2-社会情報論

電子書籍のセールとそれ以外の情報

電子書籍に関する情報って、もっと多様なものが欲しいと感じます。

だいたい流通しているのが新刊情報かセール情報。特に最近ではセール情報が目につきます。

もちろん、セール情報はありがたいものです。私も参考にさせてもらっています。でも、セール情報ばかりなのも、若干飽きを感じないではありません。だって、本って安いから買うものばかりではないわけですから。安さはポイントの一つですが、ポイントの一つでしかありません。

もうちょっと違った視点からの情報も欲しいところです。

今回は、電子書籍とセールについていろいろ考えてみましょう。

入り口としてのセール

電子書籍元年では、当然のように電子書籍ユーザーの数はあまり多くありませんでした。まったく使ったことがない、という人が圧倒的多数だったのです。

電子書籍を販売したいプラットフォームとしては、とりあえず一度は使ってもらいたいところです。そうでなければ、勝負の土俵に立つことすらできません。

そこで効果的なのがセールです。セールは単純かつ暴力的な力があります。端末をセールし、電子書籍そのものをセールし、ということで電子書籍の「入り口」にいろいろな人を誘い込んできました。その施策は圧倒的に正しいと言えるでしょう。

しかし、マーケティング的に考えればセールだけをアピールポイントにしているのは若干力弱いものです。なぜなら、ユーザーの中には「安さ」にはあまり反応せず、別の要素に反応する人もいるからです。売り上げのロングテールを作るのは、おそらくそういう人たちが買う(特に安くはなっていない)本たちです。

もう一度強調しておくと、セールは総ユーザー数を増やしてくれる効果があります。細かくは触れませんが、「安さ」は口コミの世界では万能鍵のような働きをしてくれます。現に、安売り情報はネットでゲリラ豪雨のように降り注いできます。大量の情報が創出され、ネットを駆け巡っているわけです。それによって、「ちょっと電子書籍というものを使ってみようか」と思う人は、一定の確率で生まれてくるでしょう。

ただし、そうしたものはある意味で一階部分です。二階、三階と積み上げていくためには、ユーザーの中でも「安さ」にはあまり反応しない人たちが反応する何かの情報を出していかなければいけません。

セールの効能

少し別の視点から、セールについて考えてみます。

数年ほどAmazonのKindleで本を買ってきた感触から言うと、セールには次のような効果があります。

・「安くなっている」から買う効果
・内容と値段のマッチング
・セール情報のまとまり

「安くなっている」から買う効果

たとえば1200円で販売されている本が、セールで980円になっていたとしましょう。あなたはその本が前から欲しかったので、「せっかく安くなっているんだから、買おうか」と思い、購入ボタンをぽちっと押します。

ここでの重要なポイントは「せっかく」の部分です。つまり、「980円だから買う」のではないのです(これが下の項目との違いです)。

こういう購入動機は、「期間限定発売」や「数量限定」に近いものと言えるでしょう。簡単に言えば、「自分の気持ちを正当化できる、何かしらの理由」を見つけたので、それを言い訳に使って購入した、ということです。逆に言えば、言い訳になる別の何かがあっても購入は発生したかもしれません。

内容と値段のマッチング

たとえば、前々から古代の神話について知りたいと思っていて、関連する書籍を探していたら一冊2000円もすることを発見してしまったとしましょう。そこまでのお金を払うつもりはないな〜と思っていたところ、たまたまセールでそれが1000円になったとします。1000円ならば、古代の神話についての情報を得るために払う価値はある。そう考えたあなたは購入ボタンをポチッとします。

これは、上のパターンとは違い、はじめからその本をその値段では買うつもりがなかった人が、値段が下がったことで買うつもりになった、という状況です。

理想的なモデルを立てれば、最初の一ヶ月で2000円でも買うつもりがある人に販売し、次の一ヶ月で1000円なら買う人に販売し、その次の一ヶ月で500円だったら払ってやってもいいという人に販売できれば、トータルの販売数や売り上げは最大にできます。が、なかなかそううまくはいかないのがセールの難しいところです。

セール情報のまとまり

以上のように、価格を変更することで、本と読者の関係に揺さぶりをかけられるのがセールの特徴です。

しかし、それとは別軸の魅力もあります。

たとえば、ある出版社がセールを行ったとしましょう。そのページには、いろいろな作品がラインナップされることになります。

そうしたページにアクセスすると、新しい本との出会いが期待できます。名前の知らなかった、つまり検索しようとも思わなかった本たちのタイトルを眺めることになるのです。これはまさしく、(これまでの)書店の機能の一つと言えるでしょう。

読者としては、自分の文脈外にある電子書籍と出会うことができ、売り手としては新しい動線を獲得することができる。非常に優れた効果です。しかし、これはセールに限定されるものではありません。ようするに「検索によって本を探す」のとは違うアプローチで本の情報を提供できている点が重要なのです。

例えば、以前このブログで以下のような記事を書きました。

R-style » GW後半戦からでも読み切れる、薄くて面白い本7選

どのような切り口でもよいのですが、こうした情報が提供されているとロングテール部分が積み上がっていくのではないかと思います。

さいごに

あまりまとまっていませんが、電子書籍のセール情報について考えてみました。

最後にもう一度書いておきますが、セール情報は有用です。それは売り手にも書い手にもありがたいものです。が、それはそれとして、何かしら別のアプローチも欲しいところです。

重要な点は、本は「安いから」(あるいは、人気があるから)買うものばかりではない、ということです。もちろん、そういうニーズは存在し、しかも大きいのかもしれませんが、視野は広く持ちたいところです。

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