以下の記事を読みました。
ぼくの好きな本を教えて欲しい(ライフハック心理学)
ちょうどいい本を推薦してもらうには、相手に知性と見識と教養さえふんだんにあればいいというものではないのです。
なかなか難しい問題です。
ちなみに、私には知性も見識も教養も圧倒的に不足していて、あるのは限られた方向に向けられる過剰な知的好奇心と、ときに他人をいらだたせる天の邪鬼マインドだけなので、教養豊かな方には非常に申し訳ないと感じます。でも、読書は個人的なものであり、個人がそれぞれに個性を持ちうるならば、オススメする本にはやっぱり相性が出てきます。
高尚な本が、必ずしも面白いとは限りませんし、売れている本が面白いとも限りません。Amazonで星5つを集めまくる本が(それがマーケティングによる作りごとでなくても)、自分にとっては星1つということもありえます。
「この本を買っている人は、こんな本を……」も関連書籍の存在を提示はしてくれますが、面白さの保証については皆無です。
面白いという(自分の)心の動きについては、それとよく似た別の心が感じる面白いを一種のシミュレートとして扱わないと、予測できないのかもしれません。
また、自分自身の過去から未来の自分の行動を、みたいな話もどこまで当てになるかは不明です。
最近よくあるのは、何かの本を検索すると、Webページの広告バナーにひたすらその本が掲載されるパターンです。知ってる、僕もうその本については知ってるよ、と叫びたくなります(※)。
※キュレーションアプリでも似たような問題が。
たとえば、『数学ガール』を検索したら『いかにして問題をとくか』の広告が表示されるとかだったら、「あぁ、こいつわかってるな」となるのですが(私はそこに知性の存在を感じるかもしれません)、現状の「過去の行動を解析してプロモーションうんぬん」は直接的すぎて使いものにはなりません。
佐々木さんが紹介されている「読みたい本を探すライフハック」については、『ハイブリッド読書術』でも紹介していて、誰か特定の人のウェブの本棚や、書評記事のリストや、Amazonのレビューなどをチェックしていき、それが自分の評価と近しいなら、その後信頼筋として認知する、というやり方が__最初の手間はかかるものの__一番使いやすい情報源になり得ます。
※もちろん、定期的に再評価は必要でしょう。
あと、逆キュレーションについて書いた記事でも触れたんですが、「この人が紹介しているなら、まあ読まなくてよいだろう」というフィルターも充分機能します。たいくつな本を除外できるだけでも、わりと「アタリ本探し」の精度(あるいは時間効率)はアップするものです。
個人的には、ランキングみたいなものが一番(融通が利かないという点で)つまらないとは感じます。別にランキングに上がっている本がつまらない、と言っているわけではありません。ただ、そこには個人が持つ個人性みたいなものが希薄化されてしまうだろう、という予測はあります。どうしたって平均的にならざるを得ないのがランキングです。それは個性を尖らせる方向とは逆向きのベクトルを持っているでしょう。
だから単純な形の集合知は、本選びには役立ちません。いや、役立たないは言いすぎました。「アタリ本を選ぶ精度を上げる役には立たない」ぐらいが妥当でしょうか。
では、どんなサービスなら良いのかと考えてみると、たとえば、一番最初に「あなたが好きな本を100冊(あるいはそれ以上)上げてください」というアンケートがあり__それはウェブ上で公開しても良いし、しなくても良い)、そのアンケート結果が近しい人をグルーピングした上で発揮される集合知ならば、「アタリ本探し」の精度は高まるかもしれません。あるいは、逆に知っている本ばかりになる可能性もあります。そのあたりのコントロールは難しいところです。
ただし、単純な「みんなの意見」よりは、こういう形の方が面白い選書リスト(あるいは選書ストリーム)ができるのではないか、という気もします。
この辺は、書店というか「本」と「人」をつなげるサービス(あるいはプラットフォーム)全般が抱える課題なのかもしれませんし、それを新しい解法でアプローチできるならば、ビジネスチャンスになるのかもしれないなという妄想も膨らみます。
▼参考情報:
逆キュレ(R-style)
ソーシャル時代のハイブリッド読書術 |
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倉下 忠憲
シーアンドアール研究所 2013-03-26 |