物書きと道具箱

よそ行きの文章

我が家は基本的にあまり片付いていません。

足の踏み場もない、ということはさすがにありませんが、片付けどころはいつでもどこかに残っています。

それがびしっと片付くのは、誰かが家に来るときです。その際は、しかるべき場所に物が再配置され、机は磨かれ、カーペットの上のホコリは取り除かれます。よくある話ではないでしょうか。

そうしてピカピカになった部屋は、とても「日常の部屋」では呼べません。言ってみれば「よそ行きの部屋」です。

そして、自分以外の誰かが読むことを意識して書かれた文章も、似たようなものです。

その際は、丁寧に推敲が行われるでしょう。辞書を引いて、言葉の意味を確かめたり、読み返して別の意味に取れないかをチェックしたりします。そうやって「よそ行きの文章」ができあがってゆくのです。

よそ行き、というとよそよそしい感覚がありますが、びしっと片付いている部屋にいちゃもんを付ける必要はないでしょう。

丁寧に推敲された文章も、基本的には同じです。人を迎え入れるための準備なのです。ついでに、自分の頭の中も整理される効能が付いてきます。これも、部屋の片付けと似ているかもしれません。

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