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『信頼の構造』とメディアの変化

Posted on 2015 年 4 月 18 日 by Rashita

山岸俊男さんの『信頼の構造』は以下のように始まる。

本書は、1つの中心的なメッセージをめぐって書かれている。集団主義社会は安心を生み出すが信頼を破壊する、というメッセージである。

信頼の構造
山岸 俊男
4130111086

集団主義社会は、言ってみれば小さな村である。そこでは、皆が顔見知りであり、誰もそこで悪いことをしない。少なくとも、そういう前提が共有されている。

だから、そこで暮らす人々はみな安心して生活を送る。その代わりに、人を信頼する力を失う。「よそ者は、この村に立ち入るな」という言葉は、まさにそれを象徴している。

代わりに小さなバザールを思い浮かべてみよう。いろいろな商人が集まる市場だ。そこにはたくさんの商品と、たくさんの人も集まっている。精一杯の善意を発揮する人もいれば、ギリギリのラインの悪道を突き進む人もいる。買い物をする人は、シビアな目を持たなければいけない。かといって、全てを拒絶すれば__「よそ者は、この村に立ち入るな」__、買い物はまったくできなくなってしまう。

安心はないが、その代わり__幾度かの失敗を経て__信頼する力が磨かれていく。

本書で指摘されている、「高信頼者ほど情報に敏感」は非常に重要である。人のことをよく信頼する人は、ぼけーっとしたお人好しではなく、むしろ人が発する情報に敏感だと言うのだ。簡単に言えば、人をよく見ている。そして、相手が裏切ったら強く反撃する。ゲーム理論でお馴染みの「しっぺ返し戦略」というやつだ。

もう一度、小さな村を思い浮かべてみよう。

小さな村は、「よそ者は、この村に立ち入るな」で、よそ者を排除し、村人は安心して暮らしている。もし、何かしらの変装をしてその村の「中の人」として認知されたらどうなるだろうか。もちろん、やりたい放題である。なにせ、村人は安心しきっているわけだから。気がついたときには、もう取り返しのつかないことになっていて、「しっぺ返し戦略」なぞ取りようもない。

さて、考えてみよう。

ある社会が、村型からバザール型へ移行するとする。それ自体はただの変化にすぎないが、渦中にいる人間は大変である。なにせ、あたらしい社会で必要になる「信頼する力」がまったく鍛えられていないばかりか、そもそもそういうコンセプトすら持たない。

安心で担保されていた生活から、信頼で構築していく生活への移行は、口で言うほど簡単なものではない。「痛み」と呼ばれるものが多数発生するだろう。しかし、なんとか適応するしかない、というのが悲しい結論だ。

メディアの変化

視点を変えてみる。

マスメディア型情報社会からソーシャルメディア型情報社会への移行について。

一極集中型のマスメディア型情報社会は、ある意味で村と似ている。一つの(そして大きな)「信頼できる」ニュースソースがあり、それが全国に均一に配信される。人々は日々それを安心して受け取っていればいい。しかし、その「信頼できる」は言葉通りの意味ではない。単に「相手が裏切らないだろう」という予測、もっと言えばそうあって欲しいという一方的な願望に基づいている。

安心して情報を受け取っている代わりに、信頼する力は磨かれない。仮に良くないものが変装して紛れ込んでいても、検証されないまま流通してしまう。

ソーシャルメディア型情報社会では、そうはいかない。そもそも「信頼できる」ニュースソースなんてものはない。バザールに並ぶ商人たちのように、そこにはどんな人もいる、ということが前提である。だから、そこで情報を得る人は__幾度かの失敗を経て__目利き力を身につけていかなければならない。その上で、信頼するソースを見出し、もし欺瞞が発生すれば、以降は見限る、あるいはもう少し踏み込んだ対策をとる、といった手段をうつことになる。

実に面倒だ。しかし、それはもう避けようもない話である。

そして、ソーシャルメディア型情報社会であるにも関わらず、マスメディア型情報社会の心持ちでいると手痛い目にあうことになる。偽物の商品を掴まされ続けるか、あるいは何も買い物ができない。そういう状況に陥ってしまう。

これは送り手の方も同じで、村型のやり方はバザールでは通用しないことが多い。もう少し言うと、バザール型の心持ちの受け手には村型のやり方は通じない、ということになる。

さいごに

メディアに視点を取れば、楽して儲かるならその手法を採るだろう。水の流れのように自然な話だ。しかし、欺瞞を含めてしまうと「あとあと、しっぺ返しが待っている」ということが学習されるなら、インセンティブは変化する。あるいは、変化することが期待できる。

ようするに、信頼されることに価値があり、信頼を毀損することにデメリットがある、という構造があるのならば(そして、それが認知されているのならば)、全体としては自然にそちらの方に流れていく。ただし、その構造設計は簡単ではないかもしれない。

ただし、社会の方はもう変化が進んでいる。受け手であれ、送り手であれ、(そして、それが面倒でコストを伴うものであれ)その変化に対応していかなければならないだろう。

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