先日、以下のハングアウトオンエアにお邪魔させていただきました。
ライフハックLiveshow #152「Alphabet」 – YouTube
面白い話がいくつもあったのですが、中でも小林さんが言われていた「ソフトウェアからハードウェアへ」のお話が私のシンク・ボタンをぽちっと押してくれました。
ぐるぐるサイクル
ソフトウェアとハードウェアを比較したときに、一番顕著な違いとなるのが「フィードバックサイクル」の回転速度です。何かを作る→実際に試す→結果を受けて修正する。このサイクルが早く回れば回るほど、改善の速度はアップします。
ソフトウェアの場合であれば、そのサイクルは比較的低コスト・高速度で回せていました。よって、びゅんびゅんフィードバックサイクルが回り、圧倒的なヴァージョンアップが実現していたのです。
対して、ハードウェアであれば、たとえば金型を作ったり、専用の機械を作ったりする必要があるわけで、どうしてもコストや速度の面でソフトウェアに劣ってしまう状況があったわけです。よって、イノベーションの可能性はソフトウェアに軍配が上がっていました。
が、そういう状況も変わりつつある、というわけです。3Dプリンタやそれに類するものが普及すれば、簡易のプロトタイプならば、これまでよりも低コスト・高速度で作れるようになります。それはつまり、フィードバックサイクルの回転速度を上げることも意味します。
だから、今後はハードウェアの領域にイノベーションの舞台が移っていくのではないか。
そういうお話でした。なるほど、たしかにそうかもしれません。
そこで、私はふと考えます。
その次はなんだろうか、と。
その器官
ソフトウェアでのイノベーションが起こり、ハードウェアでのイノベーションが起こる。では、その次はどこの領域でイノベーションが起きるのでしょうか。
それはもう、ウェットウェアの領域しかありません。
ウェットウェアという言い方は『リファクタリング・ウェットウェア』から拝借していますが、ようするに脳です。私たちの、スキル・センス・知識・感情制御といった能力が、イノベーションの対象になるのではないでしょうか。
リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法 |
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Andy Hunt 武舎 広幸
オライリージャパン 2009-04-27 |
脳も、フィードバックサイクルによって成長(あるいは変化)しています。そのフィードバックサイクルをより低コストかつ高速度に回すことができれば、人類の平均的なスペックは大いに向上するでしょう。
現状ですら、毎日体重計に乗ってその結果をグラフにするだけで__これはフィードバックの強化__、食事行動にある程度の変化が生じることが確認されています。あるいは、使っている電気の使用量とその料金が、リアルタイムで家の中の目に入るところにある場合(フィードバック強め)と、そうでない場合(フィードバック弱め)では、前者の方が電気をより節約した、という実験も何かの本で読みました。
さまざまな機器が高性能になるにつれ、使った電気の量だけでなく人間の脳がどのような状態になっているのかを、素早くその人の脳に教えてあげることができるようになるでしょう。また、それらのデータを分析するソフトウェアが向上すれば、「その人の脳に最適な勉強法・時間帯」もすぐにわかるようになるかもしれません。そのアプローチを推進していけば、さまざまな分野において人間の能力が向上していくはずです。
もちろん、この場合、それらの機器やソフトが手軽に入手できるほど安価になるのは欠かせません。つまり、ソフトウェアとハードウェアの劇的なイノベーションがあってこそ、ということです。
さいごに
脳は非常に優れた器官ではありますが、完全とは言えません。
そして、その不完全さを補うために、人類はいろいろなものを作り出してきました。少なくとも、ここ近年までに圧倒的な脳のサポートツールだったのは「記録」です。その力の偉大さは、説明するまでもないでしょう。
しかし、いずれそうしたサポートツールにも変化が起き、人間の脳も2.0から3.0へのバージョンアップが行われる__ようになるのかもしれません。
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