2-社会情報論

電子書籍が嫌われる理由を考えてみた

以下の記事を読みました。

まだ電子書籍で消耗してるの?–電子書籍が嫌われる3つの理由を考えてみた(前編) – CNET Japan

電子書籍が嫌われる理由と、その実体が語られています。


たぶん、「電子書籍を嫌っている」人にもいろいろなバリエーションあるんだと思います。

で、個人的にふと思いついた理由を今回は書いてみましょう。

それは、「電子書籍は便利だ」という理由です。


「本」というメディアは、音楽・映画・テレビといったメディアと比べて、読者の意識的な参加を必要とします。頭がぼーっとしているときの読書は、1行たりとも前進しませんが、映画であれば、ぼんやりと眺めているだけでシーンは進んでいきます。

つまり、本というメディア、あるいは読書という行為は、全般的に「しんどい」ものなのです。苦労を必要とすると言い換えても良いでしょう。

そしれ本を取り巻く環境も、いろいろな「しんどさ」に満ちあふれています(あるいは溢れていました)。

紙の本を買うときは__一昔前では__書店に足を運ぶ必要がありましたし、検索機のない時代では一つひとつ棚を覗いていく必要もありました。書店ごとにラインナップが違うので、書店のはしごをすることも珍しくありません。買った本は家に持って帰らなければいけませんし、しかも家に帰ったら帰ったでどこにその本を置くのかの問題にも直面します。

そのすべてが「面倒」です。「手間」と言い換えても良いでしょう。

おそらく、その環境が長く続くことによって、本の価値と「しんどさ」や「面倒さ」がリンクしてしまった、あるいは癒着してしまったということがあるのかもしれません。あるいは、実際にその「しんどさ」や「面倒さ」それ自身にたしかな価値があるのかもしれません。

どちらかはわかりませんが、ともかく「しんどさ」と価値が固く結び付いてしまっている可能性はあります。


その視点で眺めてみると、電子書籍は「しんどさ」や「面倒さ」が徹底的に排除されています。

  • 書店に行かなくても買える
  • 本を探して歩き回る必要もない
  • 重たい本を持ち運ぶ必要もない
  • 本棚はクラウドにある

圧倒的です。さらにこれが「読み放題サービス」であれば、もう完璧と言えるでしょう(品揃えが問題ですが)。

よく「手のかかる子ほどかわいい」なんて言われますが、認知心理学の知見でも、自分が手間をかけたものにより強い価値を感じる、ということが言われています。

そう考えると、紙の本を苦労しながら楽しんできた人が、電子書籍を忌み嫌うのはわからないではありません。なにせ、そこには本に付随する苦労がほとんどないのですから。


言うまでもありませんが、私は上記のようなものを「不合理だ」と切り捨てたいわけではありません。価値というのは、それぞれの人が心の内側で感じるものであって、他人がとやかくいうものではないでしょう。そういう人もいて、そうでない人もいる。ただ、それだけの話です。

もちろん、商売をしていくのであれば、どういう人をターゲットにするのかは、きちんと見極める必要があるでしょうが。


というようなことを書いてきましたが、私はやっぱり紙の本には紙の本なりの独特の良さがあるとは思います。

一つには、「物」としての価値ですが、それ以外にも情報を摂取する体験に違いがある気がします。どれだけ電子書籍で読むことに慣れたとしても、紙の本で読書するという体験とは同一にならないだろう、という予感です。

でもそれは、「どちらが優れている」という話ではありません。単に違いがある、という話です。ベートーヴェンが優れているからと言って、モーツァルトが優れていないことにはなりません。そういうことです。

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