物書き生活と道具箱

「良い作品を作ること」

村上春樹さんの『職業としての小説家』に以下のような文章があります。

日本やヨーロッパの出版関係者はよく、「アメリカの出版社は商業主義で、営業成績ばかり気にして、地道に作家を育てようとしない」というようなことを言います。(中略)でもそんな面ばかりではありません。気に入った作品に対して、またこれぞと思う作家に対して、エージェントや出版社が目先の損得抜きで力を傾注している例を、僕はあちこちで目にしてきました。

さて、森博嗣さんの『作家の収支』という本には以下のような文章があります。二つ引きます。

「出版」というもののハードルは、かつてよりもずっと低くなっているが、その分、多くを売ることは難しくなっている。本が出たというだけで喜んではいられない時代である。しっかりと部数を把握し、それを増やしていくためには何が必要なのかを、作家は自分で考え、戦略を立てなければならない。出版社はそこまで考えてくれない。それよりも、もっと売れる作家を捜す方がずっと簡単だからだ。

新人は、とにかく良い作品を次々発表するしかない。発表した作品が、次の仕事の最大の宣伝になる。それ以外に宣伝のしようがない、と考えても良い。したがって、最初のうちは、依頼側が期待した以上のものを出荷する。価格には見合わない高品質な仕事をして、割が合わないと感じても、それは宣伝費だと理解すれば良い。

出版社に対するスタンスは真逆のように感じますが__実際それは錯覚ですが__、「じゃあ、作家はどうすればいいか」という部分については、同じですね。

「良い作品を作ること」「気に入ってもらえる作品を作ること」

ほんとに、もう、これに尽きるのでしょう。二人の作家は、作品のスタイルや出版のペースなど、大いに違うところがあります。強いて言えば、日本社会があまり好きではない、くらいが共通点かもしれません。

でも、「どういうものを作ろうとしているのか」については同じです。でもって、それがたぶん「プロ」である、ということなのでしょう。あるいは、「プロ」であり続けるために必要なことなのでしょう。

売れる、売れないについては偶然が関与する部分が多くあります。特に巨大なヒットとなれば、奇跡みたいなものです。でも、良い作品は誰かの心に残ります。それが、余韻となり、波紋を広げ、じわじわと拡大していく。そういう風に太鼓を叩き続けることが、たぶん唯一のできることなのではないでしょうか。

「良い作品を作ること」

そして、

「いかにすれば、良い作品を作り続けられるのかを考えること」

この二つが鍵です。

おそらく後者の戦略は作家によってまちまちで、共通解といったものは見つけられそうもありません。よって、個々で考えていく必要があるでしょう。作家の生存戦略を。

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