。

しかし、検索結果を見て、自分が何か閃くことは十分ありえます。

複数人で行われるブレストでは、他者の面白い視点を取り入れることが推奨されますが、それに近しい何かがこのMemoriumの振る舞いから感じられます。

私もEvernoteを使った発想アプリをいろいろ妄想しているわけですが、この発想はありませんでした。

二つのポイント

Memoriumのポイントは二つあります。

一つは、これらが自動的に行われていること。もう一つは、自分の知識・アイデア・情報以外の要素を入れていること。ある意味で、この二つは「21世紀の知的生産」と呼びうる要素を持っていると感じます。

ちなみに、カードを作成するバックボーンはEvernoteにすぐに置き換えられるでしょう。問題はGoogle検索に当たるものをどうするのか、です。

Google検索以外にも__あるいは「検索」以外にも__何かアイデアが潜んでいそうな気がします。

隙間時間に入ってくるコンテンツ

もう一つは、AutoFillのコンセプトです。

一から説明すると長くなりすぎるので、以下のページの「TimeFillerのAutoFill機能」をご覧ください。

ZenRock

これまでのコンテンツの楽しみ方は、たとえば2時間映画を見るために、他の予定を調整して2時間の空白を作る、というもの。他対して、AutoFillのコンセプトは、日常生活に存在する隙間時間に見合ったコンテンツを自動的に提示する、というものです。

電子レンジで30秒温めたら、30秒の尺にあった動画が表示される、というデモがシンポジウムでは流されていました。

この「日常に潜んでいる隙間時間にコンテンツを放り込んでいく」とうやり方は、Evernoteによくある「貯めるだけ貯めるんですけど、なかなか見返す時間が無くて」問題をうまく解決できるような気がします。

デモではYouTubeの動画が流されていましたが、別にこれは自分のライフログやアイデアノートであってもよいわけです。むしろ、その方が「時間の潰し方」としては面白いことだってあるでしょう。

この辺りの仕組みは、グーグルグラスなどのウェアラブルなツールと親和性が高そうです。

さいごに

今のところ、知的生産のツールにはアナログとデジタルの切り分けがあります。

で、デジタルツールとしては、「アナログの良さ」みたいなものを取り込んでいこう、という方向性がきっとあることでしょう。

が、それはそれとして、やはり「デジタルでしかできないこと」もまた追究されるべきです。

たとえば、タスクを管理するなら、紙の手帳とデジタルのToDo管理ツールがあります。どちらも、ある程度までは似たような運用ができますが、どうしても消せない大きな違いが実はあります。それは、「リマインダー」です。つまり、期限の日が近づいてきても、手帳の方から「そろそろやばいですよ」と通知してくれたりはしないのです。

紙の手帳は、自発的にアクションを起こして__つまり自分で手帳を開いてナンボなのです。

その点、スマートフォンなら小うるさいアラーム音と共にそれを知らせてくれます。つまり、プルではなくプッシュなのです。

Evernoteに蓄積した情報の活用も、プル型ではなくプッシュ型の何かが検討されるとまた違った次元が見えてくるのかな、という気がしています。そもそも、意識対無意識という構造でみれば、無意識は「自動的」に何かをやっているのです。意識や意図には限界があるわけです。その点は忘れてはいけないでしょう。

さらに、他の人とのコラボ(それも無意識的なコラボ)もまた、デジタル+ネットの可能性の一つです。「知的生産の技術」のスタートは個人の技術ですが、それだけに留めておくものでもないでしょう。

とりあえずは以上ですが、このシンポジウムに関連してもう一つ何か書くかもしれません。では、では。

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