6-エッセイ

成功者の本、後日談

少し前、軽い気持ちで以下のエントリーを書いたら、

成功者の本

思った以上にリアクションが頂けました。ありがとうございます。

私が確認できているものをリストしてみます。

おおよそ回答の方向性は近しいと感じます。

正確に書くのは難しい

「成功者が100%の善意を持って、自分の成功のノウハウを伝えたいと願い、自らの成功の理由を完璧に抽出し、それを再現可能な形で、MECEに沿って、人にわかりやすい文章を用いて書かれた本」

「そうして生まれた本に書いてあることを、実行するだけの動機付け」

かなり確率は低そうですが、バラ色のような上の二つが揃ったとき、はじめて成功を手にすることができるでしょう。ただし、成功に「運」が一切関与しない、という前提がつきます。

運の関与度が2%程度であれば、試行回数を増やすことでカバーできるでしょうが、もしそれが96%ならいささかギャンブルです。というか、それってノウハウあんまり関係なくね? みたいな疑問も湧いてきます。

そうした状況下でのノウハウは、4%の確率を8%ぐらいに上げるもので、相対的にみれば倍の効果がありますが、実質的には微妙な違いでしかありません。もちろん、微妙な違いを笑う人は微妙な違いに泣かされるわけですが。

仮に運の問題を克服できたとしても、やはり本の内容の問題が残ります。

100%善意に関しては良いとして__成功者の皆さんは人を騙して儲けようとは思わないはずですよね。よね。__、「自らの成功の理由を完璧に抽出」が困難です。非常に困難です。

一つにはバイアスの問題があって、何かを過剰に評価してしまっている可能性があります。それでは機能するノウハウは生まれません。仮にそうしたバイアスがない場合でも、「因果の特定」は容易なものではないでしょう。狭い実験室の中の、適切にコントロールされた環境ならばともかく、ここで話題にしているのはいわゆる「社会的成功」です。つまり、多くの人間が複雑に関係し合っている状況です。

人間の認識力だけで、バラフライ効果を解析することができるでしょうか。いささか難しいと言わざるを得ません。

そもそも、蝶が羽ばたいただけで竜巻が起こるわけではないのです。気象的な環境があってこその話なので、仮にバタフライを特定できても「ほら、バタフライ! バラフライ!が原因なんだ」と騒いでしまうのはどうにも違います。でも、『バタフライで年収が10倍』なんていうのが生まれがちなこともたしかです(これは多分にバイアスの影響)。

また仮に、そうしたもろもろが奇跡的にうまくいったとしても、成功者当人が理解していることを、うまく文章に移し替えられるかどうかはわかりません。自分で文章を書いた経験をお持ちの方ならば「考えていることをうまく書けない」というもやもやに晒されたことが何度もあるでしょう。その人が成功者だからといって、文章の成功者であるとは限りません。

総じてみると、成功者の本の危うさはいろいろと見えてきます。

二つのタイプ

というわけで、成功者の自伝的な本に書かれていることを、自分にそのまま置き換えるのはどうにも違うだろう、ということがわかりました。

それはいかにも成功しそうに書いてありますが、成功者が書いてあるのですから後付けの理屈でしかありません。少なくとも、科学的に受容できるものではないでしょう。

ただしそうした本がまったく無価値かというとそういうわけでもなく、単純に読み物として面白い部分はあるでしょうし、ある種の読み方をすれば得られるものもあるでしょう。

その点を考えれば、佐々木正悟さんが指摘されている「人間の一般的な傾向に着目した本」は、より実用的・実際的に読めます。ようは「自分のトリセツ」がそこに書かれているわけで、スペックアップというか自分の持っているスキルや熱意みたいなものをうまく社会的に着地させられる見込みは高まります。ただし派手さはありません。

たぶん、それも問題の一つで、「人間の一般的な傾向に着目した本」は、よしやろう!という気にあまりならないのです。自伝的な本は(短期間であれ)モチベーションを高めてくれますが、こうした本は、ふむふむと頷いても、それで終わってしまう可能性があります。この辺りは難しい問題で、もちろんそれは物書きの仕事なわけですが、一度書き手からの視点を持ってみることで、読み方も変わってくるのではないかと思い、問3を設けました。

さいごに

こうして考えてみると、「本の読み方」というのはかなりの部分がスタンスというか視点の問題だな、ということに気がつきます。食材を活かすのも調理法次第、というのに近しいかもしれません。

それはそれとして、個人的には『ビジョナリー・カンパニー』のようなアプローチで、世間一般に大切だと言われていることでも、成功している人とそうでない人がいることに注目し、そこにある差異を抽出していくような感じの本があると楽しく読めそうです。

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