2-社会情報論

「文字モノ」の売上げを増やす

以下の記事を読みました。

出版不況は終わった? 最新データを見てわかること – CNET Japan

この点については、以前もこのコラムで取り上げたことがありますね。もちろん、これはこれでいいのですが、今後は「文字モノ」の電子書籍の拡販が課題であることも間違いありません。

電子書籍が最近売れてきているといっても、その大半は「コミックス」(つまり漫画系)。今後、さらなる拡大を目指すならば「文字モノ」を積極的に売っていく必要がある、というお話です。なるほどですね。

じゃあ、どうやったら「文字モノ」って売っていけるんでしょうか。


一口に「文字モノ」といっても、文学(いわゆる純文学)、エンターテイメント、教養、実用・趣味、といろいろなジャンルに分けられます。で、購入する層や動機といったものも違っているでしょう。当然、アピールのための施策も分けて考える必要があります。

たとえば、2016年2月12日のAmazonランキングを覗いてみると、「本」(つまり紙の本)では、実用・趣味に属する本が上位に並んでいます。上位20冊を見ても、文学と教養に分類できる本は数冊といったところです。

では、Kindle本ランキングではどうかというと、やはり実用・趣味やエンターテイメントが強いのですが、『文藝春秋2016年3月号』みたいなものも入っています。ただ、この号は芥川賞発表号(受賞作が掲載されている)なので少し例外かもしれません。

こうしてみてみると、電子書籍の「文字モノ」でも、エンターテイメントと、実用・趣味のジャンルは、徐々に売り方の体制が整いつつある予感が湧いてきます。紙の本でも比較的動きの良いものが、電子書籍化され、販促も進められる。流れとしては自然なものです。

また、ここ最近私の目に入ってくる電子書籍の情報も、おおよそエンターテイメントか実用・趣味の本になっています。情報流通の流れが偏っているわけですが、当然その方が売上げが立つからでしょう。

というわけで、元々売上げが期待できるようなジャンルについては、自然発生的に販売が拡大していくことが予想できます。この辺は心配しないでよいでしょう。


問題は、残されたジャンルです。もし、こうしたジャンルの本の売上げが伸ばせるならば、全体の傾向としてはプラスαの数字になるでしょう。しかし、課題も少なくありません。

第一に、もともと紙の本であまり売れていないのですから、電子書籍でも似た結果が想定できます。

第二に、そもそも電子書籍になっていない本がたくさんあります。学術書なんかは顕著ですが、教養系文庫でも「えっ、これないの?」みたいな状況がときどきあります。

第三に、こういう本はだいたい読むのに時間がかかります。そしてレビューを書くのが難しいです。

第四に、上記と似た理由で、キュレーターを担える人の数が非常に限られています。

漫画のコミック一巻くらいであれば、買ったその日に読み終えて「面白かったです」とツイートができます。そうしたつぶやきが同時多発的に発生すれば、販売にも大きな影響が生まれるでしょう。しかし、買って読み終えるのに3日や一週間もかかる本では、感想のタイミングがずれるので、バズが発生しにくい状況が生まれます。

また内容が高度だったり、深淵だったり、哲学的だったりすると、簡単に感想が書けません。口コミが生まれにくいわけです。じゃあ、それを解説してくれる人がいると良いわけですが、それができるのはタフに本を読み込んでいる人だけでしょう。いないわけではないですが、その数は限られています。でもってネットでの話題の拡散において、出発点が少ない、というのはなかなか不利です。

というわけで、元々数が売れるわけでもないその商品性も相まって、エンタメ系や趣味・実用系と似たような拡大の仕方は難しいのではないか、という予測が立ちます。


じゃあ、どうしたらいいんだ? という疑問に答える術を私は持ち合わせていないわけですが、とりあえず、エンターテイメントや実用・趣味と同じトロッコに乗せてもうまくいかないだろうな、ということは思います。何か別の新しい軸を作る必要がありそうです。

ちなみに、ピケティのようにバカ売れする本もあるわけですが、消費のされ方を見ると、教養書というよりは実用書的、あるいはいっそエンターテイメント的と考えておいた方が無難でしょう(もちろん内容にけちを付けているわけではありません。あくまで消費のされ方という話です)。

個人的にはロングテールをさらに長くする、あるいは少しだけ厚みを増やす、という方向性を模索するのが良いような気がします。商品性的にも、その方が合致しているでしょう。

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