「タスク」の研究

BizArts 3rd 「システム思考でタスク管理を捉える」

※「BizArts 3rd」は、メルマガWRMで連載している企画ですが、諸処の事情でR-styleに出張しています。

GTDは、タスク管理システムです。では、その「システム」とは何でしょうか。どんな要件を満たしていれば「システム」と呼べ、そこにどのような特徴が宿るのでしょうか。

ドネラ・H・メドウズの『世界はシステムで動く』を参考にしながら考えてみたいと思います。

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方
世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方 ドネラ・H・メドウズ Donella H. Meadows 小田理一郎

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システムとは?

ドネラは、システムを次のように定義づけています。

システムとは、何かを達成するように一貫性を持って組織されている、相互につながっている一連の構成要素です。

そして、この定義からシステムを形作る3つのポイントを挙げます。

  • 「要素」
  • 「相互のつながり」
  • 「機能」または「目的」

「要素」は、ようするにシステムの部品です。「相互のつながり」は、それぞれの「要素」がいかにつながっているのか、という点で、最後の「機能」または「目的」(以下「機能」)は、そのシステムが目指している状態や結果となります。

システムは、「ストック」「インフロー」「アウトフロー」を持ち、それらがフィードバックによってつながり、システムの挙動を生み出します。

システムの特徴

そうしたシステムには3つの特徴があります。

  • レジリエンス
  • 自己組織化
  • ヒエラルキー

レジリエンスは、「押されたり引っ張られたりした後に、形や位置などを元に戻る跳ね返る力」を意味し、日本語風に言えば「柳力」(やなぎりょく)となります。ある力が加わったときに、もろく崩れさるのでもなく、かといってまったく変わらないのでもなく、逆向きの力を働かせて元の状態へと戻ろうとする力がレジリエンスであり、システムにはそれがあります。

それを担保しているのは、フィードバック・ループなのですが、ここでは割愛して先に進みましょう。


自己組織化は、これだけで何冊もの本が書けるテーマですが、ドネラはシンプルに「システムが自らの構造をより複雑にしていく能力」と定義しています。受精卵が人間になるのも、その一例と言えるでしょう。

非常に重要な点は、自己組織化は「不均質性」と「予測不可能性」を生み出すことです。すべての従業員を個室に閉じ込めて割り当てた作業だけをやらせるのと、相互の交流と勉強を促進し、新しいプロジェクトに対する予算を与えている状況を比較してみてください。

後者には「不均質性」と「予測不可能性」が確実にあります。であるが故に、まったく新しいものが生まれてくる可能性もあります。ただし、そこには混乱あるいは混沌もあります。ドネラも「自己組織化には、自由と実験、ある程度の無秩序さが必要」だと書いています。秩序とイノベーションは、(ある程度は)トレードオフなのです。


最後の「ヒエラルキー」はあまり響きの良くない言葉かもしれません。しかし、システムには必要なものです。簡単に言えば、サブシステムが集まってより少し大きなサブシステムとなり、そのサブシステムがまた集まって、また少し大きなサブシステムとなり、という形の組織化のことです。

こうした組織ではそれぞれのサブシステムは、自身の中の要素と、自分がつながっている要素のことだけを考えておけば済みます。それ以外の要素や、全体のシステムについて考慮しなくても良いのです。

ただし、そのことが部分最適化を引きおこし、サブシステムにとっての利益が全体のシステムにとっての不利益になる、という状況も引きおこします。その点を考慮すると、サブシステムとサブシステムの連結をいかにデザインするかが鍵となりそうです。

以上が「システム」についての概要です。

タスク管理システムの要素

では、タスク管理システムについて考えてみましょう。

タスク管理システムは、タスクを扱うものです。では、一番単純なタスク処理の構造はどのようなものでしょうか。

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発生した「やるべきこと」を逐次「実行する」。これが一番単純な構造でしょう。発生した「やるべきこと」がインフローで、「実行する」がアウトフローだとすると、ここには「ストック」がありません。

ドネラはストックについて次のように書いています。

ストックがあることで、インフローとアウトフローはそれぞれが独立し、一時的に両者間のバランスを崩すことが可能となる、ということです。

インフローとアウトフローが直結している状態では、「やるべきこと」>「実行する」となった瞬間に破綻します。逆に、「やるべきこと」<「実行する」と、時間が余ってしまいます。よいやり方とは思えません。そこで、ストックを導入します。

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おそらくこれが「タスク管理」の一番シンプルな形でしょう。ちなみに、インフローとアウトフローが直結しているものは「管理」とは言えません。あくまでそれは処理しているだけです。

さて、多くの場合、上記のストックを担当しているのは「脳」です。脳が記憶を保持できるからこそ、ストックが生まれ、それによってインフローとアウトフローの調整が可能になるのです。しかし脳はデータの保管場所としてはあまり信頼のおけるものではありません。そこで、「リスト」を作り、そこに保存しようという働きかけが登場します。

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GTDにおいる「気になることをすべて書き出し、それを適切なリストに割り振っていきましょう」というアプローチも、ストックを脳からリストに移し替える作業と言えるでしょう。

そのGTD的な観点を採用し、システムをより詳しく眺めてみると、次のような図になります。

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ここでストックを担当するのは、複数のリストでありツールです。タスクリストやカレンダーなど、ともかくやるべきことを保存しておくツールすべてが含まれます。また、入り口部分にはinboxがあり、出口部分には実行を補佐する何かしらのリストがあります

加えて、一度ストックしたものも、処理せずに廃棄されるものもあるでしょう。他の人に委任するものあるかもしれません。すると、アウトフローは複数あることが想定されます。

週次レビューの意義

これでタスク管理システムの「要素」は確認できました。

問題はこのシステムにおける「相互のつながり」です。言い換えれば、どのようなフィードバックが働いているかです。

フィードバックが働いていないのならば、それぞれの要素は独立し、レジリエンスは減少します。大きな力が加わったときに、もろく崩れ去るか、あるいは「むっちゃ頑張って実行したけど燃え尽きた」みたいなことになるわけです。で、次の日からもうタスク管理なんてやらない、ということになるわけです。

GTDが「週次レビュー」を推奨しているのは、このフィードバックを発生させるためです。一週間前に立てた計画が、何かのトラブルでボロボロに崩れてしまうことはよくあります。それを無視し、リストを放置しておけば、そのリストは役立たずになります。状況を「立て直す」作業が必要なのです。

「週次レビュー」は、振り返りの作業でもあり、明日からの展望を描く作業でもあります。振り返りは、実行したことの確認ですから、アウトフローの観測となります。明日からの展望は、インフローのチェックです。これらを確認して、必要な構造を作り上げる__つまり、一時的に「ネクストアクション」リストを放棄して、単一の作業に没頭するというような選択もあり、ということです__。それがタスク管理システムです。

さいごに

重要なのは、フィードバックです。

必ずしも「週次レビュー」をやらなければいけない、ということではありません。フィードバックが発生するのであれば、他のアプローチでもまったく構わないでしょう。

なんであれ、フィードバックがなければシステムとしての持続性は著しく減少してしまいます。その点は、常に意識しておいた方がよいでしょう。

※今回は図解が多く入ったため、メルマガの連載をブログ記事にしてみました。今回の記事では「機能」については割愛しましたが、そちらは本連載の方で。

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