さて、元旦といえば「今年の目標」ですね。
今年一年はこれをやる!と決めるのは心躍るものです。まあ、三ヶ月も経てば、からっと忘れてしまうのもよくある風景なんですが。
今回は、目標の設定法について少し考えてみましょう。以下のステップを踏むのが、おそらくベターです。
- 去年の目標の振り返り
- 自分の価値観を確かめる
- 新しい目標を立てる
- 目標達成に必要な戦略を組み立てる
それぞれ見ていきましょう。
去年の目標の振り返り
何はともあれ、去年の目標を振り返るのがスタートです。
一年という単位で人間のスペックが劇的に向上するなんてことは、(比喩ではない)肉体改造を受けなければ到底無理な話です。昨日の自分と今日の自分のできることが似ているように、去年の自分と今年の自分のできることもそれほど乖離していません。だから、去年何を目標にして、どれだけできたのかを振り返るのは大切なことです。
達成できている目標は「おめでとう!」と心の声で祝えば良いのですが、問題は達成できなかった目標。そこで、「なぜ、達成できなかったか」を自分を責めるのではなく真摯に問いかけてみるのがポイントです。たいていは、「時間がなかった」という答えが返ってくるでしょう。そこからもう一歩踏み込んで「なぜ、時間がなかったのか」というところまで考えておくことです。
もし、この問いを自分を責めるように投げかけてしまうと、返ってくる答えが自己正当化のための言い訳ばかりになってしまいます。それは、心のダメージを防ぐ効果はありますが、事態の改善には貢献しません。素直に「遊ぶことに時間を使いすぎていたな」みたいな答えが出せるのがベストです。
あなたが社会人一年目で、去年の目標なんて立てていないというのであれば、このステップはまるっと飛ばしてもらった結構です。ただし、来年これができるように、今年の目標は必ずどこかに書き留めておきましょう。手帳でもノートでも、ブログでもOKです。
自分の価値観を確かめる
去年の目標を振り返ったから、さあ、今年の目標設定だ、と荒くした鼻息は少し押さえましょう。
ちょっと落ち着いて考える時間が必要です。
例えば、次のような一連の問いに答えてみてください。
- どんなことに価値を感じているだろうか?
- どんなゴールを目指しているだろうか?
- 心から好きなものは何だろうか?
- 自分にとってもっともインパクトのあることは?
- これだけは絶対にやりたくないことは?
- 一番大切なことは何だろうか?
人の心は動きます。感情だけでなく、そのときどきにインプットした情報にも左右されます。ジョブズの感動的な動画を見た後ならば、起業家になってみたくなるのです。でも、それって本当にあなたのやりたいことなんでしょうか。あなたが心の底から価値を感じていることなのでしょうか。
他人からの影響をゼロにして生きていくことはできませんが、心のドアを閉めて井戸に潜ることは可能です。目標は、そういう場所で考えた方が自分の肌に馴染むものができるのではないでしょうか。
一番危ういのは、自分と似たような人(と勝手に考えている人)が立てた目標を見た後に目標を立てることです。それがどれだけ偉大な目標であっても、結局の所その人の人生に沿った目標でしかありません。あなたの人生とは、柿とマルコポーロぐらい縁遠い存在です。
誰かに熱く「私はこういう目標を立てました。あなたも是非目標を立てましょう」と語りかけられたら、クールダウンの後、目標を立てることをオススメします。でないと、あなたの人生を見失いかねません。
また、自分が過去に感銘を受けた本を読み直してみるのも一手です。時間が経ってみると、ちゃちすぎてなぜその本の価値観に惹かれていたのかまったくわからない、なんてことも起こりえます。しかし、惰性で目標を立ててしまうと、そういうちゃっちい本の影響も受けてしまいがちです。
あらためて自分の鏡を覗いてみましょう。
新しい目標を立てる
自分の鏡を覗き終わったのなら、いよいよ新年の目標の立案です。いくつかのフレームがあります。おおよそは、数による分類です。
たった一つだけの目標を決める。三つ決める。十個決める。思いつく限り決める。
個人的には三という数字が気に入っていますが、やる気と体力とお金と時間がある人は10個でも良いでしょう。もちろん五個とか七個とかでも問題ありません。
さて、こうして新しい目標がリストアップできればめでたしめでたし、というわけにもいきません。
目標達成に必要な戦略を組み立てる
目標を設定するだけで、それが達成できるならそもそも目標を立てる意味はありません。
目標というのは、現状の状態と乖離があるから立てるわけです。その乖離を埋めるためには、何かしらのアクションが必要です。魔法使いですら、起こしたい現象をイメージした上で、そこに魔力を注ぎ込むのです。平凡な私たちであれば、より多くのアクション(及び資源投下)が必要になってくるでしょう。
ここで、去年の目標の振り返りが効いてきます。
去年の状況からみて、今年の目標はハードルが高すぎないだろうか。あるいは、今年の目標達成を阻害する要因となるのは、なんだろうか。
そうしたことを考えるわけです。出てきた答えによっては目標を下方修正することも必要でしょう。大丈夫、どこの企業だって下方修正はやっています。幸い私たちは株式市場に上場してはいないので、下方修正の発表による投資家の反応を気にする必要はありません。数値目標であれば、8割ぐらい(つまり2割減)ぐらいにしてみてもよいでしょう。
高い目標は人を引っ張る力がありますが、高すぎる目標はむしろ断崖から人を突き落とす効果があります。つまり、自信の喪失ですね。それが繰り返されると無力感を学習して、”安易な自己啓発”__ほぼ矛盾した言葉__に吸い込まれてしまう危険性があります。それよりも、「ある程度は達成できるであろう」目標を立て、実のある自信を育んでいく方が健全ルートでしょう。
また、目標の下方修正だけではなく、ブレイクダウン__中目標・小目標の設定__や、リマインダー__よく目にするところに目標を貼っておく__というのも一つの戦略です。
こうしたことをまったくしないのであれば、三ヶ月先にはからっと忘れてしまっていることでしょう。もちろん、それでも人は生きていけますので問題ありませんが。
さいごに
今回は目標の4ステップを紹介しました。
本当に地味すぎて申し訳ありませんが、着実な方法論ではあります。とりあえず、深呼吸してから目標を立ててみてください。
▼拙著:
クラウド時代のハイブリッド手帳術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-09-23 |