「発掘」について、最近よく考えます。
ブログ10周年を過ぎてからは、特にそうです。
まずは、ストックとフローについてのお話から始めましょう。
ストックとフローの変移
手書きの静的なHTMLによるテキストサイトが一般的だった時代、新しく登場したBlogは、フローとして認識されていました。
HTMLサイトがストック、Blogがフローだったわけです。前者がページを少しずつ組み立てていく、要素を増やしていくような作り方だったのに対し、Blogはどんどん記事を流していくスタイルになります。その対比がストックとフローの関係として認知されたわけです。
一方時代が移り変わってBlogなるものが一般化した時代、新しく登場したSNSは、フローとして認識されるようになりました。こちらは現代の話なので、その感覚を解説する必要はないでしょう。Twitterに比べれば、たしかにBlogはストックです。
ストック、という語感からもわかるように、ブログの記事は増えれば増えるほどよい__少ないよりは多い方がよい__という感覚があります。
で、そうして始まったブログが、2014年近辺でぼちぼち10周年を迎えようとしています。増えた、増えすぎたストックは、何も問題がないのでしょうか。
ブログへのアクセスルート
ブログ記事へのアクセスルートを考えてみましょう。
まず、「お気に入り」からの直アクセス。ブログのタイトルで検索してアクセスするのも、このルートとほぼ同じです。
次に、RSS購読。Googleリーダーが死んだとは言え、未だにこのスタイルは一定の支持を得ています。また、SNSによる拡散もあります。
さらに、キーワード検索による記事の直接ヒットと、他のブログからのリンク、あるいは自分の記事からの他の記事へのリンクも一つのアクセスルートです。
こうした複数のルートがあるわけですが、拡散の規模ではなく、時間的推移で見ると「現在」と「過去」の二つに大別できるでしょう。
「お気に入り」や「RSS」は現在です。今日、あるいはそれに近い日に更新された記事へのアクセス。
「検索」や「関連リンク」は、時間を越えた「過去」(※)記事へのアクセス。
※もちろん今日書いた記事が今日検索される場合もあります。
この二つのアクセスルートです。
そしてブログのストックが増えてくると、過去記事へのアクセスが悪くなってしまうのではないか。そんな懸念が私の中にあります。
たどり着けない
たとえば、あなたが今日はじめてこのブログを読んだとします。気に入ったのでFeedlyか何かに登録しました。これで、今日以降の記事はあなたのもとに届きます。
では、過去記事はどうでしょうか。
非常に残念ながら、当ブログには3000以上の記事のストックがあります。まず、これを最初から読んでいくことなどできません。何か一つのカテゴリに絞っても記事数はだいたい三桁になります。もう、それだけで読む気が失せるでしょう。
記事には「関連する記事」も表示されますが、その数も限られています。ブログ全ての記事が100ほどしかなければ、関連記事である程度網羅できるかもしれませんが、3000を超えれば取りこぼしも発生するでしょう。
結局、全ては読み切れません。このルートでは、過去記事の大部分が「埋まって」しまうのです。
検索ルートも厳しい
検索であれば、そうした地層にばばっと穴を開けることは可能です。キーワードさえあれば、ですが。
私が書いている記事は、あまりキャッチーなキーワードが含まれていません。そういう言葉を必要としていなかったり、入る余地がない記事も多いのです。たとえば、先日出版した「Category Allegory」に収められているショートショートなど、タイトルを知らなければまずたどり着かないでしょう。
テクニック・ノウハウ系の記事ならば、検索というルートがありえますが、それだって一般的なキーワードだとビッグサイトばかりが引っかかって、自分の記事は検索結果の2ページ目、3ページ目ということも十分ありえます。同じキーワードを使って、切り口が違う記事を書いていても、なかなか発見してもらえないのです。
つまり、ある程度の期間続けて記事数が増えてしまったブログは、電子書籍が持つ「ディスカバラビリティ」と同じような問題が発生するわけです。
世の中には、時間が過ぎれば価値が減るような速報系の記事もあるわけですが、そうではない記事もあります。で、そうではない記事はどんどん、どんどん発見されにくくなってしまうのです。
巡る話題
先ほどは、今日初めてこのブログを読んだ人を仮定しました。そこまで極端な話でなくても、ここ数年で読み始めた人なら少なくないでしょう。はっきりいってお節介以外の何者でもありませんが、そういう人たちに「ほら、こういう記事もありますよ。これもなかなか面白いんですよ」と言いたい気持ちが、私の中にあります
でも、それはそれでなかなか難しいのです。
Twitterを使えば、過去記事を放流することもできますが、全ての人がTwitterを使っているわけでもありません。
ときどきウェブでの話題を見ていると、「それはもう3年ほど前に、ブログで書いたよ」と思うことがあるのですが、そういうのも、結局の所Blogの記事が「流れて」しまっていて、まったく読まれてないという理由もあるのでしょう。まあ、私のBlogの人気がない、という方が可能性は高そうですが。
さいごに
私自身は、ずっと「読みたい人は勝手に記事を探して読んでください」のスタンスでいましたが、10年という期間を考えると、それも無茶なことを言っているのかもしれないな、と思うようになりました。
歴の長いブロガーは、過去の記事を自分で「発掘」して、それを別の場所にまとめておくことも必要なのかもしれません。
「Category Allegory」は、その試みの一環でもあります。
Category Allegory |
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倉下忠憲
R-style 2014-06-24 |
低いところからジェンガの木を抜いて、上に積む感じかなぁ。