4-僕らの生存戦略

ゆっくり学ぶこと

ふたつの姿を結びつけるためには、<記憶の保留>が必要なんだ。

と、池谷祐二さんは『進化しすぎた脳』(p.193)の中で書いておられます。

進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス) 池谷 裕二

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どういうことでしょうか。

たとえば私を正面から見た瞬間に、「これが@rashita2か」と学習したとしましょう。@rashita2の概念が確立されたわけです。ということは、それ以外は@rashita2ではなくなったということでもあります。つまり、私がくるっと右を向いてしまったら、もうそれは@rashita2ではなくなってしまう。

かといって右を向いた@rashita2を@rashita2と再インストールすれば、今度は正面の@rashita2が@rashita2から疎外されてしまう。なかなか厄介な事態です。

だからこそ、<記憶の保留>が必要だと池谷さんは述べます。そして、実際に脳はそういう機能を持っているようです。つまり、正面から見たときに「これは@rashita2かもしれないが、いやいやまてよ」と判断し、右を向いたら「そうかこれも@rashita2か、黒髪が共通しているな……」と判断し、といったことが行われるようです。概念の緩やかな境界線が徐々に固まってくるような感じでしょうか。

みんな勉強してて、なかなか覚えられないな、と苦労することがあるかもしれないけれども、それはこの脳の作用の裏返しなんだよね。しょうがないんだ。ものごとの裏にひそんでいるルールを確実に抽出して学習するためには、学習スピードが遅いことが必須条件なんだ。そして繰り返し勉強するこもまた必要なんだね。

正面の@rashita2も、右側の(あるいは左側の)@rashita2も、共に@rashita2であるという認識__それはよりリアリティを帯びた認識__にたどり着くためには、ゆっくり学習することが必要なようです。

そして、その確保された時間的猶予の中で、何度も対象に触れてみることが大切なようです。どれだけゆっくりでも、正面からしか見ていなければあまり意味はありません。

早急すぎる決断を回避し、それ以外の可能性を受け入れる余地を持つこと。そういうのが大切なのでしょう。

さいごに

ともかく、表面に見えているものに振り回されないためには、学習スピードの遅さがキーになる。ゆっくり覚えてはじめてルールの抽出ができる。

私たちは日常的にどんなインプットを行っているでしょうか。

もし世の中に「白か黒か」思考が蔓延しているとすれば、情報流通のスピードが速すぎるのかもしれません。別の言い方をすれば、求められている学習スピードが速すぎるのです。

正面から以外の@rashita2を受け入れようとすれば、どうしたって時間はかかります。でもウェブ社会では速度が重視され、「ほら、この正面が@rashita2ですよ。間違いありません」と、素早く、そして力強く断定する人が受ける傾向にあります。緩やかな境界線を、一瞬で固めてしまう人の声が大きくなってしまうのです。

でも、そういう流れはさておいて、ゆっくり考えてみようではありませんか。本エントリーが何を言っているのかも含めて。

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