鈍行列車の読書体験

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』を読み終えました。

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この本、とても分厚いので、自力で悠々と立ちます。雄々しく屹立します。

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さすがにこの本は「持ち歩いて、隙間時間に読む」みたいなことはできません。椅子に座り、ゆっくり腰を落ち着けて読むことを迫ってきます。そうです。制約とは対象からの要求なのです。


本書で対談する二人は、引き出しも広く、知識も豊かで、ユーモアに溢れています。連想に導かれ、話がスーパーボールのようにあちこちにジャンプします。当然、読み手もそれに導かれ、縦横無尽に思索のツボを押されまくるわけです。不思議ですね。物理世界では「ゆっくり腰を落ち着けて読むこと」を要求する本が、一方その中身では読者をあちらこちらに引き回すのですから。

ともかく本書はずっと__正確には買った日を除いてずっと__家で読んでいました。椅子に座り、机を前にして読んでいました。私の中ではずいぶん珍しい読書体験です。たいていは本をカバンに忍ばせ、すきあれば読書に浸る、というのが私の読書の日常です。


非日常の読書には、非日常の読書術が適しているのではないか。そんなことをふと思いました。そこで、情報カードの出番です。

私は普段、読書中にはペンを持って直接書き込むか、そうでなければドッグイヤーをして、後から参照できる状態にしておきます。が、そのやり方は本書にはそぐわないような気がしました。特にペンでの書き込みは、本格的にやりはじめると、2本分ぐらいペンのインクを補充しなければならないのではないかと思ったほどです。というか、書き込むスペースがきっと本の余白では足りなくなるでしょう。

なので、普段なら本に直接書き込むようなものを情報カードに書き込むことにしました。日常ならこんなまどろっこしいことはやっていられません。というか、そもそも目の前に机がないことが大半なのでやろうと思っても無理なのです。でも、この本は違いました。だいたい、そそくさと読んで何か得るものがある本ではありません。たまにはゆっくりと、いささか遅すぎるくらいに読んでみるのもよいでしょう。鈍行列車の読書体験。

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面白いのは、これによって新しい読書の節目が生まれたことです。30分だけ読むとか、一章分だけ読むといった節目とは別に「情報カードが1枚分埋まったら、そこまでとする」という節目が生まれました。なかなか面白い節目です。

さらさらと読んでいくようなところ、つまり書き留めるようなものが少ないところはバシバシページが進みます。また、考えることが多く含まれているようなところはすぐにカードが埋まり、見開き2ページほどでそれまでとなってしまうこともあります。この二つは、時間も分量も違いますが、「脳を動かしている具合」は同程度かもしれません。

そうした量が可視化できるかもしれないな、と発見できたのはこの新しい読書術のおかげです。


もちろん、通常の読書にまでこのやり方を広げることはできません。この本そのものが制約を持っていたので、その制約に合わせた読み方を持ち出した、というだけです。

あと、こうして書き付けたカードはそれだけではほとんど何の意味も持たないので、一項目ごとを再チェックして、必要なものは新たに情報カードの転記する必要があるでしょう。面倒ですね。

でも、それはそれで楽しいものがあるわけです。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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