2014年に読んだ(あるいは再読した)本で、面白かったものを10セット紹介します。
無限の始まり
無限の始まり:ひとはなぜ限りない可能性をもつのか
デイヴィッド・ドイッチュ 熊谷 玲美
圧巻。
ゲットしたのは2013年後半なんですが、読了までに半年かかりました。教養の考具セットみたいな本。理解できるかどうか、とかそういう細かいことはいいんだよ、という気持ちにさせてくれる一冊です。
【書評】無限の始まり(デイヴィッド・ドイッチュ)
スパルタ式とアテナイ式
贈与論 + 情報の文明学 + GIVE & TAKE
贈与論 (ちくま学芸文庫)
マルセル モース Marcel Mauss
情報の文明学 (中公文庫)
梅棹 忠夫
GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
アダム グラント Adam Grant
3冊をワンセットにパッケージングしてみました。
贈与が形作る社会__あるいは贈与によって形作られる社会__と、情報の経済学、そして与えることの効用。これらは見事に一つの方向を示しています。
女のいない男たち
女のいない男たち
村上 春樹
卓越した技巧。
うまいですね。ほんとうに。文学面での評価は私にはできそうもありませんが、心に残る作品がたしかにあります。あと、文体がすごい。違和感ないほどナチュラルなのに、存在感のある文体です。
日本の思想 + 日本の居酒屋文化
日本の思想 (岩波新書)
丸山 真男
日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る (光文社新書)
マイク・モラスキー
今更ですが丸山眞男を読んで、今更ながら感銘を受けました。
本書には「タコツボ」の話が出てくるんですが、よくよく考えれば細分化が進む日本の飲食業も似たような傾向があるのかもしれません。という風に、とんでもないところまで射程が広がる本です。
量子怪盗 + ボッコちゃん
量子怪盗 (ハヤカワ文庫SF)
ハンヌ ライアニエミ 酒井 昭伸
ボッコちゃん (新潮文庫)
星 新一
なんかもうジャーゴンで頭を殴られ続けているような感じがするのが『量子怪盗』です。でも、それが良いんですよね。別にマゾっ気があるわけではなく、空想のしがいがあるということです。
で、それとまったく対照的なのが星新一さんなんですが__交互に読むと頭がクラクラしてきます__、これはこれでイマジネーションを刺激します。ただし、その方向は空想の世界ではなく、現実の世界に向いているという違いはあります。
選択の科学 + 偶然の科学
選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義 (文春文庫)
シーナ アイエンガー Sheena Iyengar
偶然の科学 (ハヤカワ文庫 NF 400 〈数理を愉しむ〉シリーズ)
ダンカン ワッツ Duncan Watts
シーナ・アイエンガー教授は、選択というものがいかに重要であるかを本書で解き明かしています。選択の自由があることは、基本的に私たちにとって良いことだが、多すぎる選択や重すぎる選択は、必ずしも善であるとは限らない。ときとして、専門家の手を借りて選択することも必要。
という部分で、「うんうん、なるほど」と納得した後『偶然の科学』を読むと、専門家の予測は当てにならないみたいなことが書かれていて、一気に深みが増します。両書とも抜群に面白いです。
使える行動分析学
使える行動分析学: じぶん実験のすすめ (ちくま新書) |
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島宗 理
筑摩書房 2014-04-07 |
自己啓発書の文脈での「自分を変える〜〜の方法」みたいなものは結構ありますが、そういうのはとりあえずcontrol + aで全選択したあと、deleteキーでゴミ箱に送ってもらって、本書を読んでもらうと良いでしょう。
時間も手間もかかりますが、「じぶん実験」の繰り返しが一番効果的です。
これが物理学だ!
これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義 |
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ウォルター ルーウィン 東江 一紀
文藝春秋 2012-10-13 |
そうか、これが物理学なのか!
と感動するかどうかはわかりませんが、面白い本です。なんというか情熱がスゴイです。
情報を捨てるセンス 選ぶ技術 + 知的生産の技術とセンス + ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す
情報を捨てるセンス 選ぶ技術
ノリーナ・ハーツ 中西 真雄美
知的生産の技術とセンス ~知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術~ (マイナビ新書)
堀 正岳 まつもと あつし 小長谷 有紀
ゴミ情報の海から宝石を見つけ出す これからのソーシャルメディア航海術 (PHPビジネス新書)
津田 大介
妙にタイトルが長い本が多いですね。
ソーシャル時代の情報摂取術について学べる本たちです。
いろいろな言葉で語られていますが、いくらでも情報を摂取できる時代であれば、意図的に減らしたり・距離を置いたりする工夫は間違いなく必要でしょう。あと、情報の有用度や真偽について、自分で考える(あるいはなにかで確かめる)ことも必要です。
そういうのは面倒なわけですが、私たちが街を歩くとき車に注意するように、情報化された社会に住む人間がごく日常的にやらなければいけないことなのかもしれません。
つながる図書館 + 本は死なない
つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)
猪谷 千香
本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」
ジェイソン・マーコスキー 浅川 佳秀
一体何年が電子書籍元年なのかはわかりませんが、「本」について真剣に考えるタイミングがやってきているのは間違いないでしょう。しかし、「本」という概念に結びついている要素が多すぎて、一刀両断にすぱっと言説を提出するのが難しい状況です。
「本とは何か?」
あまりにもシンプルであり、であるがゆえに難しい問いです。
片方は本と人をつなぐ図書館の現状を、もう片方は電子書籍のこれまでとこれからを扱った本ですが、どちらもいろいろ考えることが出てきます。
さいごに
本エントリーは、「【企画】2014年の<びっくら本>を募集します #mybooks2014」への投稿エントリーです。
自分で10冊以下と要項を定めながら、どうしても10冊に絞りきれなかったので、ベースの10冊+αという形にしました。ギリギリセーフ、なはずです。
ご参加くださる方も、自由に要項を解釈してくださいませ。では、では。