塔でも肩車でもなく

以下の記事を読みました。

「巨人の肩の上に立つ」ということ(単純作業に心を込めて)

でも、最近、「研究」というあり方を考えていて、「巨人の肩」というメタファーは、ちょっとちがうような気もします。この違和感を掘り下げてみたところ、ひとまず2つのポイントにたどり着きました。

「研究」のあり方のメタファーとして、「巨人の肩の上に立つ」はちょっと違うのではないか、と考察されています。

ではちょっと考えてみましょう。


この言葉は、ニュートンのものとして有名ですね。
巨人の肩の上より

私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。

さて、英語ではどう表記されていたのでしょうか。

If I have seen further it is by standing on ye sholders of Giants.

なるほど、なるほど。

謙虚なニュートンさん

まず第一に、発言者であるニュートンは、研究の絶対的な在り方として「巨人の肩に乗れ!」と言っているわけではないことが注目されます。

「いや〜、ニュートンさん。あなたはすごい。天才だ!」
「いえいえ、私がすごい発見をできたのだとしたら、それは先人たちの知見があったからこそですよ」

おおむねこのような文脈でしょう。格言風に言い直せば、「かなたを見渡したければ、巨人の肩に乗るべし」ぐらいは言えそうです。でもそれはかなたを見渡すためのひとつの方法であって、すべての研究の在り方を網羅するものではないでしょう。

だから、「研究」というあり方とズレを感じるのは至極当然だと思います。

なぜ巨人?

では第二に、なぜそのメタファーは巨人だったのでしょうか。

Giantというのは、やたら背の高い人とかではなく、神話に登場するような巨人(怪物・半神)を意味しています。巨人は人型ではありますが、人ではありません。また、偉大な力を示すひとつのシンボルでもあります。

科学が、進歩的な発展をしてきたことは間違いありません。それは直線的ではなかったかもしれませんが、蓄積的ではありました。「先人の積み重ねた発見」にもとづいて新しい発見をすること。それが繰り返されてきたのです。

だとすれば、そうした発見をひとつのレンガと捉え、それがうずたかく積み上げられた塔をメタファーとして用いることもできるでしょう。そうした塔の頂上に登れば、かなたを見渡せるはずです。

が、しかし、そういうわけにはやっぱりいきません。

知見や知識はただそれだけで存在するわけではありません。それを発見した科学者が常にセットになっています。メタファーを塔にすることは、そうした科学者たちの人間性を剥離することにつながってしまいます。科学ですら人の営みなのです。

だったら、とてつもない巨人ではなく、たくさんの人が肩車している状態はどうでしょうか。これなら人間性も残り、積み重ねた高さも表現できます。

が、このメタファーにもいくつか問題があります。

第一にバランスが悪そうです。どう考えてもふらふらしますからね。このイメージでは、科学が持つ「ひとつの方向性」が表現されていません。それはかなり頑丈なものなのです。だからこそパラダイム・シフトにつながるような発見が潰されたりもするのです。

第二にそれが持つ力についての畏敬・畏怖がありません。肩車をすればたしかに高さは得られます。でも、振るえる力自体は、一人ひとりの人間のものでしかありません。でも、科学は実際はそうではないでしょう。それはときに暴力的な、言い換えれば人を越えた力を振るいます。

だからこそ、それは巨人なのです。人型ではあるものの人ではない巨人。

さいごに

巨人はそこにいます。そこら中にいます(だから原文は複数形なのでしょう)。

その巨人に比べれば、私たち一人ひとりなど矮小な存在でしかありません。というか、その矮小さを強調するための巨人というメタファーでもあります。

おごってしまえば発展はないでしょう。しかし、無力感に苛まれても前には進ません。そして、どちらの心の動きも人にはよくあることです。

矮小な人間でも巨人の肩の上に乗ればかたなを見渡せるという気持ち。巨人の前ではおごりは消えて無くなりますが、でも、その肩に乗れば視野の高さは得られるわけです。非常にバランスの良い心の持ち方ではないでしょうか。真ん中の歩き方です。

そして、いずれまた、その矮小な人間も巨人の中に吸収されていきます。All for one,One for all.というわけです。

もしかしたら、一番のポイントはここかもしれませんね。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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