7-本の紹介

【書評】数学文章作法 推敲編(結城浩)

「文章を書いたら、ちゃんと推敲しましょう」

といったことはよく言われます。しかし、何をどうすれば「ちゃんと」推敲したことになるのかは、あまり具体的に語られません。読み返して、気になるところを直す__ぐらいでしょうか。

もちろん、それは正しいわけですが、逆に言うと「気になるところ」がなければ、手直しは一切行われないことになります。でも、最初から完璧な一文を紡げる人などそういません。ということは、問題ある部分に「気付く力」が大切になります。

数学文章作法 推敲編 (ちくま学芸文庫)
数学文章作法 推敲編 (ちくま学芸文庫) 結城 浩

筑摩書房 2014-12-12
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本書は、問題に気付くための問いかけを与えてくれる一冊です。

帽子をかぶった視点

本書の第2章「推敲の基本」に、<著者の帽子、読者の帽子>という表現が出てきます。

自分が書いた文章を読み返すときに大切なのは, 自分が書いたという考えをいったん捨てることです. 私はこれを「著者の帽子を捨てる」と表現するのが好きです.

「自分が書いた文章だから…」という愛着や苦労を一度捨て去ってしまう。その代わりに「読者の帽子」をかぶって文章をチェックする。

言い換えると, 自分の目の前にある文章は赤の他人が書いたものだと考えるのです. そして、何も知らないまままっさらな気持ちになり, 一人の読者として文章を読み返しましょう.

これが推敲時の基本的な心構えである「著者の帽子を捨て, 読者の帽子をかぶる」になります。とても大切な心構えです。

しかし、よくよく考えてみると読者の帽子をかぶったところで、その人が文章を書いた事実にかわりはありません。ピュアな読者ではないのです。

つまり本書は、「読者の帽子をかぶった著者がどのような視点で文章をチェックしているのか」を提示する一冊でもあります。書き手が心の中にインストールしている、文章チェックプログラム(パソコンのウィルスチェックプログラムのようなもの)の動作を確認する本、と言い換えてもよいでしょう。

実践的、実際的な内容です。

もちろんそれが役に立たないはずがありません。奇抜な要素はいっさいありませんが、であるがゆえに基本的な要素がコンパクトに押さえられています。

さいごに

読みやすい文章を書く上で、書き手が意識すべきなのは「読み手の負荷を減らすこと」です。本書では、「読者の迷い」という表現でそれが論じられています。読み手の負荷(あるいは読者の迷い)をいかに減らせるか。それが、推敲時のポイントです。

ただし、文芸作品で読者をぐいぐいとドライブしていく文章は、読みやすいだけでは力不足かもしれません。それはまた別のレイヤーのお話と考えておくのがよいでしょう。

本書は、推敲時の心構えと基本的なノウハウがまとめられた一冊ですが、個人的には「この次の一歩」に強い興味があります。続編も楽しみです。

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