よく使っている3つのツールがある。
Evernote,Scrivener,WorkFlowy
これらをパッと眺めたとき、なんとなく以下のようなグルーピングが脳内で発生する。
Evernote,Scrivener| WorkFlowy
EvernoteやScrivenerは、同一プロジェクトかつ種類の異なるファイル(テキストと画像など)を一元管理するのに最適だ。たいして、WorkFlowyはアウトライナーであり、基本的にはテキストのみが管理対象になる。
しかし、よくよく考えてみると、以下のようなグルーピングも可能になる。
Evernote,WorkFlowy| Scrivener
そして、こちらの方が情報管理の本質部分では近しいものがあるのかもしれない。
どういうことだろうか。
EvernoteとWorkFlowyは似ている部分がある、ということだ。
いつでも、どこでも
第一の共通点は、クラウドであるという点だ。これについては解説は必要ないだろう。
EvernoteとWorkFlowyはブラウザでも使えるし、iOS端末でも使える。しかし、Scrivenerはクライアントでの使用のみが想定されている。
一応、Dropboxにファイルを保存すれば、端末を飛び越えることは可能だが、標準機能ではない。あくまで、そういう風に使える、というだけだ。現状のScrivenerのツール思想にクラウドはない。
※もちろん今後どうなるかはわからない。
ファイル or not ファイル
第二の共通点は、ファイルベースではない、という点だ。ここは少しややこしい。
Scrivenerは、ピュアなファイルベースのソフトだ。プロジェクトごとにScrivenerの専用ファイルを作る。テンプレートもファイルごとに適用する。ごくごく普通のアプリケーションだ。
WorkFlowyは、それとは異なった使い方をする。
WorkFlowyにはアウトラインが一つしかない。「新規ファイルの作成」もないし、「新しいタブを開く」もない。一つのアカウントには一つの大きなアウトライン。もちろん、機能を渋っているわけではないだろう。それで問題なく使えると、開発側が想定しているのだ。いや、むしろ、その方がうまく使えるとすら考えているのかもしれない。
アウトラインが一つしかないなんて不便じゃないんですか、と思われるかもしれないが、WorkFlowyにはフォーカスの機能があるのでまったく問題ない。フォーカスとは特定の項目(とその子の項目)だけをピックアップして表示する機能で、それが擬似的なファイル管理として働いてくれる。
ようするに、WorkFlowyを使うユーザーは、メインのアウトラインになんでも突っ込んでいく使い方をすることになる。つまり一元管理だ。
私の仕事のプラットフォーム
さて、この二つを見比べてみたときに、Evernoteはどちらに近いと言えるだろうか。
私はWorkFlowyだと思う。多様なファイルを扱えるという点では、たしかにScrivenerに近しいのだが、Scrivenerではプロジェクトごとに情報が閉じてしまう。その点Evernoteは、Evernoteを開けば、すべてのプロジェクトにアクセスできる__もちろん、保存していれば、だが__。
Scrivenerは各プロジェクトのプラットフォームとしては機能するかもしれないが、「私の仕事」のプラットフォームにはならない。
WorkFlowyでは、プロジェクトAにぶら下がっている資料をプロジェクトBに移動するのは簡単だ。Scrivenerでは、少々手間がかかる。やってやれないことはない、ぐらいのものだ。
EvernoteはWorkFlowyに非常に近い。プロジェクト間のデータの移動はごくごくシンプルに行える。そうできるように設計されている。
ファイルを意識しない
Evernoteは、一見するとノートブックという「仕切り」があるが、それは擬似的なものに過ぎない。Finderを開いたら「ノートブックA」というフォルダがあって、その下にそれぞれのノートのファイルが存在している、というファイル構造にはなっていない。
基本的には一つの巨大なデータベースと、それに対応するデータがあるだけだ。
もちろんEvernoteにはファイルがある。しかし、Finderのファイル構造をベースに情報の構造を作っているわけではない。だからEvernoteを使う人は、ファイルがどう、フォルダがどう、といったことを一切考えなくてもよい。
※その代わり、中身を覗いてもさっぱりという事態にはなっている。
ファイル構造からの解放、というと少々大げさだが、その意義はこれから問われていくような気がする。
さいごに
しかしながら、Evernoteがアウトライナー的かというとそれはまた別の話である。あくまで「単一のメインストリームしかない」という点で、EvernoteとWorkFlowyが似ている、というだけの話だ。ツールの設計思想に共通点がある、と言っても良い。それは両方のツールがクラウドであることにも呼応しているだろう。
とりあえず、Evernoteはアウトライナー的とは言えない。
ノートブック間でノートを移動するのは楽チンなのだが、ノート間での情報の移動は手間がかかる。せいぜいがノートリンクかマージぐらいである。粒度の小さい情報を、アウトライナーのように機動性を持って扱うには、十分とは言い難い。
※そして、マージのスタイルがあまりCoolではない。
Skitchのように、ノートを外部ファイルで開くと一行が一項目としてアウトライナーで編集できるようになるとか、あるいは、アウトライナーのフォーカスをモチーフにして、一つのノートブックだけを別で表示できるようになると、面白いかもしれない。
まあ、そのためにAPI公開しているんでしょ、と言われればそれまでなのだが。
▼拙著:
EVERNOTE「超」知的生産術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-02-26 |