GTDで用いるツールを確認してみよう。
- inbox
- プロジェクトリスト/プロジェクトの参考情報
- 連絡待ちリスト
- 次にとるべき行動リスト
- カレンダー
- 資料ホルダ
- 備忘録ファイル
- いつかやる/多分やるリスト
- ゴミ箱
どうだろうか。これですべてだろうか。
では、GTDの六つのレベルを確認しておこう。
- Horizon レベル5 人生の目的とその在り方
- Horizon レベル4 長期的な構想
- Horizon レベル3 1〜2年後の目標
- Horizon レベル2 重点的に取り組む分野、責任分野
- Horizon レベル1 現在のプロジェクト
- 地面レベル 現在の行動
地面レベルは、「次にとるべき行動リスト」が対応している。Horizon レベル1は「プロジェクトリスト」だ。これらを作成、レビューすれば順風満帆に進んでいける。
では、それより上のレベルはどうだろうか。
あるリスト
もちろんデビッド・アレンが見過ごすようなことはない。『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』にもきちんと記載されている。しかし、その記載は重要性に比べて意外なほどあっさりだ。
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こうして書き出したアイデアの中には、いますぐ具体的な行動をとる必要はないが、普段から意識しておきたい、漠然とした目標のようなものもある。「ベストコンディションを保つ」「健康管理」などがそうだろう。こうした日々の作業よりも高いレベルでの目標やアイデアも、チェックリストに入れておいて定期的にレビューするといいだろう。こうした高いレベルの目標を意識し、それがどういった意味をもつかを考えることは、日々の生活において、今、何をするべきかの選択を助けてくれるはずだ。
チェックリストを作成するようなものとして、アレンは次のようなものを挙げている。
- キャリアにおける目標
- 奉仕活動
- 家族
- 人間関係
- コミュニティ
- 健康、気力
- 資金
- 表現、創作
なるほど。たしかにこれは「現在の行動」でもないし「現在のプロジェクト」でもない。アレンは続けてこう書く。
もう一つ下のレベルに降りると、仕事で責任を負っている分野、長期的な構想について考えることになる。
わかるだろうか。「もう一つ下のレベルに降りる」と「長期的な構想」になる。つまりHorizonレベルにあてはめれば、上に挙げたリスト項目は「人生の目的とその在り方」に関連づけられることになる。
どうも『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』ではその対応関係が明らかではない。主軸は「現在の行動」と「現在のプロジェクト」に置かれていて、上記のようなことは補佐的な要素としか扱われていない。これはGTDがボトムアップ指向で、日々の行動決定からストレスを取り除くことにフォーカスを置いているからなのだろう。
チェックリストや整理システムでの管理がどの程度必要かは、その責任分野にどれほど不慣れかということに関係してくるだろう。長い間その分野に携わっており、少々の変化が起きても大丈夫という自信があれば、整理システムでの管理は最小限でいいはずだ。いつ何をどのようにすればよいのかを心得ているからだ。だが、そうはいかない場面も多々ある。
アレンはここをもっと強調すべきだった。なぜなら、誰だって自分の人生には不慣れなのだから。言い換えれば、予想外のこと・初めてなことがたびたび起こるのが人生なのである。
おそらく三ヶ月という時間のスパンがあったとき、その95%で必要なのが「現在の行動」と「現在のプロジェクト」の管理であろう。だから主軸をここに置くのはまったく間違っていない。しかし、5%では上記のようなものの管理が必要となってくる。そして、その影響は95%をひっくり返すぐらいに大きいのだ。
この頻度と影響力のアンバランスさは、何かを体系的に伝えようとする人間にとってはやっかいな問題であることはわかる。あまりに5%を強調しすぎてしまうと、肝心の95%の意味が薄まってしまう。大きな目標さえしっかり管理していればタスクが進むと思われたら本末転倒だ。しかし、5%が持つ意味合いの大きさはしっかり指摘しておきたい。
アレンはこう書いている。
個人的にも、コントロールが保てていると自信がもてるまで、いくつかのリストを作らなければなかった経験がある。
何かを新しく始めたときは、コントロールが保てている自信など持てないだろう。だからリストを作らなければいけない。そして、現代では変化はいつだって起こりうる。すると、リストの出番は頻繁にある。
重要なのは「ん? 自分はうまくコントロールを保てている感触が持てないな」と気がついたとき、即座にその対象についてリストを作ることだ。習慣といってもいい。私がGTDのコンテンツを再編するなら、それを基軸にするだろう。結局その他の要素だってそれを敷衍しただけなのだから。
my life synopses
で、上記のことを見事に実践しているのが以下の記事である。
生活のアウトラインをリライティングする | gofujita notes
そして「my life synopses (生活のアウトライン)」という項目にまとめておいたリストを眺める。このリストは、以前、自分の生活のことを意識しながらフリーライティングした文章を、要約したセンテンスのリスト。この要約センテンスの下には本文が折りたたまれている。リストを眺めながら、気になった要約センテンスがあれば、その項目を開いて (ブーレットをクリックして) の中身を読む。
この「my life synopses (生活のアウトライン)」に入っている要素は、アレンがチェックリストで管理せよと述べた対象と重なるだろう。
面白いのが、このリストには文章が収納されている点だ。どのくらいの長さはわからないが、ある程度整えられたシュっとした文章であるような気はする。そういう文章は自分の心に働きかける作用を持つ。
とは言え、本文は折りたたまれていて、目に入るのは要約したセンテンスのリストである。その意味では、普通のチェックリストに近いとは言える。ちょっとしたハーフというわけだ。
何と何の?
チェックリストとミッション・ステートメントの、だ。
『7つの習慣』に登場するミッション・ステートメントは、「自分の憲法」などと訳されているが、その実体はGTDにおけるHorizonレベル5と同じ対象である。それを文章で記述しているのがミッション・ステートメントなのだが、国家の憲法がそうであるように個人のミッション・ステートメントも一朝一夕では完成しない。何度も何度も書き直し「自分がしっくりくる表現」を求める。
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おわかりだろうか。
それはレビューをする、ということなのだ。
一度書き出したものを、時間を置いて読み返し、新しい表現を求める。なんてことはない。これこそが「レビュー」ではないか。
ようは二つの本は、重要な部分では同じことを言っているわけだ。
さいごに
たとえば、私は通常のプロジェクトリストとは別に、下記のようなEvernoteのノートを作っている。
ひとつ上の階層からプロジェクトを眺めるためのノートだ。でも、もしかしたら文章で書き、文章で書き直すやり方がいいのかもしれないな、とグラグラとmy life synopsesに傾きつつある(なにせすごく魅力的に見える)。
ともかくリストを作ることだ。それが始まりなのだ。