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【書評】「クリエイティブ」の処方箋(ロッド・ジャドキンス)

創造には、必ず困難がつきまとう。

新しいものを生み出すこともそうだが、そうして作ったものを認知してもらうのも同様だ。

人は惰性を好み、世界もそれに倣う。だから、新しいものは最初に必ず洗礼を受ける。もし、新しいものがまったく洗礼を経ないで受け入れられたら、それは新しく見えるだけの古いものである、と言ってもいいだろう。

クリエーターは常に理解と不理解の狭間にたたき込まれる。完璧に理解されるのならば、それはもう新しいものを何一つ生み出していないということだ。まったく理解されていないのならば、誰にも認められていないことになる。クリエーターはその間で、創造を行い続けなければならない。

当然、苦しさ、困難、苦痛、悩み、挫折、疑心、といったものが発生する。クリエーターと呼ばれる人たちが、前向きな言葉、力強い言葉をよく発するのも当然だ。そうした言葉の力添えがないと、前に向かって歩いて行くのが難しいのである。どれだけその作業が楽しかろうが、夢中になれようが、苦難が消え去ることはない。苦難が消えるときは、挑戦することを諦めたときなのだ。

「クリエイティブ」の処方箋―行き詰まったときこそ効く発想のアイデア86
ロッド・ジャドキンス Rod Judkins
フィルムアート社
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本書は、そうした前向きな言葉や力強い言葉を集めた本である。さまざまなジャンル__小説家、起業家、芸術家、デザイナーetc……__のクリエーターが、どのような困難に立ち向かったのか、そこでどんな言葉や思考を用いたのかが紹介されている。全部で86個あるのでなかなかのボリュームだ。しかし、それぞれの項目は5〜6ページ程度なので、毎日少しずつ読んでいくことができるだろう。

また、項目の最後には関連する別の項目が提示されている。拙著『Fount of Word』と似たような構成である。おそらく、項目一つだけを断片的に覚えてもあまり意味がないからであろう。創造とは断片性ではなく、統合性であることもそこには関係しているのかもしれない。

創造性の源

一番最初の項目である「see what happens when you make something happen」(行動を起こすと、何かが始まる)に、こんなことが書かれている。

クリエイティブな心構えは、何にでも適用できる。そしてあなたの人生のすべての側面を豊かにしてくれる。創造性というのは、電灯のように点けたり消したりできるものではない。あなたが置かれた世界を見る眼差しそのものであり、あなたが世界とどう関わるかという方法論なのだ。

驚くほど的確にクリエイティビティーが表現されている。そうなのだ。創造性とは、認知の一つの形である。別の言い方をすれば、パッシブに発動されるスキルだ。多くの「創造技法」がやっていることは、そうしたパッシブなスキルが発生する環境を意図的に作ることである。

たくさんのアイデアを出す人は、ようするに他の人より多く「問題」を見つけているだけにすぎない。その眼差しこそが創造性の源であって、それを抜きに表面的なテクニックをいくら学んでも豊かなアイデアは生まれてこないだろう。

たしかに創造性は特別なスキルである。でもそれは、4桁の掛け算を暗算で計算できるのも特別なスキルというのと同じ意味でしかない。誰しもがスーパーアイデアパーソンになれるわけではないが、訓練すれば誰でもそれを身につけることができる__そういうスキルである。むしろ、掛け算の暗算よりもありふれた、あるいは身近なスキルと言えるかもしれない。なにせ、そこらじゅうに「問題」は転がっているのだから。

さいごに

ちなみに原題は『The Art of Creative Thinking』である。日本語タイトルとはやや雰囲気が違う。しかし、この日本語タイトルもよくよく考えてみると面白い。ありがちなタイトルにするならば『「クリエイティブ」に効くクスリ』とかになるだろう。クスリと処方箋の違いは、処方箋はそのままでは飲めないということだ。それをもとに薬を調合しなければいけない。

つまり、どういうことだろうか。

本書に書かれていることも、そのまま鵜呑みにするのではなく__処方箋をそのまま飲む人はいない___、自分の人生にアレンジする必要がある、ということだ。すなわちそれこそが、「クリエイティブな心構え」の最初の一歩であることは言うまでもない。

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