7-本の紹介

【書評】Honda、もうひとつのテクノロジー 03 ~インターナビ×災害情報×グッドデザイン大賞~(いしたにまさき)

続きものの三冊目。そして、最終刊でもある一冊。

Honda、もうひとつのテクノロジー 03 ~インターナビ×災害情報×グッドデザイン大賞~ 通行実績情報マップがライフラインになった日<「HONDA、もうひとつのテクノロジー」シリーズ> (カドカワ・ミニッツブック)
Honda、もうひとつのテクノロジー 03 ~インターナビ×災害情報×グッドデザイン大賞~ いしたに まさき

ブックウォーカー 2015-05-29
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ちなみに、一冊目の書評記事は以下。

【書評】HONDA、もうひとつのテクノロジー ~インターナビ×ビッグデータ×IoT×震災~ 01(いしたにまさき)(R-style)

三冊の本は、それぞれが独立しているというよりも分冊のイメージなので、各巻の目次を通して眺めてみよう。

01

  • サーバーは動いていた。しかし……
  • 通行実績マップをやらなきゃいけない
  • 世界初のカーナビはホンダから
  • カーナビの始まりは「メッカコンパス」
  • 1983年の東京モーターショー
  • 世に出なかったナビゲーションシステムとデジタルマップ
  • マップマッチングという罠
  • 10年間の空白 
  • 車の自動運転を目指して
  • 最速で準備された震災ビッグデータ

02

  • ■カーナビと災害 
  • ■カーナビとGPS
  • ■アメリカ市場と世界地図 
  • ■インターナビ構想 
  • ■インターナビの立ち上げと営業部への異動 
  • ■世界初の渋滞予測ナビとVICS
  • ■デ―タがインターナビの生命線
  • ■負けるもんかのスピリット

03

  • ■通行実績情報マップがグッドデザイン大賞を受賞
  • ■通行実績情報マップの原点
  • ■防災情報、通信と続くインターナビのアップデート
  • ■ビッグデータを活用した安全への取り組み
  • ■東日本大震災と通行実績情報マップ
  • ■通行実績情報マップの次へ

※01の目次項に■が付いていないのは原文ママ。

こうしてみると、「インターナビ」(双方向通信型カーナビ)の歴史が順を追って綴られていることがわかる。インターナビを語るためには、カーナビを語る必要があるわけで、カーナビ→インターナビの誕生→インターナビの実績と活躍→その未来、とごく真っ当なルートが辿られている。

しかし、これはあくまで大筋のルートであり、実際はもう少し入り組んでいる。

本書はインターナビの話ではあるのだが、それを生み出したホンダという企業の話でもあり、それと共にデータの話でもある。ここが本書の難しさでもあり、面白さでもある。

本書をインターナビの蘊蓄本として読んでもよいのだが(そしてそれでも面白いのだが)、どうにもそれだけではもったいない気がする。

ホンダという企業

私はホンダという企業に勤めたこともないし、ホンダの車に乗ったこともない。それでも、二冊の本__『俺の考え』と『経営に終わりはない』__を読んで、真摯にこう思った。「あぁ、この会社はすごいな」と。片方に技術があり、もう片方にマネジメントがある。そして、その異なった両輪が、同じ方向に向かって進んでいる。

技術を技術としてだけみるのではなく、それを人間が使うものとして社会のフレームに配置していく。また、経営を数字だけで判断するのではなく、そこで働く人や社会での自社の役割を意識する。__額縁に飾るには最適な言葉だが、実際の企業の行動に落とし込むのは簡単ではない。しかし、ホンダという企業にはそれがあった。

本書を読むと、それが現在のホンダにまで息づいているがよくわかる。片方で、ものすごい理念を語りながら、もう片方では冷静にそろばんを弾いている。

理念を持たず、目先の市場の動きに経営判断を最適化していたら、インターナビどころかカーナビすらこの世には生まれなかったかもしれない。技術が理念に追いつくためには、唖然とするような時間が必要になるときがある。タマゴが孵化するのをじっくりと待たなければいけない。しかし、理念しか見ていないと、数字は悪化し、経営は行き詰まり、結局は倒産する。

両方がなあなあであってはいけないし、かといって険悪であってもいけない。バランスというか、真剣な綱引きが必要である。

本書内で今井氏は「孤立奮闘物語」と冗談めかして述べられているが、孤立奮闘であってもプロジェクトが生き続けていた、ということそのものが驚嘆すべきことであろう。そして、その成果が全社的に広がっていく(インターナビとリンクアップフリーが標準搭載される)様子は、痛快ですらあるし、この企業のマネジメントが機能している証左でもある。

データの力

本書のもう一つの側面は、データについてである。

といっても、データの数理的な小難しい話ではなく、データと私たちの関係性というある意味でプリミティブな__だからこそ大切な__話だ。この辺りの視点の設定は、著者ならではという感じを受ける。

たとえば、災害が発生したときに、通行実績のデータを見て車がUターンしている部分があれば、そこは通行不可能だとわかる。あるいは急ブレーキがよく踏まれてるところは、視界が悪いなど危険なポイントである可能性が高い。今、こうして書いてみると__つまり結論を知ったあとで語ると__「何を当たり前な」という気がするが、実際データからこうしたことがわかるのはすごいものである。

データの先には人がいて、行動がある。人とデータはつながっている。あるいは、人とつながっているデータだからこそ、価値がある。いろいろな言い方ができると思うが、視点は同じだ。

ビッグデータやIoTといったものも、その視点から語られなければほとんど意味をなさない。

もちろん、人とつながっているデータであるからこそ、それをつなぎ合わせたときに浮かび上がってくるものの怖さはある。それは藤井大洋氏が『ビッグデータ・コネクト』でも描いている。だからといって、今さら無視できるものではない。むしろ、無視したところで状況だけがどんどん進んでいくだろう。

技術が持つ力を知り、それを少しでもプラス方向に働かせていくこと。そうした理念が必要なのだろう。

さいごに

最後に、本書の体裁について少し脱線しておく。

三冊の分冊で、それぞれ読了予想時間が28分、30分、45分のトータルで103分。つまり2時間弱。価格は、315円、350円、350円で、1015円。よくある新書より少し高く、ビジネス書よりは少し安いといったところだろう。一冊で103分、1015円だとちょっと引いてしまう気持ちが出てくるが、こうした分冊だと気軽に読みやすい。

こうした分冊は、電子書籍時代にマッチした一つのフォーマットタイプだと思う。著者としては、一冊目の販売データを背景にしながら続きを書かなければいけない辛さみたいなものがあるのかもしれないが、それでも面白い試みである。

▼参考文献:

俺の考え (新潮文庫)
俺の考え (新潮文庫) 本田 宗一郎

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