自然には直線がない、みたいな話をよく聞きます。
たしかに風景を眺めてみると、植物やら動物やらには直線がありません。山や川の形も、言ってみれば水平線ですら直線ではありません。
そういう意味で言うと、直線って不自然な存在です。
だから、人間の手で線を引くときも、なかなかまっすぐな線は引けません。まっすぐな線を引くためには、道具を使うか、あるいは多少なりともの訓練が必要です。
たぶん、文章にも似たようなことが言えるのではないでしょうか。
複雑な感情・まっすぐな文章
「思ったことをストレートに書けばいいんだよ」
国語の先生が、そんな風にアドバイスしてくれるかもしれません。
でも、自分の心をじっくり観察したことがある人ならば、知っているはずです。自分の心なり思考なり感情なりといったものは、決して直線的ではないことを。それは多重的で多層的で、矛盾していて、行ったり来たりをしながらも、何かを強く訴えかけてくるものであること。
それを「ストレート」に紙に写し取ることはできません。特に文章の形で起こすのは不可能です。だって、文章というのは直線的なものなんですから。
でも、上のアドバイスはあながち間違っているとも言えません。
「思ったことをストレートに書けばいいんだよ」
は、ピュアに受け取れば、右から左の受け渡しのように聞こえます。つまり、右に思ったことがあり、左に文章がある。それをひょいっと移動させれば完成、という印象です。これには無理があります。
でも、こういう風に解釈すればどうでしょうか。
「思ったことをストレート(な形に変換したうえで文章)に書けばいいんだよ」
ここでいうストレートとは、リニア、つまり直線ということです。こういう風に解釈すれば、的外れというわけではないでしょう。
ただし、「実際にどうすればいいのか」というところはわかりません。あくまで姿勢を提示しているだけです。
さいごに
以上の類推的考察から、二つのことが考えられます。
一つは、思っていることをストレートに書くためには訓練が必要である__つまり「誰でも簡単にできる」ことではないということ。
もう一つは、定規のようにそれを補助する道具が存在するかもしれない、ということ。
さて、今この話を読んで、どのような「道具」があたまに思い浮かんだでしょうか。教えて頂ければ幸いです。
コメントを残す