【書評】アテンション ―「注目」で人を動かす7つの新戦略 (ベン・パー)

Webメディアを運営する人なら必携と言ってもいいだろう。

アテンション――「注目」で人を動かす7つの新戦略
ベン・パー
飛鳥新社
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私たちの日常は情報で覆われている。その情報たちは「私を見て」「僕を見て」とまるでサキュバスのように囁きかける。だから、ポンっと情報を出して、誰かに見てもらうのは結構難しい。いろいろな情報が、人々の「注目」を奪い合っているからだ。

そこで必要なのが戦略である。そして、本書はその戦略を提示する。

概要

副題にあるように、本書は人の注目を動かすための7つの戦略が語られている。目次は以下の通り。

  • はじめに:これからは、「注目」を制す者が夢も市場も手に入れる
  • 第1章 注目の3段階:注目には「即時」「短期」「長期」がある
  • 第2章 自動トリガー:「色」や「シンボル」で人間の無意識に訴えかける
  • 第3章 フレーミング・トリガー:「おなじみの感覚」をつくり出す
  • 第4章 破壊トリガー:「驚き」「単純さ」「重要性」のセットで畳みかける
  • 第5章 報酬トリガー:「相手が求めているもの」を可視化する
  • 第6章 評判トリガー:肝心なのは「なにを言うか」より「だれが言うか」
  • 第7章 ミステリー・トリガー:「謎」「不確実性」「サスペンス」を提供し続ける
  • 第8章 承認トリガー:「認知」「評価」「共感」の3欲求を満たす
  • おわりに:この本のもうひとつの目的

それぞれの戦略(トリガー)に、一つの章が割り当てられ、具体的な事例や科学的知見と共に内容が解説される。

そこで語られる話は、私の実感とも、私が知っている事例とも見事に合致している。正直「やっぱり、そうだよね」という気持ちが強かった。もしWebメディアを運営している人が、本書で語られている話を一つも知らないようならば、それは結構やばいと考えてもいい。

もちろん、本書に提示されている全てのトリガーを引く必要はないだろう。その代わり、本書から読み取れる「これだけはやってはいけないこと」は、普遍的に役立つ。特に「報酬トリガー」や「評判トリガー」で書かれていることは、致命的なことになりかねない。その「落とし穴」について知るだけでも、本書は十分に役に立つ。

あるいは、破壊トリガーや、ミステリートリガー、そして承認トリガーの性質を知れば、炎上ブロガーといった人たちが一体何をしているのか、というのを読み解く手がかりにもなるだろう。全国的な知名度はなくても長く人気の続く商品やサービスが、何によってその人気を裏付けているのか、ということも見えてくるはずである。

が、本書の白眉はそこではない。

一番大切なポイントは、「注目」というものを三段階に分けたことだ。これは第一章で前振り的に語られているが、本書の基底をなす考え方である。

本書では注目を「即時」「短期」「長期」の三つに分けた。「即時」は瞬間的な反応のことで、「短期」は数分から数時間を指す。そして「長期」は、それよりもはるかに長いスパンの注目だ。村上春樹さんの新刊が出る? 買います、すぐ買います! 私はこのような生活を、それこそ十年以上も続けてきた。それが「長期」に渡って注目を集めているということだ。

この違いを踏まえないと、落とし穴にはまることがある。「僕は注目を集めたいんです」と思い、注目を集めるためのテクニックを駆使するのだが、それは短期で留まって、そこで終わってしまう。つまり消費されて消えていく。本来目標としていたものが長期にわたる注目の獲得であれば、これは失敗と言えるだろう。

このように持続時間によって「注目」を区分けしたことは、多くのテクニックが短期や即時に効くものばかりになりつつある現代では、たいへん有用な視点の導入と言えるだろう。それだけでも本書には価値がある。

さいごに

正直なところ、「本書に書いてあることを実践すれば、うんぬん」みたいなお手軽ビジネス書ではない。特に、長期の注目を求めようとすれば、小手先ではどうしようもなくなる。

また、『歴史は「べき乗則」で動く』で示されているように、「必ずヒットが生み出せる」みたいなことは誰にも言えない。ただし、「大ヒットが生まれる余地がある」という場を整えておくことはできる。本書が示す戦略は概ねそういったものだ。それでも、本書は十分に役に立つ。

  • 注目の持続時間の違い
  • 「これだけはやっていはいけないこと」
  • 人の心の力学

これだけのことを知るだけでも、メディアの運営方法ががらりと変わるかもしれない。

▼こんな一冊も:

経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ
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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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