7-本の紹介

【レビュー】ラクガキノート術(タムラカイ)

歌が下手な人は、声帯や腹筋に問題があるというよりも、実は耳が悪い場合が多い、という話を聞いたことがあります。

もちろん、思った通りの音を出すためには声帯のコントロールが必要でしょう。しかし、自分の出した声がきちんと聞こえていないと、本来の歌の音の高さとどれだけズレているのかがわかりません。それがわからなければ修正のしようがないわけです。

たぶん、絵描きにも似たことがあるのだと以下の本を読みながら感じました。

ラクガキノート術
ラクガキノート術 タムラカイ

エイ出版社 2015-03-25
売り上げランキング : 1944

Amazonで詳しく見る by G-Tools

※献本ありがとうございます。

概要

章立ては以下。

第1章 ラクガキが人生を変える
第2章 ラクガキの基本
第3章 表現力を高めるテクニック
第4章 ノートに使えるテクニック
第5章 ラクガキノート術実践レポート
第6章 色を楽しむ

本書は大きく二つに分割できます。

一つが「ラクガキの持つ力」。こちらは第1章が担当しています。

第1章のタイトルは「ラクガキが人生を変える」と大きい話となっていますが、読んでみるとなるほどと納得されるでしょう。ラクガキ(落書きではなく楽描き)を行うことは、観察→想像→表現→観察→……のサイクルを回していくことに相当します。そしてこれは、フィードバックサイクルでもあるわけです。

ラクガキを続けていくうちに、観察力・想像力・表現力が向上していく。世界を見る目が変わり、そこから浮かび上がるイメージが変わり、そのイメージを伝える力が変わる……。人が生きるということは、ほとんどがそういった要素で構成されていることを考えれば、これはもう人生が変わると表現しても差し支えないでしょう。

おそらく長期間ブログを運営されている方ならば、同じような感覚をお持ちかもしれません。ブログをやり始めると、日常のアクシデントがすべてネタに見える、といった言説がありますが「世界を見る目が変わる」というのは、つまりそういうことです。観察力が変わるというのは、感受性が変わるというのとニアリーイコールなのです。音楽において耳を鍛える、というのもたぶん同じことなのでしょう。

では、どうやってラクガキをしていったらいいのか、というのが本書のもう一つのテーマであり、これは第2章以降が担当しています。

私は字書きであって絵描きではないので、本書のテクニックの有用性を判断することはできません。そこで一読者としての率直な感想だけを述べさせてもらえば、なんとか「やってみよう」と思うことができた、となります。

本書で掲示されている練習題材やテクニックは難しいものがありません。たとえば、「直線を何本も描く」といった練習があります。これは一見バカバカしいのですが、「まずコーヒーカップをスケッチしてみましょう」と言われるよりもはるかに気が楽です。「スケッチしてみましょう」と言われて気楽に取りかかれるなら、たぶん私の画力はもっと前に向上しています。

そもそもどのような分野においても、基本的な技術は基本的であるがゆえに重要です。難解な構文や複雑な熟語を暗記していても、自分の思っていることを表現できなければ、まともな文章を紡ぐことはできません。自分の感情を適切に表す単語を見つけるのが難しいように、まっすぐに線を引くことも技術の一つなのでしょう。

「直線を何本も引く」という一見バカバカしい練習は、であるがゆえに取りかかりやすく、基本にもつながっています。その代わり、本書を読めば次の日から素晴らしいイラストが描けるようになる、ということもありません。なにせ基本です。でもはやり、そこから始めなければいけないのでしょう。

さいごに

本書を読んでいて非常に気が楽だったのが、「圧倒されるような美しいイラスト」が前面に押し出されていなかったことです。たしかに、そういう美しいイラストには憧れも感じますが、怖じ気づきも生みがちです。やっぱり自分とは違う世界なんだな、ということで幕が下りてしまうことが往々にしてあるわけです。特に、絵描きに自信がない人ほどそうでしょう。

本書にはたくさんのイラストが登場しますが、大半が「こういうのなら何とか描けるかも」と思えるものばかりです。著者がものすごく絵の上手い人で「私のように描けば、絵が上手くなれます」といったテイストで押されると、絵が下手な人ほど心が引いてしまうわけですが、本書は徹底的に初心者向けのテイストで統一されていました。

というわけで、私も自分のサインにラクガキを添えられるように練習してみたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です