7-本の紹介

【書評】ヤバすぎる経済学(スティーブン・D・レヴィット、スティーブン・J・ダブナー)

一瞬パクり本かと思いきや本人たちの本でした。でも、雰囲気がちょっと違います。

ヤバすぎる経済学―常識の箱から抜け出す最強ロジック
東洋経済新報社 (2016-04-15)
売り上げランキング: 944

これまでの二冊(『ヤバい経済学』と『超ヤバい経済学』)はハードカバーだったのに、本書はソフトカバー。なぜだろうと思って冒頭を読むと納得です。本書は著者らが運営するブログの記事をまとめた本なのです。『真ん中の歩き方』と同じですね。

でも、彼らの良い感じにクレイジィな様子はまったく変わっていません。というかむしろ逆の方向にソフィスティケーションされている印象すらあります。冒頭で著者らはつまびらかにこう書きます。

でもこのとき、ブログを本にするってアイディアがそんなに頭悪く思えなくなった。で、ポーランド・スプリングだのエヴィアンだのみたいな単なる水を商売にしようって古式ゆかしき伝統を見習って、ぼくらもタダで手に入る材料をボトルに詰めて、あなたからお金をふんだくることにしたってわけです。

本書はずっとこんな調子で続いていきますので、こういう露悪的な文章に相性が悪ければ、そっとブラウザを……じゃなかったページを閉じるのがよいでしょう。しかもタイトルがミスリードを誘っていて、別に「〜〜経済学」を解説している本ではないのです。なんたって、ブログ記事のまとめですからね。

原題は、『When to Rob a Bank…And 131 More Warped Suggestions and Well-Ontended Rants』で、訳者あとがきから日本語訳を拝借すれば「銀行襲うならいつがいい? その他斜め上からのご提案と悪気のない暴言131個」となるみたい。

うん、この方がずいぶん率直に本書を言い表しています。まさにそういう本です。でもまあ、レヴィット&ダブナー本をアピールするには「ヤバい」を付けた方がいいのかもしれません。ビジネスの力学はいつでも難しいです。

で、内容ですが、やさしく言えば「刺激的」となるでしょうか。率直に言えば「こりゃ、カンカンに怒る人出てくるだろうな」と思う内容です。でも、確かに彼らの視点はシャープで、独特です。

本編のトップを飾るのが、ブログの一番最初の記事で、なんと当時は『ニューヨーク・タイムズ』紙のウェブサイトに設置されていたようです。そこでレヴィットは、次のような自問を提示します。

こういうルールの話を聞くと考えてしまうのは、自分がテロリストで、使える資源に限りがあるなら、どうやって恐れを最大化するかってことだ。

そこからさまざまな考察を進めた上で、こんなことを書く。

読者のみなさんはもっといいアイディアを持っているかもしれない。ぜひ聞かせてください。テロのアイディアをこのブログに書き込むのは、ある意味お国のためだと思ってください。

こりゃまあ、炎上しますわね。でも、冷静に考えれば彼の提案はそう筋の悪いものではないでしょう。

第一にテロの首謀者が本当に何を求め、そのためにどんな手段を取り得るのかがイメージできます。実体が掴めないと、妄想は広がり、余計なことばかり考えてしまうわけですが、テロ首謀者が優れていればいるほど、より効果的な方法だけを取り、そうでない方法は取りません。それがわかれば、心配の範囲は狭くなります。

第二にこれは、ソフトウェア利用者による「不具合レポート」みたいなものになるでしょう。群衆の知恵がどれほど優れているかは別として、ブログを読んでいる人の中にはとんでもなく頭の良い人たちだって混ざっているわけで、そういう人たちのテロのアイデアを「公開」しておけば、それを潰す役には立ちそうです。

でもまあ、そんな理屈は別として、炎上はするでしょう。レヴィットがその反応を織り込んでこの記事を投稿しているのか、本当にマジにまったく率直に書いているのかはわかりませんが、おそらくこの記事が彼らのブログの知名度獲得に役立ったことは想像に難くありません。きっと人気のブログなのでしょう。

で、こういう「刺激的な」投稿もありつつ、寄稿なんかもあります。あと、著名人が質問に答えてくれるコーナーもあって、そこにあのダニエル・カーネマンの名前が。どう考えてもカーネマンのQ&Aだけでも、読む価値はあります。だって、あのカーネマンですよ。彼らはカーネマン以外にもいろいろつながりがあるようで、タレブの名前なんかも挙がっていました。あの経済学者が大嫌いなタレブですよ。不思議な二人です。

彼らの暴言めいた物言いは、もちろんそれ自体が個性的で目立っちゃうわけですが、彼らがふと思いつく疑問はやっぱり注目した方がいいでしょう。変人でないと思いつかない疑問というのはあるものなんです。

▼こんな一冊も:

ヤバい経済学〔増補改訂版〕―悪ガキ教授が世の裏側を探検する
東洋経済新報社 (2014-07-01)
売り上げランキング: 167
超ヤバい経済学
超ヤバい経済学

posted with amazlet at 16.04.28
東洋経済新報社 (2014-07-01)
売り上げランキング: 390
真ん中の歩き方 R-style Selection
R-style (2014-08-28)
売り上げランキング: 106,498

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です