inbox zanのなれの果てとしてのincubator

先日、inboxの場所を変えました。Evernoteの話です。といっても、たんにスタックの中に入っただけなんですが。

screenshot

今回の主役はincubatorというノートブックなんですが、まずはinboxのお話からはじめてみましょう。

inbox

inboxとは何でしょうか。もちろん、受信箱です。Evernoteで言えば、一番最初にノートが入ってくる場所。Evernoteという巨大な記録構造物におけるエントランス__それが、inboxです。

inboxはあくまで受信箱であり、書類棚ではありません。つまり、そこに物を貯める機能はないのです。仮初めの置き場所であり、一次的な避難場所でもあります。

最初に大きなところにまとめておき、そこから適切なノートブックに移動させる。大きな病院における総合受付が一番近いイメージかもしれません。はい、あなたは内科ですね。あなたはこのファイルを持って脳神経外科にいってください。そんな割り振りが行われる場所がinboxです。

inbox zero

inboxをinboxとして保つために、「inbox zero」というコンセプトが生まれました。メールの受信箱をタスクリストにしない、という考え方です。

入ってきたメールは、「はい、これはカレンダーに登録して削除」「これはタスクリストに載せておいてアーカイブ」と必ず何らかの処理をして、inbox上から追い出してしまう。で、一日に最低一回程度はinboxの中身を空っぽにしてしまう。それがinbox zeroです。コンセプトというか、ある種の作法と言っても良いかもしれません。

これはたしかに強力です。

というか、こういう決め事がないとすぐにinboxって溢れかえってしまうものなのです。きっと何かを決めるためには認知資源が必要なのでしょう。脳は、それを使いたがらないものなので、ついつい後回しにしてしまう。

そうした状況を回避するための作法として、なかなか優れた考え方です。Evernoteにも、もちろん適用できます。

行く当てのないノート

さて、inboxからの振り分けで、一番の肝になるのは「適切なノートブックへの割り振り」でしょう。もちろん、「適切なノートブックとはどこか?」という問いは決して簡単なものではありません。慎重な検討が必要です。

雑多な情報をストックするEvernoteには、メールとは違ったものが入ってくることがあります。

以下の記事はアウトライナーについての記事ですが、参考になる部分があるので引いてみましょう。

思考のOSとしてのアウトライナー、生活デザインのアプリケーション(Word Piece)

それでも移動先がなく、新しいトピックの立てようもないものは、そのままThought Logに残しておく。しばらく寝かせておいてから見ると、必要か必要じゃないか分かってみることが多い。

行く当てのない思いつきを入れる場所がちゃんとあるというのは、自分にとってはけっこう重要なニーズだった。Inboxという形式を取らなかったのは、Inboxの中に行き場のない項目をためるわけにはいかないからだ。

「行く当てのない思いつき」というのは結構あります。有用かどうかなのかも、その時点では判断しにくいものもそこそこあります。

そうしたものは、当然そうしたものが集まるノートブックに入れなければいけません。

で、私の場合それは「アイデアノート」というノートブックが役割を担っていました。すごいことに、もうそこには3000以上のノートが集まっています。

自分の過去数年分の思いつきが、一つのツールですべて俯瞰できてしまう。実に楽しい体験です。ある種の希望みたいなものも立ち上がります。

が、数が増えてくるとそれはそれで厄介な問題を引きおこします。

inbox zan

簡単に言ってしまえば、増えすぎると昔のものはたまにしか見なくなる、ということです。さすがに毎日3000個のノートを見返すわけにはいきません。

で、これが厄介だったのです。

とりあえず「思いつき」に属するものはすべてアイデアノートに入れる。でも、その中には「すでに完結している」アイデアもあれば、「完結していない」「価値が見極め切れていない」アイデアもある。前者は必要になったときに検索するなりして発見すればよいが、後者はちょいちょい見返したいところ。しかし、ノートが多すぎるとそれが埋もれてしまって、なかなか目に入らなくなる。

こういう問題です。

で、私は考えました。inbox zeroを捨て、inbox zanに移行すればどうなるだろうか、と。zenではなく、zan(残)です。つまり、価値が見極め切れていないものは、inboxに残してしまう。そうすれば、一日一回はinboxを処理するので、そのノートが目に入ります。

一見素晴らしいアイデアのように思えますし、実際にそれは効果を発揮していました。

数が増えるまでは。

death of inbox zan

価値が見極め切れていないものは、少しずつではあるにしろ、確実に増えていきます。3日経ったら確実に判断できるようになる、といった定型のものではありません。そうすると最初10であったものが20に、20が30に、30が……という風にinboxが膨れあがってくのです。

で、100を超えたあたりで、これはもうダメだなと思い至りました。もはやinboxに入ってくるノートと、残っているノートでは後者の方が数が多いのです。こうなると処理すべきノートを見つけるのに時間がかかりはじめます。inboxの意味がありません。

こうして、inbox zanのコンセプトは、一度も陽の目を見ることなく死んでいきました。大きな希望と引き替えに、深い絶望を周囲にまき散らしながら……

みたいなことは全然なくて、代わりあたらしいノートブックが一つ立ち上がりました。それがincubator。ようするに「価値の見極めきれないもの」をパージした格好です。

incubator

incubatorノートブックは、極言すると、

「これについて、もうちょっと考えたいな」

と思うものを入れておくためのスペースです。inboxに入ってきて、どこにも行くあてがないノートを入れておくための場所です。

もちろん、このコンセプト自体はそうたいした話ではありません。アイデアノートを二つに分けただけとも言えます。

一つ、私の中でエポックメイキングだったのがこのincubatorノートブックをinboxよりも上に置いたことです(トップ画像参照)。これまで私のEvernoteではinboxが常に最上位にきていました。なにせノートの入り口ですから視覚的に収まりもよいですし、「一日一回必ず処理する」という要件からも一番目につきやすい場所に配置されているのは合理的でもあります。

で、そうした要素をまるまるincubatorノートブックに受け継がせました。といっても、スタックにしてあるので、inboxもあいかわらず重要ポジションに位置しています。そこに並列に並べるようにincubatorを置いたわけです。

さいごに

現状は、比較的うまくこの体制は回っています。ただし、incubatorのノートが増えてきたらまた話は変わってくるかもしれません。そういうときは上限を設定してみるのも良さそうです。

ざっくり教訓みたいなものをまとめておくと、

  • 数が増えると性質が変わる
  • 見るべきものを見るための工夫の必要性
  • Evernoteにはアーカイブとアクティブが併存する
  • inbox zanは止めた方が良い

ということになるでしょうか。

では、みなさまも楽しいEvernoteライフを。

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