【書評】クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本(鷹野 凌)

著作権は、自然に発生するらしい。

クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本
クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本 鷹野 凌 福井 健策

インプレス 2015-04-24
売り上げランキング : 2576

Amazonで詳しく見る by G-Tools

※献本ありがとうございます。

本書にはこうある。

作品として表現された瞬間、自然に発生する権利が著作権です。

何かの著作を生み出せば、著作権はその瞬間に発生する。つまり、特許などとは違うわけだ。著作権法17条2項(著作者の権利)[参照]にはこうある。

著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。

クリエーターにとってはありがたい権利である。著作物を生み出すたびにイチイチ登録などしていられない。何か著作を生み出せば、その瞬間から「これは私のものです。使いたければ許可を求めてくださいね」と主張でき、それによってお金を稼ぐこともできるようになる。

問題は、普通の人が著作権法17条2項を読んでも意味がとれないことだ。これは著作権法だけに限った話ではないが、とにかく法律の条文は読んでもよくわからない。しかしながら、権利を行使するためにはその条文を読み取れないといけない。

本書の役割はその橋渡しにあるわけだが、著作権法をすべて読み解いていこうといった大げさな話にはなっていない。現実的にクリエーターが直面するであろう問題に絞って話が進められている。おかげで150ページほどのコンパクトなボリュームにまとまっており、厚みで威嚇されるような感覚はまったくない。

また文体も意識して軽めに整えられている。タイトルからも想像できるが(※)、本書は比較的若い人・ネット親和性がある人が対象読者である。そうした人を意識したネタも本文中にはちりばめられている。

堅い話になりがちな(そして漢字密度が高まりがちな)法律の話を、ライトなテイストで進めていく。しかし、監修が入っていることからもわかるように、堅い部分の信頼性はきちんと担保されている。
※昨今はやりのライトノベル感が漂っている。

そういう意味でバランスの良い本だ。

目次は以下の通り。

第1章 なぜ著作権という権利があるの?
第2章 著作権で保護される作品を教えて!
第3章 著作権について詳しく教えて!
第4章 無断で利用できる著作物を教えて!
第5章 先生……二次創作がしたいです
第6章 表現の自由って、どれぐらい自由なの?
第7章 作品を発表するときに気をつけること
第8章 作品がパクられた!どうしよう?

私自身も物書きであり、言ってみればクリエーターなわけだが、漠然としか知らない話が多かった。自分の仕事に直接関係する権利__なのにである。「それでよくまあ、物書きなんてやってられますね」と呆れられるかもしれないが、著者の場合であれば間に出版社・編集者が入ってくれるので、なんとなく知ってるぐらいでもやっていけてしまうのだ(※)。
※もちろんきちんとした知識を持っている方が良いことは言うまでもない。

が、セルフパブリッシングを行うなら、そうはいかないだろう。

また、ウェブの世界では誰でもがパブリッシャーになれることを考えれば、著作権は情報化社会の生活に寄り添う権利だとも言える。ブログ記事やツイートだって、開かれた場所に公開していることを__つまり、不特定多数に読まれることを__考えればパブリッシュメントである。

そういう意味で、情報化社会における著作権法は、自動車社会における道路交通法のようなものに位置づけられるかもしれない。

さいごに

ブログ記事の引用要件については、拙著『BlogArts』でも触れたが、本書では二次創作にまつわるお話や、ウェブ時代のクリエーションについても言及されている。個人的には、バイラルメディアやパクツイ周りの話が面白かった。

こうした知識があれば、「何が良くて、何が悪いのか(グレーなのか)」を知ることができる。自身がそういった行為を避けるのは__クリエーターの矜持があれば__当然として、情報の受け取り手としても、信用できるメディアとそうでないメディアを見分ける手がかりになるだろう。

結局の所、メディア空間の健全さは、そういうものの積み重ねでしか担保されない。そのことは送り手も、受け取り手も自覚しておきたいものである。