【レビュー】運を支配する(桜井章一 藤田晋)

本書を読んではじめて知ったのだが、サイバーエージェントの社長さんである藤田氏は、2014年の麻雀最強戦で優勝しているらしい。つまり、現役の経営者でありながら最強位でもある。なかなかすごい。

麻雀最強戦は、プロ雀士だけでなく一般枠や著名人枠があり、決勝卓の顔ぶれが毎回違っていて楽しめるトーナメントである。でもって、過去の麻雀最強戦では雀鬼会の方が何度か優勝しているし、藤田さんも桜井さんの元に通っていた経験があると言う。

その二人が勝負事について、運について、ビジネス(仕事)について語っているのが本書である。

運を支配する (幻冬舎新書)
運を支配する (幻冬舎新書) 桜井 章一 藤田 晋

幻冬舎 2015-03-20
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著者は二人だが、対談形式ではなく往復書簡に近い構成だ。一つのテーマについて桜井氏が語り、同じテーマで藤田氏がビジネスの視点で語る。それがワンセットなって、いくつかの運に関するテーマが展開されていく。

目次は以下の通り。

1章 ツキを整える
2章 運をつかむ人の習慣
3章 悪い流れを断つ
4章 ツキを持続させる
5章 運をまねく作法

「ビジネスで大切なことは、すべて麻雀から学んだ」なんて書くとチープなビジネス書の雰囲気が漂うが、私の実感はそれに近しいものがある。

まえがきの中で、藤田氏は麻雀とビジネスの似た要素を4つ挙げている。

  • 「不平等」なところから始まる
  • 「相対的な競争」である
  • 「状況判断力」が問われる
  • 大半の時間は「忍耐力」を要する

まったくもってその通りだ。麻雀は不完全情報ゲームであり、運の要素が大きく絡む。さらに、一人があがれば、別の人はあがれなくなり、囲碁や将棋と違って対戦相手は3人もいる。だから、大抵の局面で思い通りにはいかない。

配牌をもらって、「よしこれは三色であがろう」と決意して、コツコツ努力すれば皆が三色であがれるような世界ではない。配られた段階で三色ができている人もいれば、はるか彼方にしか見えない人もいる。順調に必要な牌をツモってこれることもあれば、何一つ有効配を引かないまま、周りの人だけが手を進めていることもある。五面待ちの清一が、ペンチャン待ちのリーのみに引き負けることも珍しくない。

ときに、不条理だと叫びたくなる。

でも、麻雀とはそういうゲームだし、ビジネスも同様だ。言ってみれば、人生だって似たようなものかもしれない。

だからといって、「運任せ」にして、何もしなくてもよいのか、というとそうでもない。細かい積み重ねは重要である。ツモによっては何も考えなくても三色ができることはある。それでも、毎回手牌に三色の種を探している人の方が三色は上がりやすくなるし、平均打点も間違いなく上がる。

囲碁や将棋の場合、細かいやりとりが勝負に直結する。囲碁の一目、将棋の一手は、とても大きな価値を持つ。麻雀の場合は、それが運のせいで見えにくい。が、やっぱり細かい部分は大きいのだ。むしろ、見えにくい分だけ重要性は高まるのかもしれない。

ただし「細かいことをやっていれば、すぐに勝てるようになる」とはいかないのが難しいところで、フィードバックが機能しにくい。だから、「運任せ」で適当にやっている人が豪快に上がるのをみて、それに引き寄せられてしまう。でも、結局それは短期的な結果でしかない。


本書のタイトルは「運を支配する」となっているが、実際に運を支配する方法が書かれているわけではない。別にスピリチュアルな話でもない。いくつかあげると、「勝負は複雑にすると負ける」とか「負けの99%は自滅である」とか「パターンができたら自ら壊せ」とか「違和感のあるものは外す」といった、心構え・姿勢のお話である。

準備ができていれば、幸運が巡ってきたときにそこに乗ることができる。またブレーキを避けていれば、勢いは長く続く。そういう話である。怪しい石や壺によって、「それを持つだけで」新しい人生が始まることはないし、高額のセミナーに参加して「本当のあなたの力」が目覚めることもない。

そうしたものは単なるショートカットでしかない。中には「コツコツ努力しましょう」というショートカットを売りつける人もいるが、見かけを複雑にしただけで話は同じである。結果が出ることを前提とした「コツコツした努力」が報われるのは、整えられた環境の中だけである(学校の暗記試験、RPGのレベル上げ)。現実のビジネスはそんなにうまくは行かない。

「結果が出ること」が前提になっているか、なっていないのかの違いは、状況に適応する力の差として現れる。「これをやっていれば、必ずうまくいきます」と思い込んでいると、新しい状況に対応できない。結局、言われたことをそのまま実行しているだけで、アレンジするような基礎がその中に根付いていないからだ。

では、どうすればいいのか。

「運任せ」と「自分が世界を支配できている感覚」の、真ん中を歩いて行くしかない。前者は怠惰で、後者は傲慢である。

ある部分では、自分の力ではどうしようもないものがあることを悟り、その上で自分の力でできることをする。そして、目先の結果ではなく、自分の力そのものを上げていくように心がける。もちろん、どこまで力を上げたところで、ドミネーションできるわけではない。そのバランス感覚を保つことだ。それが、真ん中を歩いて行くことになる。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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