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カーネギーによる読書の「九つのヒント」

カーネギーの『道は開ける』を読んでいたら、頭の方に「九つのヒント」というものがあった。

新訳 道は開ける
新訳 道は開ける D・カーネギー 田内 志文

KADOKAWA / 角川書店 2014-12-25
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なんと「この本の読み方」が解説されている。なんとも親切なことだ、と驚きながら読み込んでいくと、これがまた実にまっとうなのである。さすがカーネギーだ。

九つのヒントの概要を以下に示す。

  1. この本に書かれていることがいかに自分にとって重要なのかを、常に考え続けること。
  2. 新しい章に入ったら、まずはざっと読んで全貌を把握する。しかるのちに、章の頭からじっくりと読んでいく。
  3. ページをめくる手を休め、今読んだことを熟考してみる。いつどんな場合に、そこに書かれた原則を活用できるのかを考えてみる。
  4. 読むときには赤ペンなり赤鉛筆なりを用意し、「これは自分に役立つぞ」と感じた原則を見つけたら傍線を引くこと。特に重要だと感じた原則は目印をつける。
  5. 一度じっくりと時間をかけて読んだなら、毎月数時間ほどかけて、内容を振り返ってみる。
  6. この本に書かれていることを自ら行動の中で試していくこと。常に機会を探し、そこで応用してみる。
  7. 本書の原則を破ったのが親しい人に見つかったら、そのつど罰金を払うこと。
  8. 本書の内容が実践できているか自分でもチェックすること。
  9. 日記をつけること。そして、この本に書かれた原則を応用して成功したならば、それを書き留めておくこと。

以上は概要なので、詳細は本書に直接当たっていただきたい。

それにしても有用なアドバイスである。書店に並んでいる「読書術」本のエッセンスが3冊分ぐらいは詰まっていそうだ。実用書の読み方としてはこれ以上ないだろう。

特に重要なのは、三つ目のヒントだろう。熟考し、原則が活用できる場面を想像する。言い換えれば、「自分事として読む」ということだ。

たとえば、七つ目のヒントは本書では「原則を破ったのが妻に見つかったら」となっている。これを、「自分には妻はいないし関係ない」と読んでしまえば成果ゼロだ。あなたが「妻」という言葉の意味をまったく知らないのならば話は別だが、そうでないのならば、「あなたと近しい場所にいて、よく行動を共にし、あなたに対して発言権を持つ人」と読み替えるのが「自分事として読む」ということである。親でも、上司でも、兄弟でも、師匠でも良いわけだ。

こういうスタンスを持っていると、実用書から汲み取れることは、__というか「本」全般から汲み取れることは__非常に多くなる。

コンビニ店長の本があるとして、それを「自分はコンビニ業界に関係ないから」と読むのか、「これをブログに置き換えたらどうなるだろうか」と読むのとではモノクロとカラーディスプレイぐらい違う。どれだけ滋養溢れる本でも、結局は受け手次第なのだ。

大きな池がある。たくさんの魚がうようよと泳いでる。でも、あなたの手には小さな網しかない。

ボトルネックは読み手、つまり自分である。

別のボトルネック

このボトルネック=「自分」というのは、(多くの場合)人間であるから脳を持っている。でもって、脳は記憶に関しては怪しい部分が多い。だから、何度も読み返すことが必要だ。そして、その読み返しに備えて重要な部分に傍線を引いておく。こうしておけば、読み返しの効率がアップする。

同じように記憶の不安定さから、自分がやったことも記録しておいた方がよい。うまくいったこと、うまくいかなかったことを記して、そこでまた熟考すれば、あたらしい行動への手がかりが見つかる。

もし、自分がぱーふぇくとな存在であり、書いてあることを苦もなく受け取れ、縦横無尽に応用がきき、どれだけ時間が経っても細部まで想起が可能で、しかも自分が何をやったのかを忘れることがない、という自覚があるならば、以上のようなヒントはまるで無意味である。

あるいは無意味に感じるだろう。

さいごに

一番の問題は、この「九つのヒント」そのものに対して、「九つのヒント」を適応しなければならない、ということだ。

つまり、「九つのヒント」をまずざっと眺め、しかるのちに一つ一つを熟読し、その意味を考え、自分でどう実行できるかをイメージし、その後実際に行動する。

最低でもこれぐらいを行わないと、「九つのヒント」を読むことに意味はあまりない。もちろん、それは「実際的な意味」であって、それ以外の意味はいくらでもある。たとえば、時間つぶしとか。

とりえあず、「九つのヒント」を大切だと感じたのならば、それをクリップなりメモなりしておいて、後から何度も見返せるようにしておいた方がよいだろう。単に書き写すだけではなく、熟考を挟み込むのがポイントだ。

もちろんそれは「九つのヒント」だけに留まる話でないことは言うまでもない。

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