2-社会情報論

デジタルを遠ざける授業とデジタルで近づける授業

以前紹介した『デジタルは人間を奪うのか』に、面白い二つの教室風景が紹介されていた。

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一つは、アンチ・ネットワークだ。

シカゴ法科大学院では2008年から教室内でのインターネットを禁止しているという。ネットに気が散ってしまう学生を生み出さない配慮のようだ。授業に集中せず、ノートPCやスマートフォンからネットにアクセスし、ウェブサーフィンやSNSやゲームを楽しむ。中にはTwitterで先生や授業を揶揄する生徒もいるらしい。

また、米ジョージ・メイスン大学法科大学院教授のマイケル・クラウス氏も、授業中にノートPCの使用を禁止しているらしい。

その理由は、PCが思考の代用品になっているからだという。法律の概念を理解するには熟考する必要があるが、教授が言ったことをそのままPCに打ち込む学生は、しっかりとその内容を理解し、分析する間がなくなっているとしている。

わからない話ではない。

デジタルを最大限に活用

もう一つは、積極的なデジタル利用である。

学校はシンガポールの南洋女子中学校。教室にはブロードバンドインターネット接続が用意されており、教師や生徒は個々にiPadを持っている(Apple社の協力があるようだ)。

数学、国語、中国語、歴史など、それぞれの授業において、生徒たちは手元のiPadとアプリケーションを駆使している。教室では黒板とともに大きなスクリーンが設置され、生徒がある課題に対する解をiPadに入力すると、そのスクリーンで即座にクラス中に共有される。教室の中は、同級生の考えをリアルタイムに共有し、お互いが学び合う雰囲気に溢れていた。

すばらしい教室ではないだろうか。

また、ニュートンの法則に関する授業では、自分たちで水ロケットをつくって打ち上げ、その過程をiPadで記録するという。アプリケーションで発射角度を推定したり、速度と時間のグラフ作りや、軌道のマッピングもできるらしい。なんとなく映画『真夏の方程式』で湯川先生がなんども水ロケットを打ち上げていたシーンが思い出される。

もちろん、校内でのスマートフォンやタブレット利用、インターネット接続も原則自由。すべて生徒の自主性に委ねられているようだ。

デジタル端末を活用しているのは生徒だけではない。教師は、iBooks Authorのようなテキストブック制作アプリケーションを使って自分で教科書も作っているらしい。生徒がiPadを使っているのだから、いちいち印刷する必要もない。バージョンアップも容易だ。

教師と生徒が『ロミオとジュリエット』についてオンライン上のフォーラムで意見交換することも行われているようだ(国語の授業の一環)。中学生の時代から読書会を体験し、さらに言えばフォーラムで意見交換する練習もしている。Twitterでむやみな炎上を体験する可能性は低くなりそうである。

さいごに

もちろん、二つを並べてどちらが優れているかを論じることに意味はない。だいたい両者は比較するには違いが多すぎる。

国も違うし、年齢も違うし、世代も違う。かたや大学院(しかも法科大学院)で、かたや中学校である。

それでもこの二つの授業風景からは、考えられることが多く得られるような気がする。

少なくとも一つだけ言えることは、これからの子どもたちは、デジタルにどんどん親和的になっていくだろう、ということだ。疎遠になるとは考えにくい。今を生きる大人よりも、はるかにデジタル端末を使いこなすようになり、ネットワークを身近なものに感じるようにもなるだろう。

そして社会も変化し、求められる人材や社会を生きる上で必要なスキルも変わっていく。

そういうときに教育をいかにデザインするのかという問題は、「アナログが良くて、デジタルは悪い」(あるいはその逆)という矮小な視点よりも、はるかに広い視野が必要とされるはずだ。

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