Sharing is Power!

シェアされる情報の傾向、あるいはささやかな予言

一つ、予言をしておきましょう。

あなたはこの記事をシェアしません。

もちろんこの予言は、本稿の主旨に関係があります。

共有されやすいコンテンツの傾向

ソーシャルウェブにおけるネットワーク構造とその性質を論じた『ウェブはグループで進化する』に次のような記述があります。ウェブで共有されやすいコンテンツの特徴を紹介した文です。

共有されやすいコンテンツは、内容が肯定的なものや有益な情報を含むもの、驚きを与えるものや面白いもの、もしくは目立つ形で取り上げられているものである。しかし、こうした要素よりももっと重要なのが、どれほど感情を刺激する内容であるか、という点なのだ。

感情を刺激する、それも強く刺激するものほど共有されやすい。それはディスコメントや炎上騒ぎを見ていても納得できます。そうした共有の引き金になっているのは、理性というよりはむしろ、怒り・恐怖・嫌悪といった感情です。そこにどれだけ理屈の彩りがコーディングされていようとも、根源にあるのは感情の動きなのです。

それほど心が躍らないようなコンテンツ、例えば快適に感じたり、リラックスしたりするようなものはシェアされない。

「うんうん、そうそう」と軽く同意したり、あるいは読んでいてほんわかした気持ちになった(しかし、それ以上は特に何もない)ものは、シェアされにくいわけです。

著者のポール・アダムスはこう続けます。

公衆衛生に関する情報を広める場合には、悲しみよりも不安を感じるような内容のほうが効果的だろう。

理屈の上ではそうなのでしょう。しかし、それで本当に良いのだろうか、という不安も感じます(やはり、著者は正しいわけです)。

先に待つ世界

データ分析がコンテンツの生成に影響を及ぼしているのならば、ウェブで影響力を持ちたい人が作成するコンテンツは、必然的に感情を強く刺激するものに流れていくでしょう。

すると、二つの方向性が考えられます。

  • 感情を強く刺激しないものは生成されない。
  • 感情を強く刺激するものばかりで溢れかえってしまう。

どちらも厄介そうです。

感情を強く刺激しないものは生成されない

感情を強く刺激しなくても、良いコンテンツというのはたくさんあります。

それは緩やかだけれども良いコンテンツ、という方向性だけでなく、「そのときはまったく言葉にはできないし、自分の中でも着地点が見付けられないけれども、ともかく気にかかる」という方向性もあるのです。

私がウェブでコンテンツを読んでいても__ありがたいことに__そういうあやふやなものに遭遇することがたまにあります。そして、たしかにそれを共有しないことの方が多いのです。Evernoteにクリップしておき、時間が経ったあとで読み返す。そういう付き合い方をするのです。

もし、瞬間的に感情を強く刺激するコンテンツだけが「是」となり、それ以外のものを作るのは「労力に見合わない」なんてことになれば、非常に偏ったコンテンツ生態系が出来上がってしまいます。飲食店がファーストフードしかない街、中身が缶ビールだけの冷蔵庫、みたいなものです。

感情を強く刺激するものばかりで溢れかえってしまう。

そんな生態系が出来上がったウェブを眺めれば、どうなるでしょうか。

何を見ても感情が強く刺激される、ということになります。間違いなく疲れることでしょう。いっそ見なくなるか、あるいは耐性がついて感情が動きにくくなるかもしれません。

前者は、一つの付き合い方としてありかもしれませんが、後者は心のスイッチをオフにしているようなものです。ウェブ以外の場所でも影響が出てくるかもしれません。あまり、喜ばしくない状態です。

さいごに

もちろん、人間というのは多様であり、それはつまりクリエーターというのも多様だということです。

感情を強く刺激するものが広く共有される、ということを知っていても、その手法を使わない人は、それなりの割合で(たぶん)存在することでしょう。仮にそれが1%であっても、ウェブの全体で見れば十分なコンテンツ数になりえます。

あとは、フォローする側が選択し、バランスの良いインプット・ポートフォリオを築いていけばよい話です。

たとえば、ここの部分を、

「このままいけばウェブの風景は感情を強く刺激するものばかりになり、ゴミ屑と変わりなくなる」

みたいに書けば、誰かの感情を刺激できるかもしれません。

しかし、私は1%に属するので、そういう表現は避けておこうと思います。

▼参考文献:

ウェブはグループで進化する
ウェブはグループで進化する ポール・アダムス 小林 啓倫

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