7-本の紹介

【レビュー】ビジネスに効くスケッチ(山田雅夫)

ビジネスとスケッチ?

意外な組み合わせだが、たしかに関係はありそうだ。

ビジネスに効くスケッチ (ちくま新書)
ビジネスに効くスケッチ (ちくま新書) 山田雅夫

筑摩書房 2015-01-08
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※献本ありがとうございます。

概要

目次は以下。

第1章 スケッチはビジネスの武器になる
第2章 スケッチ眼を養う―見て、強調して、省略する
第3章 スケッチで理解する―メモ、ノートの方法
第4章 プレゼン力をアップする―伝えるためのスケッチ術
第5章 スケッチで考える―描けばアイデアが浮かぶ
第6章 仕事スケッチの文具考―機能性と機動性のバランスが大事

要素は大きく二つあるように思う。

一つは、スケッチそのものの技術。物を観察し、それを線に落とし込む。言葉で書くと簡単だが、実際にやるとなるとそうはいかない。私なんかは絵描きが下手なので、苦手意識も強い。しかし、物は形状の組み合わせであったりだとか、あるいはまっすぐに線が引けることが重要だとかという話にはなるほどと納得できた。

本書では練習材料も紹介されているので、それをコツコツこなしていけばスケッチは上達していくのだろう。

もう一つは、スケッチとは何か、ということについて。

第二章では「スケッチ眼とは、洞察力である」と書かれている。ようするに対象の要点をバシッと掴まえられる力のことだ。スケッチを描くためには、まず対象を観察しなければいけない。そこから輪郭を抽出し、さらに形を特徴づけている要素も見出す。あとはそれを線に落とし込むわけだが、その際には重要でない部分はあっさりと省略してしまう。

スケッチという行為では、最終的なアウトプットは絵になっているが、よくよく考えてみれば上のようなプロセスは情報を扱う上で等しく重要である。たとえば、誰かに何かを5分ぐらいで説明するとき、重要度の線引きができていないと、話を聞いている人はさっぱりであろう。

スケッチにおける輪郭線とは話の全体像であり、形を特徴づける要素は話の要点である。実際、それだけあれば話は(ある程度)伝わるものだ。うまく説明しようとしすぎて短い時間で細部まで入り込んでしまうと、逆に混乱を引きおこす。

(糸井重里さんの著作をもじれば)「スケッチ的」な思考法は、わりと役に立つ。そして、こうしたものも基本的には練習で鍛えられるのだろう。

メモを支える技術

もう少しスケッチからの連想を広げてみよう。

私はよく「思いついたことは何でもメモしましょう」とアドバイスする。これは「脳内のスケッチ」と表現できる。そこでは文字を使う場合もあるだろうし、絵を使う場合もあるだろう。でも、基本的には同じだ。

その最重要になってくるのは、観察することである。周りの風景を、ではない。観察の対象は、自分の「感じ」である。

メモが不得意な人は、案外これができていないのかもしれない。周りの情報に意識を奪われて、自分自身の心の動きが観察できていないのだ。これでは脳内のスケッチはままならない。まずは自分がどう感じているのかに目を向けることがスタートとなる。

さらに、そうした心の動きから重要なものを抽出しなければいけない。この場合の「重要なもの」とはスケッチにおける輪郭線のようなもので、全体像を表現するフレーズと言っても良い。別の言い方をすれば、後からそれを見たときに全体を想起できるようなものだ。それがうまく書き付けられれば、詳細を全て記しておく必要はない。

観察と抽出(及び省略)という二つの技能でメモは成り立つのだが、実はそれだけでは足りない。

スケッチにおいてまっすぐ線が引けることが重要なように、自分の心の動きをしっかりと記述できなければ、脳内のスケッチは完成しない。「感じ」というのは、わかりやすい言葉の形をしていないことが多い。だから、それを記すためには、いろいろな組み合わせや加工を用いて、言葉に翻訳しなければいけない。

つまり、しっかりとした語彙があるほど、メモは豊かになっていく、ということだ。

言葉の使い方は、「センス」の問題として片付けられることが多いが(実際にそういう要素もあるわけだが)、いろいろな言葉を知っておくことは、そしてそれらを使えるようになっておくことは、そうしたセンスの土台となるだろう。

さいごに

私の絵描きスキルが低いので、スケッチそのものについてはあまり紹介できなかった。門外漢には門外漢のマナーがあるので、その辺はご容赦いただきたい。

が、それはそれとして第五章で紹介されている「トレペ着想」は興味深いものだった。トレーシングペーパーを使ってアイデアを育てていく方法で、デジタルで言うところでのレイヤーなわけだが、この方法論を文章形成に置き換えたらどんな手法になるだろうか、などと想像してしまった。

アイデアの種というのは、どこにでも転がっているものである。

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