以下の記事を読みました。
5×3サイズ情報カードの携帯・整理・分類に便利:LIHIT LAB.の情報カードケース(tadachi-net 出張所)
私はこのケースの青色を愛用しているのですが、上の記事を読んで複数個持っておいた方がよいかな、という気がしてきました。
※リヒトラブのスタイリッシュな情報カードケース
という話はさておいて、記事後半で『情報カードとEvernote』について少し掘り下げされていたので、私も言及しておきます。
情報カード・システムについて
『知的生産の技術』で取り上げられているような情報カードを使った情報管理システムについては、二つの側面があるかと思います。
一つは、単純に情報カードを使って情報を管理するためのノウハウ。もう一つは、情報管理についての基本的な考え方の提示です。後者は、G・ポリアの著書をもじるならば『いかにして情報を扱うか』というお話になるでしょう。
情報をガラスケースに陳列して悦に入るのではなく、道具箱にしまっておきガンガン活用する。そのためには、どのようなポイントを押さえておく必要があるのか。それが情報カード・システムという実例を通じて、提示されていたかと思います。
で、そのコンセプトに関しては電子的なデータ(ベース)であっても、十分に活用できます。その辺りのお話は『Evernote「超」知的生産術』で触れましたので、ここでは割愛しましょう。
ともかくEvernoteの登場によって、名も無き個人でも__つまり特別な秘書がいなくても__情報を死蔵させずに蓄積できるようになりました。素晴らしいことです。
Evernote=情報カード?
しかし、現段階において、Evernoteが情報カードとまったく同じ役割を果たしてくれるか、というとそれはやっぱりNOです。
情報の蓄積には非常に適していますが、アイデアの操作に関しては足りない部分がまだまだあります。なので、『ハイブリッド発想術』というデジタルとアナログの融合みたいなお話を書きました。
私は大量にEvernoteにノートをストックしていますが、それでもブレスト段階では付箋やら情報カードを大量に消費します。
なぜ、わざわざそんな面倒なことをするのかというと、せざるを得ないからです。そうした作業をデジタルツールでやると、「頭が存分に機能していない」気がするのです。もともとたいした頭でもないので、やはり全力を出さないと十分な仕事はできないでしょう。だから、せっせと紙に書き出して仕事を前に進めています。
両者の違い
じゃあ、その違いとは一体何なんだ、という話になってくるでしょう。
ここで明瞭な意見を提出できるとカッコイイのですが、断言できるほどの知見があるわけでもありません。ただ、いくつかの可能性は提出できそうです。
一つには、やはりタンジブルな要素があるでしょう。触(さわ)れる、というのが大きな意味を持っています。手で動かすという、一番直感的な操作(それはもはや動作)で情報を操れる点は、間に他のインターフェースが挟まってしまうデジタルツールとの大きな差異です。
また、情報を配置できるレイヤーにも違いがあります。ディスプレイはディスプレイサイズ以上のものは表示できませんが__縮小すると文字が小さくなって使い物にならなくなる__現実世界の机はディスプレイよりも遙かに広いものです。一覧性という点では、アナログ・情報カードに軍配が上がるでしょう。
さらに、Evernoteではノートが縦・横に配置されているだけですが、情報カードならば、斜めに並べることもできますし、重ねることもできます。空間的配置による意味表現の幅広さ__これとこれは似ているから重ねて置いておこう__も、情報カードが一枚上手です。
あまり言及されない__しかし、意外に大切な__点でいえば、規格化の度合いもありそうです。
一般的に情報カードを使うときは、同じサイズのものを使用します。5×3なら、5×3ばかりを使うわけですね。でないと、保存に不便ですから。でも、便・不便以上のものもそこにはあります。フォーマットが統一されていることで、視認上の(あるいは認知上の)負荷が小さくなるのです。
脳トレのゲームで、画面中に散らばっている数字から目的のものを見つけ出す、なんてテストがあります。そういうテストでは、たいてい画面上の数字の大きさ(フォントサイズ)が変わっています。1はすごく小さくて、2はとてつもなく大きい、3は中ぐらいで、4はまたまたすごく小さい……、みたいな感じです。
もちろんこれは見つけにくくするための工夫ですが、逆に言えば、数字のサイズが揃っていれば見つけやすくなる、ということでもあります。
Evernoteでは、ノートという一つの規格にありとあらゆる情報を保存できますが、その懐の深さゆえ粒度がバラバラということが珍しくありません。すごく小さいノートもあれば、大きいノートもあります。それを単に並べても、脳トレと同じような状況に陥ってしまうでしょう。
その意味で、冒頭で紹介した記事に書かれている、
これを見て思ったのは,EvernoteとKINGJIMのMEQRUの表示部とUIを連携させ,イメージファインダーのようにEvernoteのNoteを見られないかなぁという妄想.情報カードをMEQRUで名刺のようにスキャンでき,そしてRoltoで印刷も出来たら最高です!!! KINGJIMさん,是非 製品化をたのんます!!!
は面白いと思います。この仕組みだと、「大きさ」は常に一定ですからね。
さいごに
私は「絶対に紙を使わなければならない」という理念__アナログ原理主義__を持っているわけではありません。たんに必要だから、使っているだけです。
きっと、技術的な進歩によって、紙と同じ感覚で使えるデジタル・発想ツールみたいなものも登場してくるでしょう。もしそんなものが出てくれば、私はホイホイ使うことになると思います。あるいは、そういうツールが登場するようなライトなSFを書いても面白いかもしれませんね。未来を刺激するために。
ともあれ、「情報カードを使ったときの感覚」は、実際に情報カードを使ってみるまではいまいち理解できないものだと思います。5mmほどでも興味を持たれたのならば__別に高いものでもないので__一度使ってみてはいかがでしょうか。普段デジタルツールばかりに触れているのならば、何か良い刺激になるかもしれません。
▼こんな一冊も:
知的生産の技術 (岩波新書) |
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梅棹 忠夫
岩波書店 1969-07-21 |
いかにして問題をとくか |
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G. ポリア 柿内 賢信
丸善 1975-04-01 |
EVERNOTE「超」知的生産術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-02-26 |
Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術 (デジタル仕事術) |
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![]() |
倉下 忠憲
技術評論社 2012-06-30 |