5-創作文

イノベーター / Kejserens nye Pillar

「なにこのでっかい木は。えっ、柱っていうの? 知らない、知らない。だいたい邪魔でしょ。家の中にこんなでっかいものがあったら。えっ、屋根を支えている? そんなの古い考え方だよ。アンシャンなレジームだよ、ほんとに。そういう考え方をしているからイノベーションが起きないんだよ。わかる? もう、いいよ。議論しても無駄。俺は俺のやりたいことをやるからね。3日後に業者を入れて、この柱っていうの切るから。容赦はしないよ。それが俺のやり方だから。見といてよ」
慌てて引っ張り出される設計図。寝ぼけ眼のまま呼び出される建築家。徹夜で行われる強度計算と再設計。ひっそりと招集される業者。そして工事、工事、工事。
三日後。以前より一回り以上壁が分厚くなった部屋に勝手知ったる業者が入り、柱を切り落とす。
「ほら、見てよ、この素晴らしい空間。広々とした見通し。これでこそ新時代だよ。ポストモダンな風景だよ。それにさ、言ったでしょ、屋根なんて落ちてこないって。ほら、この通り。全然ヘッチャラさ。イノベーションっていうのはね、固定観念に縛られてちゃダメなんだ。わかる? あぁ、それにしてもこれはすばらしい。他の人にも、さっさと柱なんて切ってしまいなさいってすすめないとな。うん」

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