3-叛逆の仕事術

腐る目標、腐らない目標

年末年始。一年の振り返りや新しい目標設定が行われる時節です。

P・F・ドラッカーは、一年に一度、二週間ほどの時間を作って、それまでの一年を反省していたようです。
※『プロフェッショナルの条件』より

大きく取り込んでいたのは、以下の三つの問い。

「集中すべきことは何か」
「改善すべきことは何か」
「勉強すべきことは何か」

シンプルながら力強い問いです。

そして、コンサルティング、執筆、授業のそれぞれについて、次の一年の優先順位を決める。もちろん、毎年八月につくる計画どおりに一年を過ごせたことは一度もない。だがこの計画によって、私はいつも失敗し、今後も失敗するであろうが、とにかくヴェルディの言った完全を求めて努力するという決心に沿って、生きざるをえなくなっている。

ポイントは、ドラッカーが「計画どおり」に過ごせたことなどない、と述べている点でしょう。それでも、彼は毎年同じように計画を立てていました。そこに意味があったからでしょう。

マックス翁の目標

『仕事は楽しいかね?』に次のような場面があります。

仕事は楽しいかね?
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「目標を設定すると、自己管理ができているような気がするものだ──」
 そこで言葉を切る。そして、いまだ私が手に握りしめている”成功のための戦略”の紙を指差し、それを見るように促した。
「ここをごらん。きみがこの紙のリストにあげた”自分の人生をきちんと管理すること”という項目を。ハハ! 人生はそんなに扱いやすいものじゃない。僕は人生の中で何をすべきかなんて、問いかけなくなった──どうせ、人生なんて思い通りにはならないからね」

会話を主導しているのはマックス老人。「人生の中で何をすべきかなんて問いかけなくなった」彼でも、目標はたった一つだけあったようです。

そして尋ねた。「僕がいままでに掲げた目標が一つだけある。聞きたいかね?」
ぜひ、と私は答える。

”明日は今日と違う自分になる”だよ。

二つ目の習慣と悪い戦略の特徴

『七つの習慣』の二つ目の習慣は、「目的を持ってはじめる」(終わりを思い描くことから始める)です。
※『七つの習慣』より

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目的を持って始めるということは、目的地をはっきりさせてから旅立つことである。目的地を知ることで、現在地もさらによく分かるようになるし、いつも正しい方向に向かって歩み続けることができる。

「活動の罠」──日々の生活の忙しさに追われ、やっていることそのものに意味があるかどうかを考えないありさま──の中に自分自身を見失い、成功のはしごを昇りつめて頂上に達した時、はじめてそのはしごはかけ違いだったと気がつく人がなんと多いことだろう。非常に忙しい毎日を送りながらも、その活動自体が、実は自分の最終的な目的とは何ら関係ないという可能性が大いにあるのだ。

とても忙しく過ごしていたのに、ふと気がつくと恐ろしいほどの虚無感に包まれる。そういう感覚がたまに訪れることはないでしょうか。登るはしごを間違えていたのです。

もう一つ、紹介します。

リチャード・P・ルメルト の『良い戦略、悪い戦略』に、悪い戦略の4つの特徴が挙げられています。

良い戦略、悪い戦略
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悪い戦略の特徴1 空疎である
悪い戦略の特徴2 重大な問題に取り組まない
悪い戦略の特徴3 目標を戦略ととりちがえている
悪い戦略の特徴4 まちがった戦略目標を掲げる

たとえば、私が「月間PV100万達成」を目標にするのは、無謀の極みです。

「いや、そんなことないよ。がんばれば誰だって達成できる」__そんな声が聞こえてきそうです。しかし、私は一日一エントリーの体制を崩すつもりもありませんし、反応されやすいキーワードで記事を書くことも、炎上手法でコメントを誘うことも、ネガティブな要素でバイラルを刺激するつもりもありません。

もし、そういうことをやってしまったら、R-styleはR-styleではなくなります。それを代価にして得られる成果に一体どのような意味があるでしょうか。

つまり、私の大きな目標は「R-styleを運営していく」ことであり、その目標と「月間PV100万達成」はうまく馴染まないのです。

これは、かなり大切なポイントです。

ハリボテ目標

マックス翁は、実に良い指摘をしています。

「目標を設定すると、自己管理ができているような気がする」

本当にその通りです。一年の最初に目標を立てたりすると、いかにも自分はセルフマネジメントしてるぜ、という気分になります。もちろん、そういう気分に浸れたら十分です、という場合には私から言うことは特にありません。でも、そうでないのならば、ちょっと立ち止まることが必要です。

まず、今年一年の活動を振り返っているでしょうか。自分は実際に何をやったのか、何をやれていなかったのか。それがわからないと空疎な目標になりがちです。

一年で10冊しか本を読まなかった人が、次の年突然100冊読むことを目標にする。そんなことが果たして可能でしょうか。もちろん、可能か不可能かといえば可能でしょう。

しかし、そのためには別の活動に使っている時間を削減する必要があるかもしれません。その段取りは十分できているでしょうか。あるいは、そういう覚悟があるでしょうか。

あるいは、読みやすい本を選ぶことでなんとか冊数目標をクリアするように動くかもしれません。でも、そうして冊数を水増しした読書体験からどのようなものが得られるでしょうか。

昇ったはしごから見える風景は、望んでいるものとは違うかもしれません。

さいごに

適当に目標を立てれば、なんかうまくいく、というのは空想です。なにせドラッカーは二週間もの時間をそこに投下しているのです。

どう考えても、目標を立てただけで人格が新しく生まれ変わったり、これまでの責任がゼロになったり、溜まっている仕事が消え去ったりはしないでしょう。そういうものから目をそらしたい気持ちで立てる目標は、結局は空疎なものか自分に強すぎる負荷を与えるものにしかなりません。

目標はうまく立てなければいけません。あるいは、機能する目標が必要です。でないと、目標が腐り、自分もそれに続いてしまうでしょう。

  • まずは一年の活動を振り返る
  • その上で目標を立てる
  • 目標を達成する上での障害を検討する
  • 目標の達成と自分の価値感の齟齬を確認する

最低でもこれくらいのことは必要になりそうです。

えっ、面倒? だったら、もうシンプルに”明日は今日と違う自分になる”でも良いでしょう。これだって立派な(かつ過酷な)目標です。

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