Evernoteの使い方

Evernoteの根本の思想と今後への期待

Evernoteが8周年を迎えた。

「Forevernote(ずっと残るノート)」 – Evernote日本語版ブログ

100年続く企業を目指すなら、少なくともあと92年はがんばってもらわなければいけない。一人の熱心な、いや熱心すぎるEvernoteユーザーとしては健闘を願うばかりだ。

サービスを提供する企業が長く存続するためには、その存在意義、ビジネス用語で言えばコア・コンピタンスをはっきり見定め、それを強化し続けていく流れが必要だろう。

Evernoteのコア・コンピタンス

そうなると、Evernoteのコア・コンピタンスとは何かが気になってくる。

Evernote 8周年を迎えてのCEOクリス・オニールのビジョン | Lifehacking.jp

上の記事では、新CEOが抱くEvernoteの根本の思想が三つにまとめられている。一つ目は、「記憶すること」。二つ目は、「考える」場所であること。三つ目は、情報の整理。まったくもってその通りだろう。その思想に見当違いな要素はまったく感じられない。

Evernoteは、デジタル時代のパーソナルノートツールだ。個々人が情報をよりうまく使うために作られたツールなのだ。

情報を使うためには、まず記録する必要がある。そして、その機能に関してはEvernoteは充実しているし、今後も強化されていくだろう。その点に心配はあまりない。

問題は二つ目と三つ目だ。これは一筋縄ではいかない。なぜか。

What is “Thinking”?

第一に「考える」とはどういうことが簡単ではないからだ。情報を集めさえすれば考えられる? そんなはずはない。「考える」ためにはステップが必要で、当然それを補助するツールもそのステップを意識する必要がある。

だからそう、クラウドツールに親しんでいる人なら一度以上は感じたことがあるだろう。EvernoteとWorkFlowyがくっついてくれたらな、と。その思いはまさに、Evernoteが「考える」場所としての機能に欠落があることに裏打ちされている。

Evernoteは素材を集めるのに適している。個人の情報統合環境としてこれ以上のものは望めないくらいである。が、しかし。そうして集めた素材を使って、大きなものを組み立てる機能は十分ではない。まったくもって十分ではない。その点は、WorkFlowyが圧倒的だろう。

Everonteでは、エディタ上で文章を書くことができる。でも、そのとき見えるのはそのノートだけである。流暢に集めたその他の素材はそこにどのように活かされるだろうか? もちろん方法はある。ノートをマージしたり、ノートリンクを貼ったり、大量のノートウィンドウを表示させたりといったことだ。でも、それが望ましい姿なのだろうか。

「大量に集めたノート一つひとつを素材とし、大きなアウトプットを組み立てていく」

ための万全の機能がEvernoteにあるだろうか。その点は、WorkFlowyやScrivener、そしてUlyssesが圧倒的に上回っている。それは、Evernoteは使いつつも、それ以外のツールを併用している人の多さが証明しているだろう。

Evernoteはそちらに向けて舵を切らない選択肢もある。ツールの併用を前提として、EvernoteはEvernoteとして大きく変わらないことも選べる。しかし、その場合「考える」場所としての存在感は減少してしまうだろう。それは念頭に置いた方がいい。

情報の整理

第二に、情報の整理だ。

本当にこれほど簡単な言葉であって、その実体が難しいものはなかなかない。「はい、情報を整理しましょう」。言うのは簡単だ。でも、それをどのように行うのか。

整理は、使用に先駆することはありえない。使うために整理するのだ。使い方に合わせて整理するのだ。単に綺麗に棚に陳列するならば、それは「整頓」である。整頓は整頓で必要かもしれないが、検索時代ではあまり意味をなさい。デジタル情報で重要なのは、整理である。しかし、その整理は「使うこと」に合わせて行われる必要がある。

その意味で、本当に使える「整理」はパーソナルなものにならざるをえない。私にとっての整理と、他の人にとっての整理はその実装が異なるのだ。Evernoteはだからこそ、自由なノートブックとタグという2軸の機能で、「それぞれの人の整理体系」を築けるようにした。これは見事な発想だったと言えるだろう。

しかし、それ以上に進めるだろうか。

もちろん、進めるはずだ。ヒントは、関連性にある。

以前こんな記事を書いた。

R-style » Evernoteの共有ノート、あるいはナレッジマネジメントについて

あなたは秋のビールの棚の展開を考えていたとしよう。過去の売上げの数字はデータベースをみれば簡単に参照できる。Evernoteに保存してあるPDFを見ればOKだ。後は本部の方向性を確認して…

その時、ふと「関連するノート」として、店員の雑記メモ「夕方のお客さんで、焼き鳥を大量に買って帰ったお客さんがビールの6缶パックを欲しがっていた」が浮かび上がってきたとする。あるいは別の店員がスクラップした「これが人気!秋の新作ビール特集」というウェブページもだ。はたまた前任の店長がビール売り場を作ったときのプロジェクトノート「500ml缶をゴールデンラインに置いて、客単価アップにチャレンジ」も浮かんでくる。

後は、アイデアをまとめ、売り場を作るだけだ。

情報を整理するということは、情報同士の流れを整えるということだ。

現状は、それを「ノートブック」「タグ」「ノートリンク」「コンテキスト」という機能が担っている。でも、まだここには踏み込む余地がある。新しい機能の可能性もあるだろうし、既存の機能にも改良点はあるはずだ。たとえば、ノートリンクひとつとってみても、まだ完全に使い勝手が良いとはいえない。
※具体的には二つのノートを選択して、互いのノートにノートリンクを貼る、ということが1アクションでできない。

「コンテキスト」も一歩進めて、週一回くらいのペースでノート全体をスキャンして、関連性が想定できるにも関わらずユーザーが関連性を見出していないノート群をいくつか提示し、「これらのノートに、≪新しい時代の知的生産の技術≫というタグを付けますか?」みたいに聞いてきてくれてもいい。

間違いなく、新しいアイデアとはそういうところから生まれる。

さいごに

これからのEvernoteがどういう姿になっていくのかはまだわからない。現状はまだ組織のブラッシュアップの段階で、具体的な今後のロードマップが提示されていないのだから、それは仕方がないだろう。

100%間違いなく、完全に完璧に成功する企業など存在しないのだから、舵取りを間違えることもあるだろう。それでも、私はEvernoteがEvernoteである限りはこのツールを使っていくだろう。なにせ、他に代替はないのだから。

未来のEvernoteがどのような姿をしているのかはわからない。でも、こういう形であればもっといいだろうな、という予感みたいなものはある。というか、私たちはその姿を少し知っているのだ。

それについては来週書いてみよう。

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