やりたいことをやるために僕たちができること (その1)

青年 本日は聞きたいことがあってまいりました。

徹人 ほう、なんだね。

青年 人生の最終的な目的は「達成」なんだと、僕は思います。

徹人 達成、かね。

青年 ええ。あなたもそう思われるでしょう。人は思いがけず生まれてくる。死ぬことのままならない。だとすれば、自らの手で目標を定め、それを達成すること。それが人生ではないでしょうか。

徹人 いささかネジを巻きすぎている気はするが、まあいいだろう。それで?

青年 私が聞きたいのは、いかにそれを行うのか、です。師位マスタークラスのあなたならば、そういった知識をいくらでもお持ちでしょう。

徹人 はっはっは。師位マスタークラスといったって、ただの人間に過ぎないよ。万知というわけではない。でも、面白そうな話題だね。一つ考えてみよう。どうだい、聞かせてくれたまえよ。仮説くらいはもうできているんだろう。

青年 もちろん手ぶらでやってくるなんて失礼なことはしませんよ。僕なりに考えてみました。自分がやりたいことをやるために必要なことは、おそらく二つあります。一つは、「時間を作る」こと。もう一つは、「優先順位を付ける」こと。どうですか。

徹人 まあ、100点だろう。──ビジネス書ではね。

青年 そうだろうと思いました。自分でも気がついていたんです。これでは何かが足りないと。でも、それが何かわからなかったので、あなたを訪ねてきたのです。

徹人 「時間を作る」といったね。コンセプトとしては悪くない。何かを行うためには時間が必要だからね。でも、それをどうやって作るんだい。少量の二酸化マンガンに硫酸を注ぐ?

青年 あなたのおっしゃりたいことはわかりますよ。曰く、人に与えられた時間は皆平等である。それは増えもしないし、減りもしない。そういうことでしょう。

徹人 別に茶化しているわけじゃないよ。好奇心を持って問うているんだ。時間はどうやって作るのかって。

青年 単純に考えれば、作業を効率化したり、あるいは無駄な作業を行わなければ時間は生まれるのでは。隙間時間を活用してもいいですね。

徹人 隙間時間! いやはや、まいった。

青年 何をそんなに笑っているのですか。あなただってお持ちでしょう。電車の待ち時間や手持ちぶさたな時間が。

徹人 そういう時間は、私は常に本を読んでいるからまったく空いていないよ。そこに隙間はない。

青年 それこそ僕の言わんとしていることですよ。そういう風に時間を使えば有用ではありませんか。

徹人 それこそ私の言わんとしていることだよ。私は24時間を厳密に有用に使っている。もうこれ以上は有用に使いようがない。

青年 おっしゃる意味がよくわかりません。

徹人 まあ、そこに立ち入るのはやめておこう。私が聞きたいのはこういうことさ。ある時間があるとして、それが隙間時間であるとどのように認識するのかね。そもそも、君には時間が見えているのかね。それが見えていなければ、隙間など発見しようがないだろう。

青年 それは認識上の問題ですよね。

徹人 君は認識上の問題は、実際的な問題にはつながらないと考えているのかね。私は、まったく逆に捉えているよ。まさしく実際的な問題は、認識上の問題から生じる、とね。それは影なんだ。どれだけ影が気にくわなくても、それを映す地面を攻撃しても何の意味もない。光があり、実体があれば、影はいつでも再生する。認識こそが、その実体にあたるのさ。

青年 だとしたら、あなたは隙間時間なんて存在しないとおっしゃるわけですか。

徹人 そんなことは言っていないさ。たしかに別のことに使える時間は一日のうちに見つけられるだろう。もちろん、その量は微々たるものだろうけどね。ただし、そうして「作った」時間は冷凍保存が利かない。これが問題だ。空いた時間は、その空いた瞬間に何かをしなければいけない。そうしないとその時間は「何かをしようとしている」ことで埋まってしまう。

青年 だったらすればいいじゃないですか。あなたのように本を読めば。

徹人 目標がギターがうまくなることだったらどうだね。相撲が上達することでもいいだろう。健康維持のためにジムに行くでも構わないさ。それを見つけた隙間時間でなんとかできるかね。

青年 それは難しいでしょうね。もう少しまとまった時間を作らないと。

徹人 まとまった時間を作る、というのは、隙間時間を活用するのとは全然違うことは直感的にわかるね。

青年 でしょうね。予定を一つ潰す必要があるかもしれません。

徹人 まさにその通りだ。要するにそれは「優先順位を付ける」ということとイコールなんだ。

青年 ……

徹人 じっくり考えてみるといい。君は同じことを別の方向から言っているに過ぎない。5分の時間ができたとする。そのとき、別の行為ではなく、その行為をすることを決めるということは、その行動を優先したということだ。たしかに私は空いた時間に本を読んでいる。でも、それは隙間時間を活用しているわけではない。空いている時間では常に本を読むことを優先しているだけだ。それが結果的に、隙間時間を活用しているように見えるのだろうけれどもね。

青年 ということは、「優先順位を付ける」だけがあればいいんですね。わかりました。

徹人 ちょっと待ちたまえ。優先順位を付けるだけでは何も解決しないよ。

青年 どういうことですか。さっきおっしゃっていたじゃないですか。自分は読書を優先していると。

徹人 その通りだ。いいかい、優先順位を付けることと、何かを優先することは同じではない。これを勘違いするとひどい目にあうよ。

(たぶん、つづく)

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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