フランスの思想家ロジェ=カイヨワは「遊び」を4種類に分類した。
- ≪競争(アゴン)≫
- ≪偶然(アレア)≫
- ≪模擬(ミミクリ)≫
- ≪眩暈(イリンクス)≫
この4要素で、Ingressを覗いてみよう。
Ingress
カテゴリ: ゲーム, アドベンチャー, ストラテジー
≪競争(アゴン)≫
明確に存在する。なにせ、二大勢力の競争こそが、このゲームのバックストーリーである。
もちろん、実際にポータルを取ったり取られたりという競争もあるし、プレイヤー同士のレベル争い、記録の保持、巨大なフィールドの生成といった、さまざまな競争が含まれている。
≪偶然(アレア)≫
偶然の要素も、わりとある。
出かけた先でたまたま新しいポータルと出会う。わかりやすい偶然だ。お馴染みのポータルでも、たまたま別のエージェントと遭遇することだってある。
自分が作ろうとしてフィールドが、別のエージェントの行動によって変化を余儀なくされる、なんてこともある。プレイヤーが予期できない出来事は結構起こるのだ。
≪模擬(ミミクリ)≫
もちろん言うまでもなく、プレイヤーは「エージェント」の模擬を行う。
だいたい「エージェント」や「ポータル」、それに「ハック」や「レゾネーター」という単語が、いかにもSF的雰囲気を纏った厨二感溢れる言葉遣いではないか。
他にも大規模な「作戦」(とあえて呼ぼう)を行うためには、プレイヤーはリーダー的な立ち振る舞いを要求されるようになる。これも一種の模擬であろう。
≪眩暈(イリンクス)≫
眩暈は、ジェットコースター的なちょっとした(そして激しさを含む)トリップだ。ある意味では、非日常性でもある。
ingressに潜む非日常性は、SF的設定ではなく、新しいポータルをハックするために出かける、という行動の中に潜んでいる。
あるいはポータルというレイヤーを通してみる日常風景の変化も、そこに加えられるかもしれない。
さいごに
このようにingressは、4つの要素をわりとしっかり踏んでいる。それでいて、バランスがおかしくない。
あたりまえだが、4つの要素を入れたらなんでもゲームが面白くなるわけではない。単純な足し算にはならないのだ。カレーはおいしい。フグもおいしい。じゃあ、フグカレーは?
調和が大切なのだ。
その意味で、ingressは「遊び」のエッセンスのそのまた中心部分をきっちりおさえた、良いデザインのゲームであると思う。万人向けである、とは言えないかもしれないが。
▼こんな一冊も:
遊びと人間 (講談社学術文庫) |
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ロジェ カイヨワ 多田 道太郎
講談社 1990-04-05 |
遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継 |
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株式会社モバイル&ゲームスタジオ
ソフトバンククリエイティブ 2012-03-30 |