5-創作文

二つの島

二つの島があった。そう遠くもなく、そう近くもない。そんな二つの島があった。

それぞれの島には、それぞれの住民がいた。そこには似ていながらも、確固とした固有の文化が育っていた。

住民たちは、自分たちの島で生活しながら、たまに船を使ってお互いの島を行き来していた。その交流は、夜空に浮かぶ星々のように人生に輝きを与えてくれた。自分たちとは違う生活をしている人たちがいる。その事実を知ることは、不思議な暖かさと豊かさをもたらしてくれた。交流はほそぼそとながら、連綿と続いていた。

あるとき誰かが言った。「そうだ、橋を作ろう」

若者だったのかもしれない。あるいは何かで突然大金を手にした者だったのかもしれない。それはあまりに突飛な意見だった。しかし、現実的に考えれば、それは実現可能なことであった。大変な費用はかかるものの、二つの島をつなぐ橋を架けることは可能だった。

「船があるからいいじゃないか」

そんな声も上がった。いや、ほとんど多くの住民が、声には出さないものの同じ気持ちであっただろう。

「でも、この素敵な交流がもっと盛んになるんですよ。橋を架けましょう」

声にならない声は、誰の耳にも届くことはなく、そうして橋を架ける工事が始まった。

長い時間をかけ、ようやく橋は完成した。二つの島は、船を使うことなく行き来できるようになった。

それは予想していたものよりも、遙かに素晴らしかった。単に交流が盛んになっただけではない。新しい商売も生まれ始めた。船で運んでいたんでは痛んでしまってとても売り物にならないようなものでも、橋を使えばすぐさま持って帰れる。それにコストもかからない。今までは海を渡らないと食べられなかったようなものでも、お金を余計に払えば食べられるようになった。

住民たちは皆、橋の存在をありがたがった。そして、それは徐々に当たり前のものとなっていった。今ではもう船を使って行き来するという行為自体が突飛なものになっていた。

やがて、誰かが言った。「そうだ、埋め立てよう」

橋はあくまでも橋だった。あまりに天候が酷いと行き来はできなくなるし、一度に渡れる人の数も限られてしまう。これでは不便ではないか。だったら、橋ではなく地面を作ればいい。

住民たちは誰も住んでいない島から土を運び込み、二つの島を隔てている海を埋めていった。無人島の土がほとんどなくなりかけたころ、二つの島をつなぐ地面が生まれた。そして橋はもう用済みとなった。

交流はますます盛んになった。今では気楽に散歩する気持ちで、隣の島に出かけられる。埋め立てられた地面の上にも、いろいろなものが立ち始めた。橋では到底無理なことだ。そうして、また新しい商売の可能性も生まれ始めていた。

人々はこれまでには手にできなかった豊かさを、当たり前のように手にしていた。そして、皆が等しくそれを享受している。片方の島だけでしか手にできないようなものは、もう何一つない。

そのようにして二つの島はなくなり、一つの島が生まれた。

そこには誰も使い道の分からない朽ち果てた橋と、誰も使い方を知らない船の残骸が残るばかりだ。夜空に浮かぶ星々も、今ではもうどこにも見えなくなっていた。

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