6-エッセイ

勝手な親近感と喪失感

勝手な親近感を覚えることがあります。

たとえば「やなぎなぎ」さんは、ネット発の歌い手で、今ではメジャーで活躍されているのですが、その「ネット発」の部分に自分と近しいものを感じ取って、ひそかに頑張れ〜と応援していたりします。

もちろんジャンルや規模などは全然違うわけですが、なにせ「勝手な」親近感なので、何を身近と感じるのかは完全に私任せです。でも、そういうものがあると、ちょっとした心の支えにはなります。似たような風景の変転を経験している人がこの世界に存在する、という感覚はわりと暖かいものです。

任天堂の岩田聡さんも、私が勝手な親近感を覚えている人でした。今、過去形を使っただけで涙がにじんできそうになります。

興味を持ったのは、ほぼ日の次のコンテンツでした。

ほぼ日刊イトイ新聞 – 社長に学べ!

糸井さんが岩田さんにインタビューするという企画。その辺にあるビジネス書のエッセンスが4冊分ぐらいは詰まっています。めちゃくちゃ面白くて、のめり込むように、そして強く頷きながら読みました。

バイトからのたたき上げ。先輩のいない環境。突然のマネジメント……。

規模こそまったく違いますが、私がコンビニのアルバイト(後に店長)で経験してきたことと見事に重なります。私はけっこう「特異」な人生を送ってきたと自負していましたが、本当の意味では特別なものではなかったわけです。それは(自尊心的に)少しの悲しさもありますが、反面安心感みたいなものもあります。

そして、

「コミュニケーションが
 うまくいかないときに、
 絶対に人のせいにしない」

 
というのは、私がマネジメントの現場で実感してきたことでもあります。

「社長に学べ!」の第十回では、HAL研の社長時代に行っていた「全社員と面談する」という方針が紹介されていますが、これって本当に「正しい」んです。ただ、正しいことがわかっていても、なかなか実行できるものではありません。でも、それを実際に6〜7年も続けておられた。それだけでも驚嘆に値しますし、そのマネジメントが優れたものになることは容易に推測できます。

「全社員と面談する」というのは、トップダウン型のアプローチではありません。かといって、ボトムアップ型のアプローチというものでもない。だって面談しているのは社長ですからね。最終的に決定を下すのはその社長なわけです。つまり、両方のアプローチの良さが取り入れられています。

結局のところ、組織を構成しているのはそれぞれの「人」であり、それぞれの「人」は違っていて、個性も長所も弱点も同じではありません。トップダウン型アプローチだと、すべての平社員は将棋の「歩」みたいに見えるんですが、それは実体と大きくかけ離れているわけです。

ほとんど当たり前なようでいて、あまり語られないのは、マネジメントは「人」を対象に含むのですから、「人」についての理解がないと、まったく見当違いなことをやってしまうということです。「人」についての理解がないとは、他の人は自分と同じような人間だと思い込んでしまう、ということです。特に社長という人は「強者」である場合が多いので、「弱者」の視点が大きく欠落している場合があります。

そういう状況だと、無理が続く間は経営が成り立ちますが、ひずみが大きくなりすぎれば破綻がやってきます。それを「環境」のせいにしたりもできるのですが、実際のところは「環境」に適応できるマネジメントができていなかった、という結論に落ち着くものです。

すいません、まったく話が飛んでしまいました。

ともかく、私は岩田さんのマネジメント手法に強く感応し、またその当人に勝手な親近感を覚えていました。もちろん、今でもその気持ちの方向性は変わりませんが、現時点では喪失感が強すぎて、なんとも言い難いものです。

任天堂とかゲーム業界の今後とか、いろいろ話題はありそうですが、そういうものはまったく関係ないところで、勝手な喪失感を覚えています。ほぼ日や、その他サイトのコンテンツをまとめるなりして、岩田さんの「軌跡」を記す本が生まれてくれればよいのですが。

ご冥福をお祈りします。

▼その他リンク:

"岩田聡さんのコンテンツ。 – ほぼ日刊イトイ新聞"

任天堂・岩田氏をゲストに送る「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」最終回――経営とは「コトとヒト」の両方について考える「最適化ゲーム」 – 4Gamer.net

任天堂の岩田聡社長が死去 55歳、胆管腫瘍で  :日本経済新聞

任天堂、難局攻略へ痛手 岩田社長急逝で司令塔失う  :日本経済新聞

岩田社長失った任天堂 直面する3つの課題  :日本経済新聞

任天堂の岩田社長死去、悼む声相次ぐ  :日本経済新聞

東京新聞:岩田社長急死 任天堂改革の道半ば:経済(TOKYO Web)

任天堂を率いた岩田聡、55歳の死 « WIRED.jp

Exclusive: Inside Nintendo’s Bold Plan to Stay Vibrant for the Next 125 Years | TIME

Satoru Iwata was Nintendo | The Verge

追悼:任天堂 岩田聡社長 HAL研究所の天才新入社員と高校2年生の思い出 by 藤本健 – 週刊アスキー

おれたちの岩田聡さんが亡くなるなんて、そんな話は受け入れたくない:[mi]みたいもん!

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